ここまで6試合を終えて2勝4敗。昨季は開幕6連敗スタートだったことを考えれば、今年のチームは戦う形ができています。2勝はすべて接戦に持ち込んでのサヨナラ勝ち。投手陣が踏ん張り、守備にミスが出なければ、どこが相手でも対等に渡り合えることを選手たちも感じているはずです。
 それだけに現在、最も頭を悩ませているのは投手陣の整備です。実は抑えから先発に転向した竹原俊介が肩の違和感を訴えて、戦線を離脱することになりました。エースの角野雅俊は安定しているとはいえ、彼に続く先発投手の確立は必要不可欠です。

 11日の香川戦では、ルーキー左腕の岩雄也(広島鯉城クラブ)をマウンドに送りました。4日の愛媛戦では、竹原の後を中継ぎで、いい投球をみせていたからです。彼は23歳ながら、見た目はそう見えません(笑)。顔つき同様、マウンドでも根性の据わったピッチングを披露してくれます。

 ところが香川戦では緊張のせいか、なかなか本来の投球ができませんでした。長いシーズン、調子が良い時もあれば悪い時もあります。でも、調子の悪い時にいかにマウンド上で修正し、ゲームメイクできるか。その部分で、まだまだ勉強が必要でしょう。岩は球速は決して速くありませんが、130キロ台のストレートでも打者を詰まらせています。球の出どころが見づらいところが彼の良さです。変化球のコントロールも良く、テンポがいいため、野手も守りやすいと思います。強いていえば、ソフトバンクの和田毅のようなタイプでしょうか。この1年間で球速をアップさせれば、もうワンランク上が見えてくるはずです。

 代わって18日の高知戦に先発した光安祐輝も2回3失点と結果を残せませんでした。彼は1年目の昨季、5月に3勝をあげて月間MVPを獲得した右腕です。ところが、そこから調子が下降し、今も悩みの中にいます。ただ、加藤博人コーチの指導の下、フォームをチェックし、ブルペンではいいボールが放れるようになってきました。後は試合のマウンドでそれができるかどうかです。プロは結果がすべての世界。いくら練習が良くても、試合でダメなら生き残れません。13日のオリックス2軍戦で好投をみせたように力はあります。彼には精神的にもうひとまわり大きくなってもらいたいと感じています。
  
 開幕前、先発として楽しみにしていたのは岩根成海(帝京大)でした。制球にやや難はあるものの、ボールにキレも力もある。一時は角野に次ぐ先発2番手に考えていたほどです。ところが、彼も残念ながら腰痛で開幕前に離脱してしまいました。18日の試合で復帰させたものの、2回6失点。ストレートが走らず、痛打を浴び、変化球でストライクがとれないため、四球を連発するという最悪の状態でした。5月のGWでは5連戦のあと、1日休んで3連戦と試合が続きます。先発の枚数を考えると彼はぜひ頭から投げてほしい投手です。早く調子を取り戻してもらいたいと願っています。

 打線では4番の大谷龍次(元千葉ロッテ)が打率.450、5番の國信貴裕が.375と当たっています。またトップバッターの神谷厚毅も好調です。オフに横浜時代のチームメイト、佐伯貴弘と自主トレをしたのが刺激になったのでしょうか。アウトになっても野手の正面を突く鋭い当たりを放っています。バットがスムーズに出て、チャンスメイクができる選手になってきました。

 ただし、彼は今年で25歳です。ドラフト指名を得るには、即戦力として活躍できるところをアピールしなくてはなりません。その点、走者がいる場面での打撃にまだレベルアップの余地があります。単に出塁するだけでなく、いかに走者を還すのか。今後、NPBのスカウトが来た時に勝負強さを見せられるかどうかがカギになるでしょう。

 オーダーは神谷から3番の白川大輔(元千葉ロッテ)、4番・大谷、5番・國信と開幕から固定できています。それだけに、繰り返しになりますが投手が失点を極力防ぐことが求められます。一番怖いのは、昨年も前後期と最下位だったため、「またダメか」とチーム内に諦めムードが漂うこと。今は2つの借金ですが、早くこれを返済し、上位に喰らいついていきたいものです。

 ご存知のように徳島はオーナーが撤退し、新しい親会社を募集中。球団に興味を持っていただくためにも、今季はおもしろい野球をお見せし、結果を残さなくてはなりません。選手たちもそれは十二分に意識しています。今年の徳島はこれまでとは違う。ファンの皆さんには直に球場で、ぜひそのことを確かめていただきたいと思っています。応援よろしくお願いします。


堀江賢治(ほりえ・けんじ)プロフィール>:徳島インディゴソックス監督
1970年8月8日、広島県出身。広陵高から89年、ドラフト4位で大洋(現横浜)に入団。3年目に1軍昇格を果たし、ショートを中心に61試合に出場する。95年、水尾嘉孝、渡部高史とともに、飯塚富司、伊藤敦規とのトレードでオリックスへ移籍。2軍で首位打者を獲得したが、翌年には高嶋徹とともに大島公一、久保充広とのトレードで近鉄へ。98年限りで引退後、地元で少年野球の指導をしていた。現役時代の通算成績は172試合、打率.250、4本塁打、29打点。09年より徳島の監督に就任。
◎バックナンバーはこちらから