王者・帝京大、立教大に13T圧勝 青学大が31年ぶり筑波大戦勝利 ~関東大学ラグビー対抗戦~
29日、ラグビーの関東大学対抗戦Aグループが東京・秩父宮ラグビー場で行われた。昨季王者の帝京大学は同6位の立教大学を85-7で下し、開幕3連勝で勝ち点を18とした。昨季7位の青山学院大学は同4位の筑波大学を30-22で破り、今季初勝利を挙げた。青学大の対抗戦で筑波大に勝ったのは1993年12月以来、31年ぶりだった。
開幕2節を67-6、40-5と勝利していた帝京大だが、その内容は満足できるものではなかったという。主将の青木恵斗が「スコアを取り切れない場面が2試合続いていた」と振り返れば、副主将の李錦寿(4年)は「帝京らしさがなかった」と振り返る。
SH李とSO大町佳生(3年)のハーフ団が光った。特に今季初先発初出場の李については、相馬朋和監督が「彼が入ることでまわりも落ち着く。ゲームも見ていただいた通り、落ち着きます。彼が醸し出す雰囲気、球捌き、ラックへの寄り、ひとつひとつがチームに対して安心感を生んだと思っています」と語ったようにアタックにリズムをつくった。
9分、李からボールを受けた大町の飛ばしパスからWTB森寛大(4年)がトライを挙げ、トライラッシュの幕開けとなった。11分のFB石原幹士(2年)のトライも李-大町からキックパスで演出した。14分には李が自らインゴール左に飛び込んだ。前半7トライの量産体制。43-0で試合を折り返した。
それでも大町は「前半はスコア重ねた後の選択で取り急いでしまっていた。そこは自分のコントロールミス」と反省を忘れない。後半に入っても攻め手を緩めない帝京大はトライを続けた。WTB生田弦己(3年)が不可抗力ではあったかもしれないが危険なプレーでイエローカードをもらい、シンビン(10分間の一時退場)となった時間帯も2本のトライを挙げた。立教大には1トライ1ゴールを返されたものの、後半6トライ6ゴールで計13トライ10ゴールで完勝だった。
相馬監督は「開幕から難しい試合が続いていましたが、帝京らしいプレーが随所に、青木キャプテンを中心に見せてくれた」と試合を総括。プレーヤー・オブ・ザ・マッチに輝いた青木は過去2戦を「僕自身の表情が暗かったり、僕のパフォーマンスが落ちたらチームにどれだけ影響するのか学べた」と反省し、「今日の試合は自分が帝京のスタンダードを示すつもりで、いい表情、いいプレーを心掛けて戦えた。チームとしても、このような結果を得られたのは大きな成長だと思います」と完勝に胸を張った。
もちろん青木だけのワンマンチームではない。本橋拓馬(4年)、李ら同期だけではなく、1学年下の司令塔・大町もリーダーへのサポート体制を誓う。
「恵斗君がボールを持った時が一番勢いが出るし、(相手の)脅威になる。いろいろなものを背負っていて、うまくいっていないところもあったのかもしれない。今日はハードに縦に入れることでアタック勢いづけることができた。恵斗君の強みはキャリー。ボールを持ったらトライまで行ってくれるか、ゲインをしてくれる。そこは信頼しています。プレーで見せるキャプテンなので、そこは僕らが支えるべきだと思っています」
ともに創部100周年を迎えた同士の一戦は、開幕2連敗中の青学大に軍配が上がった。
先制したのは開幕2連勝中の筑波大。SO楢本幹志朗(3年)が前方に蹴り出したボールに、WTB飯岡健人(2年)が追いつき、インゴール右に滑り込んだ。猶本がコンバージョンキックを決めて7点をリードした。ところがその後はハンドリングエラーが重なり、攻撃を継続できない。
するとペースは徐々に青学大へ。19分、WTB川端航聖(4年)が抜け出してトライを奪うと、26分にはFWで押し込み最後はPR木村陽太(2年)がトライを挙げた。互いにPGで3点を加え、青学大が17-10とリードして前半を終えた。
時折雨が降るはっきりしない天候の下、試合の流れも落ち着かなかった。後半、先に取ったのは青学大。8分、PGで点差を10に広げた。対する筑波大もその2分後に飯岡がこの日2本目のトライで5点差に迫った。
青学大はPGで8点差にしたものの、筑波大が1トライ1ゴールを返し、1点差に。この筑波大ムードを打ち破ったのが、この日再三再四接点で存在感を示していたLO荒川真斗(3年)だ。
28分、インゴール目前でボールを持つと、相手を押し込んでゴールラインを割った。「チーム全員でつくったスペースに、たまたま自分がグラウンディングしただけ。すごくうれしかったですが、チーム全員のトライだったと思います」 試合後にそう胸を張った荒川は、この日のPOMにも輝いた。30-22とリードを広げた青学大はその後は筑波大に反撃を許さなかった。今季初白星は1993年12月以来の対抗戦の筑波大戦勝利というオマケ付きだった。
青学大の糊谷浩孝HCは「選手ひとりひとりの気持ち、勝ちたいという執念が筑波大学さんより上回り、このような結果になったと思っています」と振り返る。31年前の筑波大戦勝利時の青学大メンバーである糊谷HCは今季からフルタイムで指導を行い、強化を図ってきた。主将のCTB河村凌馬(4年)によれば、練習量も「時間は2倍、2.5倍くらい、走る量は3倍近くなったのかなと実感しています」と増えたという。
100周年の青学大の目標は30年ぶりの大学選手権出場、ベスト8入りだ。「大学選手権ベスト8という目標を掲げた中、大学選手権出場のために筑波大学さん、慶應大学さんは倒さないといけない相手というところで意識していました」と河村。チームスローガンは“徹底”で、2月からグラウンド内外でハードワークし、その姿勢にこだわった。河村は「どんなチームが愛されるのか、どんなチームが80分を終えて笑えるのか。それを追求、探求してやってきたのが今日に繋がったと思います」と勝利を喜んだ。
(文・写真/杉浦泰介)