10月11日(日)、第89回・天皇杯全日本サッカー選手権大会の2回戦となる愛媛FC対アビスパ福岡の一戦が、ニンジニアスタジアムにて行われた。
 イヴィッツァ・バルバリッチ監督の新体制がスタートして、約1カ月が経過しようとしている愛媛FC。残念ながら、これまでのJ2リーグ公式戦においては、未だ勝利を手にすることができていない。新たなスタートに伴い、戦術・システム面の変更などもなされているようだが、リーグ戦も終盤に入り、疲労の蓄積などから選手たちが、それにうまくついていけていないようにも感じる。
 それでも、新体制以降の各試合での失点数は、最少失点の「1」ということから、守備面の改善は進んでいるようにも思われる。
(写真:敵陣内でハイボールを競り合う!)
 その成果として、J2第43節(3日)の対栃木SC戦では、敵の猛攻に耐え続け、試合終了間際に同点に追いつき、見事引き分けに持ち込んだ。バルバリッチ監督が就任して初の「勝ち点1」をマークすることができたのだ。監督の意図を選手たちがより理解し、理想とするアグレッシブな戦術をチームがものにできれば、明るい未来が見えてくるに違いない。

 今日の対戦相手アビスパ福岡とは、バルバリッチ監督就任後、先月末のJ2第42節(9月27日)で対戦しており、その時は0−1で惜敗している相手。2週間後という短期での再戦で、皆が意識していると思う。是非ともリベンジを果たしてほしい。
 
 朝から晴天に恵まれた今日のニンジニアスタジアム。少し体を動かすと、汗ばむ程の陽気である。素晴らしいコンディションの中、時計は午後1時を廻り、注目の試合がスタートした。
 序盤から両サイドスペース等を利用し、積極的に相手陣内へと攻め込む愛媛FC。ボールの繋がりも良く、支配率でも相手を上回っている印象だ。

 前半22分、歓喜の瞬間が訪れる。敵陣内の中央でボールをキープするFW内村圭宏選手。右サイドスペースをオーバーラップで駆け上がるDF関根永悟選手へ向けてパスを通す。ボールを受けた関根選手が、そのまま同サイドをドリブルで駆け上がり、早いタイミングでペナルティアークへ向けてアーリークロスを供給。ペナルティアークに陣取るMF永井俊太選手が、このクロスを捉え、FWドド選手の足元へ向けて柔らかなパスを送る。

 このパスをダイレクトに捉えたドド選手が、左足を豪快に振り抜き、グラウンダーのシュートを放った。敵GKが必死に手を伸ばすが、ボールはその先を擦り抜け、見事ゴールイン! 素晴らしい連係からの先制ゴールが決まった! 大歓声が湧き起こるスタジアム! 両手でガッツポーズを繰り返し、喜びを表現するドド選手!
 
 前半41分、攻撃後に手薄となった自陣の左サイドスペースを突かれ、同点に追いつかれるが、すぐさま反撃に向け奮起する愛媛イレブン。
 前半44分、敵陣内の左サイドスペースを駆け上がるDF三上卓哉選手からゴール前へ向けてセンタリングが供給される。このボールが一旦は、敵DFの頭で弾かれるものの中途半端なクリア。次の瞬間、そのクリアボールはペナルティエリアに陣取るMF赤井秀一選手の足元へと転がった。

 赤井選手はトラップを挟みつつ、敵DFをかわしながら左足を鋭く振り抜き、ゴール前に陣取る内村選手の前面スペース目がけて、低い弾道のクロスボールを供給する。このクロスを捉えた内村選手が、半身の構えから体を伸ばし、ダイビング・ヘディングシュートを放った。必死に敵DFとGKがクリアに向かうが届かずゴールイン! 流れに乗った攻めで、見事勝ち越しに成功したのだ! 再び歓喜に包まれるスタジアム! チームメイトと抱き合い、喜びを分かち合う内村選手!
 前半戦は、このまま2−1で終了。
 
 素晴らしいリズムで攻撃を繰り返し、試合の主導権を奪えていただけに、「このまま後半戦もいけるぞ!」と思っていたのだが、後半に入ると、愛媛イレブンの運動量がガクッと落ち込み、まるで別のチームを見ているかのような状況に陥ってしまう。敵にボールを支配され、自陣に押し込まれるシーンが目立ちはじめると、後半27分には敵のセットプレーから、ついに同点に追いつかれてしまった。
(写真:味方のクロスボールを信じ、敵ゴール前につめる!)

 その後、反撃を試みるが、攻撃も単発的に終わり、延長戦でも決着はつかずPK戦へ。立ち上がり2発を外した愛媛FCに対し、相手は1本目から4つをストレートに決めて勝負あり。粘ったものの、惜しくもPK戦でトーナメントの敗退が決定してしまったのだ。
 
 結局、最終スコア2−2(PK2−4)で、リベンジとはならなかった愛媛FC。前半、アグレッシブに素晴らしいペースで試合ができていただけに、気の迷いとスタミナ切れを感じさせる後半戦の戦い方は、本当にもったいなかったように思う。前半戦のような戦い方を90分間続けられるかどうかが、今後の課題となるのかもしれない。

 ただ、バルバリッチ・サッカーの可能性も垣間見えたような試合だった。期待感を抱きつつ、これからの進化を見守っていきたい。

 
松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール
 1967年5月14日生まれ、愛媛県松山市出身。
 愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。
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