9月19日(日)、J2第26節となる愛媛FC対徳島ヴォルティスの一戦が、ホーム(ニンジニアスタジアム)にて行われた。
 今日の試合は、今季最後の四国ダービー。絶対に勝たなければならない試合である。今季の四国ダービー第1ラウンドは、スコア0−0の引き分けに終わっている。いわば、今節が決着をつける戦いとなるのである。
 現在(第25節終了時点)、リーグ戦2連勝中と昇り調子の愛媛FC。勢いそのままに、プライドを賭けたダービーマッチを征し、ウィナーズ・フラッグを、故郷・愛媛に取り戻して欲しい。
(写真:スタジアムには7000人を超える観客が詰めかけた)
 朝から晴天に恵まれた、今日のニンジニアスタジアム。ピッチコンディションも良好のようである。
 時刻は午後7時を廻り、スタジアムが夕闇に包まれる中、愛媛FCのキックオフで試合がスタートした。
 
 序盤、ロングフィードや速攻などを駆使し、敵陣へと積極的に攻め込んで行く愛媛FC。
 前半4分、センターサークル付近に陣取るMF赤井秀一選手がボールをキープ。敵陣中央のFWジョジマール選手に向けて、素早くパスを供給する。ボールを受けたジョジマール選手が、敵DFを背負いつつ、中央突破を図ろうという構えをみせるMF杉浦恭平選手に向けてパスを送る。ボールを足元に収めた杉浦選手が、そのままドリブルで敵陣中央を突破。ゴールまで30m近く残す位置から右足を豪快に振り抜き、ミドルシュートを放った。ボールは惜しくもゴールマウスを捉えることはできなかったが、積極的な攻撃への姿勢には、今日の試合への意気込みが感じられた。観客からも大きな拍手が送られていた。
 
 前半9分、センターサークルで敵のボールを奪うFW大木勉選手。そのまま敵陣中央をドリブルで駆け上がる。敵陣内の右サイドでフリーとなっている赤井選手に、一旦ボールを預ける大木選手。パスを受けた赤井選手が相手DFを引き付けつつ、ペナルティエリアまでボールを持ち込み、ペナルティアークに陣取る大木選手へとラストパスを供給する。足元に来たボールにタイミングを合わせ、ダイレクトに右足を振り抜き、シュートを放つ大木選手。しかし、ボールはゴールポスト外側に外れ、先制点には至らなかった。
 
  前半36分、敵陣内での愛媛のスローインからのリスタートで、大木選手がポストプレーをみせる。ワンタッチで敵陣内の左サイドにいる杉浦選手へと巧みにボールをつなぐ。パスを受けた杉浦選手が、ドリブルで敵のペナルティエリアへとボールを運び、ゴール前に詰めているジョジマール選手へとラストパスを送った。ジョジマール選手はこのボールを捉え、ダイレクトに左足を振り抜き、シュートを放つ。が、これまたゴールマウスを捉えることはできなかった。
(写真:敵ゴールへと攻め上がる愛媛攻撃陣)
 
 それでも、徳島が打った倍の数のシュートを放ち、相手を徐々に追い詰めていく愛媛攻撃陣。後半に入ってもその勢いは衰えず、ついに歓喜の瞬間が訪れる。 
 後半15分、敵陣中央でルーズボールを拾ったFW内田健太選手が、相手選手に背後から激しいタックルを受けて倒される。これがファウルとの判定で愛媛FCがフリーキックのチャンスを得た。敵ゴールまで35m近く残す位置からのフリーキック。キッカーは内田選手。対コンサドーレ札幌戦(8月29日、第24節)でのスーパーゴールが思い出される。

 後半16分、ボールをゆっくりとセットする内田選手。長めの助走から一気に加速し、左足を豪快に振り抜いた! 低い弾道の弾丸シュートは、敵DFが作る壁の間を抜け、敵ゴールへと襲いかかる。敵GKが必死に手を伸ばすが、ボールはその先をすり抜け、見事ゴールネットに突き刺さった! 素晴らしい先制ゴールだ! スタジアムに大歓声が湧き起こる! 愛媛ベンチに駆け込み、チームスタッフと抱き合い、喜びを爆発させる内田選手!
「スウィーンギン! スウィンギン・エヒメ! フォーエバー〜!」とサポーターが、内田選手のゴールを称えるコールを繰り返す。観客席では誰彼構わず、ハイタッチや握手を交わし合うなど、まさにお祭り騒ぎである。
 
 その後も、高いモチベーションを保ったまま戦い続ける愛媛イレブン。
 終盤、徳島に攻め込まれる場面も訪れるが、守護神・川北裕介選手を中心に愛媛DF陣が自陣ゴールを最後まで守りきり、ついにはタイムアップ。最終スコア1−0で愛媛FCが見事、今シーズンの四国ダービーを征した。
 
 終始、勝利へのこだわりと戦いへの強い気持ちが感じられた今節の愛媛FCの選手たち。
「素晴らしい勝利をありがとう!」
 試合終了後の表彰セレモニーで、四国ダービー・ウィナーズ・フラッグがキャプテン・福田健二選手に手渡された。愛媛の人間にとって感動的なシーンである。思わず熱いものが込み上げてくる。スタンドでは、嗚咽して泣いているサポーターもいた。
 
 長いリーグ戦の中で、今日の勝利はたかが1勝ではあるが、愛媛にとってはとても意義のある勝利である。これを糧に、今季の目標に向けて残りの試合を全力で駆け抜けてもらいたい。
 熱い応援を終え、横断幕を片付け、サポーター仲間と笑顔で握手を交わして帰路に着く中、私は愛媛を故郷に持つことを本当に誇らしく感じた。


松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール
 1967年5月14日生まれ、愛媛県松山市出身。
 愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。
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