「スタンドを埋め尽くす大観衆。久しぶりに見る光景だ!」
 5月29日(土)、J2第15節となる愛媛FC対ヴァンフォーレ甲府の一戦が、ホーム(ニンジニアスタジアム)にて行われた。
 今日のマッチタウンは松山市と、その周辺地域(伊予市、東温市、久万高原町、松前町、砥部町)。ホームスタジアムの所在地にあたるチーム活動の中心的地域である。それだけに、「1万人以上の観客動員を目指したい!」という意見が持ち上がり、今節に向けて動員計画が練られた。愛媛FC事務局や自治体、サポーターや支援者の方々などが、積極的に集客への活動を行ってきたのだ。その努力の甲斐があり、今日のホームゲームには1万人を超える観客を動員することに成功したのである。
(写真:スタンドを埋め尽くす大観衆)
 前節(第14節)アウェイにて、難敵・大分トリニータを相手にスコア2−0と快勝を収めた愛媛FC。1万人の観衆が見守る中、気分良くホームゲームへと臨めそうである。

 晴天に恵まれた今日のニンジニアスタジアム。美しく剪定された芝生が覆うピッチ・レベルは、ほぼ無風状態で絶好のコンディションである。
 照明灯に灯りが点る中、時計は午後7時を廻り、ヴァンフォーレ甲府のキックオフで試合がスタートした。

 立ち上がりから積極的な攻撃の姿勢を見せる愛媛イレブン。
 前半2分、MF持留新作選手がドリブルで敵陣のペナルティアークまでボールを持ち込み、ペナルティエリアに侵入する構えを見せるFW内田健太選手へとスルーパスを供給する。ボールに追いついた内田選手が、ダイレクトに左足を振り抜きシュートを放った! しかし、敵GKのセービングでゴールならず。惜しい場面だった。
 
 J2リーグ屈指の攻撃力を誇る甲府も黙ってはいない。自慢のFW陣が、愛媛ゴールに襲いかかる。それでも好調な愛媛のDF陣が、その攻撃をはね返し、相手の先制を許さない。

 好守を繰り出し、徐々にリズムを取り戻す愛媛FC。
 前半16分、歓喜の瞬間が訪れる! MF杉浦恭平選手のロングフィードから、内田選手が敵陣深くボールを持ち込み、愛媛FCがコーナーキックのチャンスを得る。キッカーは、内田選手。短い助走から、敵ゴール前へ向けて絶妙のセンタリングを供給。このボールを捉え、ゴール前に走り込んで来たのは杉浦選手だ。勢い良くジャンプし、敵DFを振り切り、強烈なヘディングシュートを放った!

 ボールは敵GKが反応できない程のスピードでゴール右隅に突き刺さった! 見事な先制ゴール! 地響きのような大歓声が湧き起こるスタジアム! 高々と両手を突き上げ、喜びを表現する杉浦選手。チームメイトが駆け寄り、手荒な祝福を浴びせる。
 
 3試合連続の先制ゴールゲットで、試合の流れは一気に愛媛へと傾くかと思ったのだが、前半33分、愛媛陣内でのフリーキックからの攻撃で、あっさりとゴールを決められ、同点に追いつかれてしまった。
 
 その後、一進一退の攻防が続く中、両チームの選手たちも徐々にヒートアップ。激しい接触プレーが、ピッチ上で起こり始める。前半42分、FW福田健二選手が明らかに相手からファウルを受けたにも関わらず、主審が無視するという事態が発生。さらには、この審判の対応に対し、抗議を行ったバルバリッチ監督が退席処分を受けるという何とも解せない処置が下された。
 
 後半に入ってからも激しい攻防が続く。相手の猛攻に耐えつつ、素早いカウンターやセットプレーなどで反撃を試みる愛媛FC。
(写真:愛媛のセットプレー、敵ゴール前での攻防)
 後半20分、敵陣内へとオーバーラップを仕掛けていたDF関根永悟選手が、敵のボールを奪い、そのままペナルティエリアまでドリブルで持ち込みシュート! 後半32分には、内田選手によるグラウンダーのフリーキック! 後半44分には、右サイドMF大山俊輔選手からのクロスを捉えたDF高杉亮太選手のヘディングシュート!

「あと少しで勝ち越しゴール……」という惜しいシーンが見られたが、同点のまま、アディショナルタイムへと突入。
 このまま引き分けかと思われた矢先、再び敵によるフリーキックからの攻撃で、ゴールを決められ、直後にタイムアップ……。結局、最終スコア1−2という何とも悔しい敗戦となってしまった。
 
 前半途中、納得のいかない審判によるジャッジもあり、実に後味が悪い試合であった。 それでも、1万人の観客と共に素晴らしい先制ゴールの「喜び」を体感し、試合後に「悔しさ」という感情を共有できたことは、愛媛FCやサポーターにとって、大きな財産につながることだと思える。
 今後も今節の経験を活かし、積極的な集客に努め、今度こそはホームスタジアムの大観衆と共に、後味の良い、素晴らしい試合を体感したいものだ。


松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール
 1967年5月14日生まれ、愛媛県松山市出身。
 愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。
◎バックナンバーはこちらから