群馬ダイヤモンドペガサスは19試合を終え、14勝4敗1分、勝率.778、現在は上信越地区のトップをキープしています。特に打線が好調で、チーム打率はダントツトップの.323をマークしています。これは個々の選手がレベルアップしたことが最大の要因。2年目、3年目の選手が正しい体の使い方を覚えたことでスイング力がアップし、打球のスピードが増したのです。これまでコツコツと積み上げてきた努力の成果が表れてきたのでしょう。
 なかでも不動の4番、カラバイヨ(ヒューストン・アストロズ−高知ファイティングドッグス)はリーグトップの打率.417、10本塁打と絶好調です。NPBへの昇格も徐々に現実味を帯びてきています。彼の本職は外野なのですが、体のキレを出すために内野にコンバートしました。正直、守備力は目をつぶらなければいけないところもあるのですが、少しでもNPBへのチャンスが広がればと思っています。

 また、3年目の志藤恭太(市川高)も今シーズンは非常にいいですね。昨年までと比べると、打ち損じが少なくなり、一球で仕留められる力がついてきました。フォーム自体、無駄な動きがなくなったこともありますが、何よりも積極性が出てきたことが大きいですね。これまではなかなかバットが出ず、追い込まれて悪球に手を出してしまうケースも多かったのです。振る勇気と準備力。これが身についてきたからこその結果だと思います。

 一方、投手陣はというと、今シーズンは投手コーチが不在ながら本当によく頑張ってくれています。なかでも成長著しいのが小暮尚史(児玉高)です。課題だった変化球でストライクが取れるようになったこと、またシュートを実戦で投げられるようになったことでピッチングの幅が広がったのです。

 また、昨シーズンは肩や腰を痛めて、わずか登板6試合に終わった通事慧太(豊見城南高−国際武道大学−サウザンリーフ市原)が今シーズンは完全復活したこともチームにとっては大きいですね。ここまで9試合に登板し、2勝0敗、防御率0.68と今や中継ぎの中心的存在です。通事は器用な分、これまで手先だけで投げていたのですが、今シーズンは腰を使ってボールを運ぶことができるようになり、投手独特の粘りのあるピッチングフォームになりました。そのため、130キロ台半ばだった球速も、140キロにまで伸びました。さらに落ちる球を習得したことで、左打者からも三振が取れるようになったのです。

 逆になかなか本来のピッチングができずに苦しんでいるのが清水貴之(世田谷学園高−日本大−全足利クラブ)です。昨シーズンと比べると、三振が多くなった代わりに、四球や失点も多くなっています。一番の原因はリリースポイントが安定していないことにあります。そこでこれまで体全体を使った投球練習の方法をかえ、現在は体の一つ一つの部位や五感を使った練習をしています。

 例えば目を閉じてピッチングをさせる方法。頭でイメージしたコースと、実際のコースとどう違うのか、どう差が出ているのかを確認するためです。目を閉じることによって視覚からの情報が遮断されるため、指先の感覚に頼らざるを得ません。そのため、神経が指先に集中し、どういう時にどんなボールがいくのかを体に覚えさせるのです。正直、どこまで克服できるかは未知数です。しかし同じことをやっていては決して改善されません。とにかくやれることを一生懸命やっていきたいと思っています。

 シーズンはまだこれからです。チームとしての今後の課題は失点をどう減らしていくのか。つまり、バッテリーを中心に守備力の向上を図っていかなければいけないと思っています。前述したカラバイヨのほか、堤雅貴(高崎商業高)、川村修司(帝京高−REVENGE99)、井野口祐介(桐生商業高−平成国際大−富山サンダーバーズ)、内山勇輝(深谷第一高−東京国際大)などはNPB昇格の可能性を十分にもっています。また、他の選手も成長著しく、この1年でどれだけ伸びるのか楽しみです。ぜひ球場に足を運んで、彼らに熱い声援を送ってほしいと思います。

秦真司(はた・しんじ)プロフィール>:群馬ダイヤモンドペガサス監督
1962年7月29日、徳島県出身。鳴門高校3年時には春夏連続で甲子園に出場。法政大学時代の84年、ロサンゼルスオリンピックに野球日本代表として出場し、公開競技ながら金メダル獲得に貢献した。翌年ドラフト2位でヤクルトに入団し、4年目には正捕手として122試合に出場した。その後、外野手に転向し、90年代のヤクルト黄金時代を築き上げる。99年に日本ハム、2000年に千葉ロッテへ移籍し、その年限りで現役を引退した。その後はロッテの打撃コーチや中日の捕手コーチ、解説者として活躍。08年より群馬ダイヤモンドペガサスの監督を務める。


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