10月21日(水)、J2第46節となる愛媛FC対カターレ富山の一戦が、ホーム(ニンジニアスタジアム)にて行われた。 
 現在(第45節終了時点)引き分けを挟み、6連敗中の愛媛FC。フロントは監督の交代に踏み切り、チームの立て直しを図ってはいるが、まだ結果は見えてこない。ただ10月11日に行われた天皇杯2回戦以降、攻撃力は増してきているように思われる。迫力ある攻撃とともに守備のリズムが上手く噛み合えば、おのずと結果もついてくるに違いない。今節こそ、イヴィッツァ・バルバリッチ監督の笑顔を拝みたいところだ。
(写真:敵ゴール目指し、ドリブルで駆け上がる!)
 晴天に恵まれた今日のニンジニアスタジアム。ピッチコンディションも良好である。スタジアムが夕闇に包まれる中、時計は午後7時を廻り、カターレ富山のキックオフで試合がスタートした。
 
 立ち上がり、富山がロングボールを多用し、愛媛陣内へと攻め込んでくる。敵の攻撃に対して、愛媛DF陣も落ちついて対応。決定的なシーンはつくらせない。反撃に向けて両サイドスペースを利用し、攻撃を組み立てる。
 前半13分、敵陣中央でFWドド選手が、ボールをキープ。前線に抜け出したMF渡邊一仁選手へとパスを送る。渡邊選手は来たボールを、敵DFと競り合いつつ、敵陣内の左サイドスペースに開いているFW内村圭宏選手へと
ダイレクトに送った。

 ボールを受けた内村選手が、敵ゴール前のスペースに向けてグラウンダーのクロスボールを供給。敵DFライン裏に抜け出したFWジョジマール選手が、このボールに追いつき、シュートを放つが、敵GKに阻まれ、惜しくもゴールならず。スタンドからは溜め息がこぼれる。ただ、得点の可能性が感じられる素晴らしい攻撃だった。
 
 前半21分、敵陣内の左サイドスペースへとオーバーラップを仕掛けたDF三上卓哉選手からゴール前にアーリークロスが供給される。このクロスに対し、ドド選手が敵DFと競り合いながらヘディングに向かうが、上手くヒットせず、ボールが大きく跳ね上がる。

 このボールを捉えたのが、ジョジマール選手だ。大きくジャンプし、ヘディングシュートを放つが、またもや敵GKのファインセーブにあい、得点には至らなかった。愛媛FCの惜しいシーンが多々見られる中、スコア0−0のまま前半戦が終了。
 
 後半に突入後も敵陣内の両サイドスペースを上手く活用し、積極的にビルドアップを図る愛媛イレブン。後半3分、敵陣内の右サイドをDF関根永悟選手がオーバーラップで駆け上がり、中央寄りのドド選手へとパスが通る。ドド選手はボールを足元に収めながら、ペナルティアークに陣取るジョジマール選手へとパスを送った。敵ゴールに背を向けながらボールを受けるジョジマール選手。次の瞬間、その場で素早く体を半回転させながら左足を鋭く振り抜き、グラウンダーのシュートを放った! しかし、ボールは、ゴール右外側に逸れて得点ならず。
(写真:敵陣内でパスを繋ぎつつ、ビルドアップ)
 
 後半16分には、敵陣内中央を駆け上がるMF永井俊太選手からペナルティエリアに向けて攻め込む構えのドド選手へと、スルーパスが通る。パスを受けたドド選手がそのままエリア内にボールを持ち込み、敵GKの頭上を狙ってループシュートを放つが、惜しくもクロスバーを越え、ゴールならず。
 
 ことごとく得点チャンスを逃し、スタジアムに嫌なムードが立ち込めてきていたが、待った甲斐があり、ついに歓喜の瞬間がおとずれる!
 後半24分、敵陣ペナルティエリア外側で永井選手がファウルを受け、愛媛FCはフリーキックのチャンスを得た。左サイド寄りだが、敵ゴールまでは約25メートル程度の距離で直接狙える位置ではある。キッカーはMF赤井秀一選手。ボールをセットし、短い助走から右足を豪快に振り抜いた! 放たれたボールは、美しい軌道を描きながら敵ゴールへと襲いかかる! 敵GKもジャンプし、必死に手を伸ばすが、ボールはその先をすり抜け、見事ゴールマウスに突き刺さった!

 大歓声が湧き起こるスタジアム! 両手を高く突き上げ、喜びを表現する赤井選手! そこへチームメイトが駆け寄り、皆でゆりかごダンス! 9月に産まれた赤井選手の第一子誕生を祝う歓喜のダンスだ。
 
 素晴らしい先制ゴールで勢いに乗る愛媛イレブン。得点には至らずも、アグレッシブな攻撃で時間を費やしていく。守備陣も踏ん張り、相手の攻撃の芽を摘み取っていった。そして、時間は経過し、ついにはタイムアップ。最終スコア1−0で、愛媛FCの快勝となった。
 
 バルバリッチ監督就任後、初めての勝利である。試合後のサポーター&選手たちで行われる「勝利のラインダンス」の中に、監督の笑顔を見ることができた。
 
 今節は、バルバリッチ氏が目指すアグレッシブなサッカーの一端を垣間見ることができたように感じた。監督が理想とするサッカーに愛媛の選手たちが到達するには、まだまだ時間を要するかもしれないが、一歩づつでも日々進んで欲しいと思う。
 今季リーグ戦も残りわずか6試合。願わくば勝利のラインダンスを踊り続けたいものだが、今は久しぶりの勝利に酔いしれていたい。

 
松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール
 1967年5月14日生まれ、愛媛県松山市出身。
 愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。
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