盛り上がりをみせているバンクーバーオリンピックが終了すると、日本にもいよいよサッカーの季節がやってくる。3月7日(土)、待ちに待ったJリーグ2010シーズンが開幕する。6月に南アフリカW杯を控え、J1・J2あわせて37クラブが激闘を繰り広げる。

 磐石の王者に迫る川崎F、G大阪

 昨シーズン、J1では鹿島アントラーズが前人未到の3連覇を達成した。その数字を4に伸ばすべく、鹿島は着々と準備をすすめている。各ポジションの主力は代表チームにも名を連ねており、選手層の厚さもリーグ随一だ。

 今シーズンはMVPに輝いた小笠原満男や右サイドバック内田篤人らの活躍だけでなく、2年目を迎える大迫勇也の成長も見てみたい。久々に登場した大物のオーラを持つゴールゲッターもルーキーイヤーでは3ゴールを挙げるにとどまった。今年20歳となる若武者が年間を通じて活躍し2けたゴールを達成すればリーグ4連覇はグッと近づく。鹿島を率いるオズワルド・オリヴェイラの手腕も見事の一言だ。就任して以来一度もリーグ優勝を逃がしていない。モチベーターとしても評価の高い指揮官だけに、選手たちが3連覇を果たしたことで満足し気を緩めることもあるまい。これまで苦杯を舐めてきたアジアチャンピオンズリーグ(ACL)との2冠制覇も視野に入れ、王者が万全の体制で開幕を迎える。

“打倒鹿島”の一番手は川崎フロンターレだ。J1屈指の実力を持ちながら06、08、09シーズンとリーグ2位に終わっており、タイトル獲得はクラブの悲願でもある。昨年11月、ヤマザキナビスコカップも決勝まで駒を進めながらライバルのFC東京に敗れ準優勝に終わった。それだけでなく、試合後の表彰式での態度が問題になりピッチ外でも注目を集めてしまった。J2時代からクラブを率いた関塚隆監督が退任したが、ヘッドコーチの高畠勉が昇格する形で監督の座を引き継いだ。高畠は08年に体調不良で休養していた関塚に代わって指揮を執っており、選手とのコミュニケーション面で問題はない。チームのコンセプトが大きく変わることもないだろう。

 加えて今オフは稲本潤一をフランスリーグアン・レンヌから獲得するなど積極的な補強を断行している。「これまでヨーロッパで培ってきたものをフロンターレに還元していきたい」と語った稲本。超攻撃布陣の中に稲本ら新加入選手がフィットすれば、チーム力の底上げは間違いない。シーズン序盤に白星を重ね、W杯での中断までにピタリと上位につけておきたい。

 川崎とともに鹿島からタイトル奪取を狙うのはガンバ大阪だ。西野朗監督はチームを率いて9年目となり、これはJリーグ史上最長記録だ。長く指揮官が采配を揮っているため、監督の意図に対する選手たちの理解度はJクラブの中でも図抜けている。「攻撃的サッカーのスタイルは年々強くなっている」と西野監督は自らのクラブを評価する。さらに主力メンバーはほぼ固定されており、華麗なパス回しでみせる“あ・うん”の呼吸も素晴らしい。ガンバは08年にはACLを制覇し08、09年天皇杯で連覇を飾っているものの、05年以来Jリーグのタイトルからは遠ざかっている。ACLとの過密日程も気になるところだが、完成度の高いサッカーで“鹿島超え”を狙う。

 ガンバにとって気になる点は選手層の薄いところだ。特に中盤は遠藤保仁をはじめとして高いレベルの先発メンバーがいるが、その後に続く人材がなかなか出てこない。守備陣に目を向けると不動のセンターバック山口智がケガのため前半戦の出場は絶望的。左サイドバックに位置していた高木和道を本来のポジションであるセンターに戻し安田理大が先発する形になったが、続く控え選手がいない。慢性的な駒不足を西野監督がどのようにやりくりしていくのか。そこも見どころの一つである。

 3強を追う名古屋と浦和 どこも油断できない中位争い

 3クラブを追うのが巻き返しを狙う名古屋グランパスと浦和レッズだ。名古屋は田中マルクス闘莉王と金崎夢生を、それぞれ浦和と大分から獲得し積極的な補強を敢行した。一方で、浦和は広島から柏木陽介を獲得したが闘莉王の穴は新外国人で埋めるようだ。積極策で現状を打破しようとしている名古屋とチームの完成度を高めることで復活を目指す浦和。好対照の両クラブはどのような戦いぶりをみせるのか。ドラガン・ストイコビッチ、フォルカー・フィンケという2人の外国人指揮官がどのようにチームを作り上げていくのか楽しみだ。

 中位グループに目を移すと、どのクラブも実力は接近している。昨シーズンは前年4位の大分トリニータが序盤に大きく躓きJ2へ転落した。その二の舞を避けるためにも、昇格年でいきなり4位に躍進したサンフレッチェ広島は安心していられない。ACLとの兼ね合いもあるが、Jリーグでの戦いに集中するほうがチームマネージメントは順調にいくのではないか。クラブ黄金期には一時代を築いたジュビロ磐田や横浜F・マリノスにもJ2降格の可能性がある。どのクラブにとっても油断のできないシーズンとなりそうだ。

 また、今シーズンから昇格する3クラブ、セレッソ大阪、ベガルタ仙台、湘南ベルマーレはJ1経験のある復帰組だ。特に湘南は10年ぶりのJ1の舞台。彼らはJ2降格と重なる時期に親会社が撤退し市民参加型のクラブとして生まれ変わった。あの中田英寿も在籍したクラブだけに、残留を目標に足場をしっかり固めてもらいたい。

 ギラヴァンツ北九州が加わり今年は19チームで争われるJ2は、昨年までの3回戦総当り51節から2回戦総当り38節の日程に変更される。東京ヴェルディや大分の経営悪化のニュースなど暗いニュースも多いが、9カ月間各地で熱い戦いが行なわれていく。

 昇格を争うのはジェフユナイテッド千葉と柏レイソルの千葉勢に、勝ち点1差で昇格を逃がしたヴァンフォーレ甲府、42歳の中山雅史が加入したコンサドーレ札幌だ。千葉2クラブの優勢はゆるぎないが、昨シーズン悔しい想いをした甲府の巻き返しも注目だ。また、先述の北九州が加入したことにより、九州には5つのJ2クラブが存在することとなった。これは関東の7クラブに匹敵する数だ。地域の色を出しつつ、J2から九州のサッカー熱が盛り上がることを期待しよう。

 W杯イヤーとなる2010シーズンは、サッカーファン以外からも注目を集めるが、W杯前に消化する日程はシーズン全体の3分の1程度である。したがって多くのサッカーファンには、南ア大会終了後の7月17日から再開されるリーグ戦にこそ注視してもらいたい。以前ならば日本で最も人気のあるサッカーチームは日本代表であったが、現在は地元クラブを応援するサポーターの数が随分と増えている。これは世界のサッカー事情をみても健全な姿であり、18年目を迎えるJリーグが成熟してきた証拠といえよう。Jリーグの発展なくして日本代表の成長はない。

【2010Jリーグ 第1節】

J1
・3月6日(土)
湘南ベルマーレ × モンテディオ山形(13:00、平塚)
ジュビロ磐田 × ベガルタ仙台(13:00、ヤマハ)
FC東京 × 横浜F・マリノス(14:00、味スタ)
サンフレッチェ広島 × 清水エスパルス(14:00、広島ビ)
鹿島アントラーズ × 浦和レッズ(16:00、カシマ)
川崎フロンターレ × アルビレックス新潟(16:00、等々力)
ガンバ大阪 × 名古屋グランパス(19:00、万博)

・3月7日(日)
ヴィッセル神戸 × 京都サンガ(14:00、ホームズ)
大宮アルディージャ × セレッソ大阪(15:00、NACK)

J2
・3月6日(土)
アビスパ福岡 × ヴァンフォーレ甲府(13:00、レベスタ)
徳島ヴォルティス × ザスパ草津(14:00、鳴門大塚)

・3月7日(日)
柏レイソル × 大分トリニータ(13:00、柏)
岐阜FC × カターレ富山(13:00、長良川)
サガン鳥栖 × コンサドーレ札幌(15:00、ベアスタ)
ロアッソ熊本 × ジェフユナイテッド千葉(15:00、熊本)
横浜FC × ギラヴァンツ北九州(16:00、ニッパ球)
愛媛FC × ファジアーノ岡山(16:00、ニンスタ)



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