8月30日(日)、2009愛媛県サッカー選手権大会(第89回天皇杯県代表チーム決定戦)の決勝が、愛媛県総合運動公園球技場にて行われた。 
 県内アマチュアチーム(高校・大学チーム含め)69チームが、予選に参加した今年の県選手権大会。7月からは、ベスト8に残ったチームがトーナメントを戦い、決勝に駒を進めたのが、なんと「愛媛FCしまなみ」と「愛媛FCユース」。奇しくも、愛媛FC下部組織同士での決勝となったのだ。
 愛媛FCサポーターたちは、「下部チームが各々成長し、着実に力をつけてきている証」と、今回の結果を皆、うれしく感じていた。その反面、「決勝ではどちらを応援したらイイの?」という、うれしい悲鳴にも似た戸惑いをも感じている様子だった。

 試合前、サポーター同士で話し合いが持たれ、結局、人数を同等に振り分けての珍しい応援風景となった。日頃、応援している両チームが、決勝という晴れ舞台で相まみえるとあって複雑な心境は隠しきれない。だが、ここは割り切って応援に集中することを誓い、愛媛FCサポーターは、スタンドの端と端にそれぞれ分かれてスタンバイした。
 
 晴天に恵まれた今日の運動公園。球技場のピッチには、夏枯れの芝生が目立つものの、コンディションは概ね良好。残暑厳しい日差しの中、時計は午後2時を廻り、愛媛FCユースのキックオフで試合がスタートした。

 序盤、しっかりとパスを繋いで相手陣地へと攻め込む愛媛FCしまなみが、試合の主導権を握る。
 それでも開始10分を過ぎる頃には、ユースもカウンター攻撃などを駆使して、反撃を試み始める。しかし、何度かゴール前で決定的シーンを演出するも、わずかに得点を奪えず、流れはしまなみへと大きく傾いていく。
 
 前半36分、しまなみのMF木村正希選手が、センターサークル内で相手のパスをカット。ボールを足元に収めつつ、相手GKの位置を確認し、右足を豪快に振り抜いて超ロングシュートを放った! ボールは前寄りのポジションを取っていたGKの頭上を飛び越え、見事ゴールマウスに吸い込まれる! 驚きの先制ゴールに、スタンドからは大歓声が湧き起こる! チームメートと抱き合って喜びを爆発させる木村選手。前半は、このまま1−0と愛媛FCしまなみがリードして終了した。
 
 後半に入ってもペースを落とすことなく、サイドスペースを利用し、素早い攻撃展開で相手陣内へと攻め込むしまなみ。後半28分、バイタルエリアにボールを運び込む。ペナルティアーク外側に陣取ったMF中原大志選手が、ボールをキープ。後方からペナルティエリアへと駆け込んできたFW金賢選手の前面スペースへ向け、ロビングのスルーパスを通す。後ろからのパスに追いついた金選手は、半身の構えから右足を鋭く振り抜き、ボレーシュートを放った! ユースGKも必死の反応で手を伸ばすが、わずかに届かず、見事ゴールイン! 両手を高々と掲げ、喜びを表現する金選手! スタンドからも拍手と歓声が送られた。
 
 その後、愛媛FCユースも反撃を開始。フィードボールや中央突破を駆使して、相手DFライン裏のスペースを狙う攻撃を展開し、得点機をつくり出すのだが、なかなか結果には繋がらない。激しい攻防の中、試合もロスタイムへと突入し、ユースイレブンはリスクを負って攻め入る。しかし、その手薄となったユースのDFラインをかいくぐり、しまなみのFW石本信親選手が、試合を決定づける3点目を奪取した! ハイタッチを繰り返し、チームメイトと喜びを分かち合う石本選手。その光景を目の当たりにして喜びに沸く、しまなみのベンチ。
 
 そして時間は経過し、ついにはタイムアップ。最終スコア3−0で、愛媛FCしまなみが愛媛FCユースを下し、愛媛県アマチュア・サッカークラブの頂点に立った! 県選手権初優勝の愛媛FCしまなみは、同時に第89回・天皇杯への出場権を手にしたのである。
 
 敗れた愛媛FCユースも厳しいトーナメントを勝ち上がり、決勝も最後まで頑張ってくれた。だが、主軸となる選手が日本サッカー協会主催の合宿に召集されたり、中心選手の故障による不調などの不運が重なり、チームとして本来の力を発揮することができなかったのかもしれない。今日は残念だったが、将来有望な選手たちが大勢所属しているだけに、今後の活躍に期待したいところだ。
 
 一方、全国大会へと羽ばたく愛媛FCしまなみ。愛媛県代表チームとしての誇りを胸に、ユースの選手たちの分も頑張って是非、金星をあげてほしい。


松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール
 1967年5月14日生まれ、愛媛県松山市出身。
 愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。
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