新たな年がスタートしました。今シーズンのチームスローガンは「一瞬懸命(いっしゅんけんめい)」です。実はこれは私のモットーである「この瞬間を生きる」という言葉から考えたものです。いくら後悔しても過去を変えることはできません。そしていくら心配しても未来はどうなるかわかりません。それならば今、この瞬間を大事にしよう、一生懸命生きようという意味です。選手たちにも思いっきり野球ができる今を大事にしてほしいとの願いからチームスローガンに決めました。
 新チームのキャプテンにはキャッチャーの日下広太(三本松高−順天堂大−石川ミリオンスターズ)を指名しました。私が考えるキャプテンとして最も重要なことは、やはり人間性です。日下はその点、非常に適した選手です。練習では他人のことなど気にせず、自分がこれと決めたことはやり遂げるまで一心不乱にやっています。普段においても基本的なあいさつはもちろん、きちんとした生活態度で、特に若手へのいいお手本となっています。

 キャッチャーとしてはクリアしなければならない課題はたくさんありますが、キャプテンとして、私から注文することは全くありません。とにかくこれまで通り、毎日上を目指して頑張ってほしいですね。そして2人の新人キャッチャーとともにいい競争を繰り広げ、切磋琢磨していって欲しいと思います。

 さて、今シーズンは11人の新人選手が入団することが決定しました。BCリーグも年々レベルが高くなり、トライアウトにも多くの選手が集まってくれるようになりました。今年も全国から有望な選手がトライアウトを受けました。その狭き門をくぐり抜け、今シーズン、我々とともに戦う選手たちを紹介したいと思います。

 まず昨年12月9日に開催されたドラフト会議でただ一人指名したのが、伊勢田翔(横浜商大高−日本ウェルネススポーツ専門学校)です。身長180センチ90キロと立派な体格は、横浜ベイスターズの強打者、村田修一や吉村裕基を彷彿させます。力強いスイングでパワーあふれるバッティングが魅力です。

 その他は球団トライアウトで合格した選手で、投手5人、捕手2人、内野手2人が加わりました。まずは投手から紹介していきましょう。新人の中で最年長の石渡大介(岩倉高−城西国際大−伯和ビクトリーズ)は厳しいトーナメントを戦ってきた社会人上がりだけあって、先発として試合をつくれるピッチャーです。投手陣のキャプテン柏村雄太(常磐大高−常磐大)とともに若手を引っ張っていってもらいたいと思っています。

 右の本格派、寺田哲也(作新学院高−作新学院大)はストレートは最速140キロ台半ばを誇ります。182センチの長身でもあり、今後の成長が楽しみです。間曽晃平(横浜商業高−神奈川大)は4年時には春夏連続で神奈川大学野球リーグの最優秀投手に輝き、通算20勝の実績をもちます。4年春にはノーヒットノーランも達成しており、BCリーグでどんな活躍をしてくれるのか楽しみです。

 さらに私と同郷の雨宮敬(山梨学院大付属高−山梨学院大)と望月雅史(身延高)の2人にも期待しています。雨宮はスピードこそ速くはありませんが、気持ちで投げるタイプのピッチャーです。魅力は大学で覚えたシュート。最近ではシュートを投げるピッチャーは数少ないだけに、BCリーグでも大きな武器となることでしょう。一方、望月は2種類のスライダーが武器。身長174センチ、体重65キロと小柄ながらストレートは最速140キロ近くを投げることができます。なんといっても18歳と若いだけに、体ができてくれば、NPBも狙える面白い存在となることでしょう。

 前述したようにキャッチャーは2人が加入します。強肩の日野悠三(早稲田実高−早稲田大学−府中ダイヤモンドバックス)は身長186センチ、体重95キロの体格から繰り出すパワーは必見。スイングスピードも鋭く、早実時代には4番を張るほどの実力の持ち主です。高卒ルーキーの堀込竜司(武南高)も強肩です。トライアウトではバットもよく振れていましたし、18歳にしてはレベルの高さを感じました。日下、日野といった先輩キャッチャーのいい部分を盗んで、レギュラー争いに加わって欲しいと思います。

 内野手は2人。ベテランの今井政司(柏高−茨城ゴールデンゴールズ−信濃グランセローズ−神戸9クルーズ)は独立リーグの経験も豊富で試合の作り方を熟知している選手。勝負強いバッティングにも注目してもらいたいと思います。同じく内野手の今井佑紀(日本文理高−平成国際大)は大学時代は主将を務め、キャプテンシーあふれた選手です。最大の魅力はチーム最速の足。機動力がチームの課題だけに、期待しています。

 今年の目標はもちろん地区優勝、リーグ優勝、そして独立リーグ日本一です。しかし、それ以上に私が重要視しているのは、地元との親密化。地元の方々と気軽に、そして気持ちよく接していただけるよう、挨拶などを大事にしていきたいと思っています。地域密着を理念とするBCリーグを長く存続させるためには、そうした努力が不可欠なのです。

 そしてチームとしてもより多くの地元の方々に応援してもらえれば、それが大きな支えとなります。例えば昨年オープンしたHARD OFF ECOスタジアム新潟での試合の対戦成績は5試合で4勝0敗1分と負けなしです。これはひとえにファンの力添えの賜物だと思っています。今シーズンもあたたかい声援をいただけるよう、チーム一丸となって頑張っていきたいと思います。応援、よろしくお願いします。



芦沢真矢(あしざわ・しんや)プロフィール>:新潟アルビレックスBC監督
1958年1月1日、山梨県出身。巨摩高校時代は4番・捕手として初の甲子園に出場。76年、ドラフト5位でヤクルトに入団し、貴重な控え捕手として活躍。88年に現役引退後はヤクルトでブルペン捕手、広島でコーチを務めた。2005年、四国アイランドリーグの香川オリーブガイナーズ初代監督に就任し、2年目の06年には優勝に導く。昨年は北信越BCリーグの石川ミリオンスターズで運営を部長を務め、08年より新潟の監督に就任した。


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