2月8日から1週間行った今治キャンプは非常に充実した時間を過ごせました。何より、今年のチームは昨年までとはムードが一変しています。選手個々が高いレベルでレギュラー争いを繰り広げ、こちらがあれこれ言わなくても自主的に練習に取り組む姿があちこちで見受けられました。チーム全体でも守備の連係などは例年になく完成度が高い。ここまでは「ベリーグッド」と評価してもよいのではないでしょうか。
 ここまでチームが変わった最大の理由はオフの補強です。投手陣では昨季の関西独立リーグで最優秀防御率などのタイトルを獲得した左腕の岸敬祐が入団しました。活動休止の福岡から移籍した昨季リーグ最多勝の森辰夫と左右の柱になりそうな雰囲気です。岸は右打者のインコースにくいこむクロスファイア―が最大の武器。ここで緩いカーブに習得すれば鬼に金棒でしょう。昔の中日・今中慎二タイプのサウスポーに成長する可能性は充分です。

 また森もオフの間に進化を遂げています。これまではスライダーのイメージが強かったのですが、このキャンプではいいストレートを放っていました。以前よりリリースポイントが前になり、最後のひと押しができるため、打席に立ってみても初速と終速の差をあまり感じません。これはNPBの選手と自主トレをした成果だそうです。本人も現状のピッチングに自信を持っていますし、こちらもシーズンが楽しみです。

 もちろん既存の選手も黙ってはいません。前回、愛媛のキーマンにあげた篠原慎平も目の色が変わっています。今シーズンのスタートにあたっては自ら「背番号は18番をください」とエースナンバーを要求したくらいですから、その意気込みは相当なものです。2年目の山下良太は昨年から取り組んできたアンダースロー気味の投法がようやく板についてきました。クイックやセットポジションでの投球に課題はあるものの、投げるボールは非常に良くなっています。

 野手では昨季16本塁打を放った末次峰明が長崎から移り、不動の4番となりそうです。そして足のある金城直仁(神戸9クルーズ)や増田康弘(福岡)、経験豊富な古卿大知(高知)が加入し、脇を固めます。昨季、チーム最多タイの9本塁打をマークした大津慎太郎でさえレギュラーは確約できない状況です。それぞれがキャラクターを出して、バランスのよい打線が組めそうな気がしています。

 今季のチームスローガンは「START FROM ZERO(ゼロからのスタート)」です。2010年は愛媛にとって県から出資をいただき、県民球団として新たなスタートを切る1年になります。その船出にふさわしく、今年のチームはマンダリンパイレーツ史上最強と断言できるメンバーが揃いました。今季は香川が元NPB選手を多数獲得し、優勝候補の筆頭とみられていますが、若い力では愛媛も負けてはいません。勝って日本一になること、勝ってNPBに行くこと、勝ってファンへ恩返しをすること。とにかく勝ちにこだわってシーズンを戦うつもりです。

 昨年と比べれば僕自身も笑顔になる回数が増えました。それだけ今のチームに手応えを感じています。ぜひシーズン中も選手、そしてファンが笑顔でいられるように頑張りたいと思っています。みなさん、開幕を楽しみにしていてください。今年もよろしくお願いします。


沖泰司(おき・やすし)プロフィール>: 愛媛マンダリンパイレーツ監督
 1961年1月5日、松山市出身。松山商、明治大を経て社会人のスリーボンドで頭角をあらわし、チームの主軸を務める。86年ドラフト4位で内野手として日本ハムファイターズに入団。90年の退団までに投手以外のポジションは全てこなし、ユーティリティプレーヤーとして活躍した。アイランドリーグでは初年度に愛媛マンダリンパイレーツのコーチを務め、2年目からは監督に就任。07年シーズンは前後期ともチームを2位に押し上げ、08年は悲願の初優勝(後期)に導いた。






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