昨年の12月4日(土)、愛媛県東温市にある「坊っちゃん劇場」において、観劇ファンに向けた「坊っちゃん劇場5周年ファン感謝祭」イベントが行われた。
 なんと! 驚くことに、この劇場イベントへ私たち愛媛FCのサポーターが招待され、舞台に上がることになったのだ。
(写真:坊っちゃん劇場ファン感謝祭の告知チラシ)
「坊っちゃん劇場」は、西日本初の地域文化を発信する常設劇場として、2006年4月22日にオープンし、今日まで劇団「わらび座」のメンバーを中心に、観客との一体感を大事にした本格的なミュージカル作品が上演されている。同劇場の名誉館長を務めるのは、脚本家や演出家としても有名なジェームス三木氏。これまでほとんどの上演作品の制作にも携わっている。

 劇場における、これまでの上演作品は「坊っちゃん!(2006年)」、「吾が輩は狸である(2007年)」、「龍馬!(2008年)」、「鶴姫伝説〜瀬戸内海のジャンヌダルク(2009年)」、「正岡子規〜明治を駆け抜けた男たち(2010年)」。劇場のコンセプトにも掲げられている愛媛や四国、瀬戸内の歴史や文化伝統を題材とした演目が公演されてきているのだ。
 
 今回の5周年ファン感謝祭イベントにおいては、前述のような過去のミュージカル作品のダイジェスト版が上演されたほか、「芸術(演劇)とスポーツの夢のコラボレーション」として、公演内に1つのコーナーが設けられ、私たち愛媛FCサポーターと愛媛マンダリンパイレーツ応援団による応援合戦が行われることになった。
 
「地域の芸術文化の記念的なイベントから招待を受けたからには、愛媛FCのためにも是非ともお客さんを盛り上げたい!」
 そんな気持ちを胸に当日、意気込んで劇場に足を踏み入れてみたものの、その独特な雰囲気と開場を待つ人々を目の前にしてしまうと、さすがに緊張せずにはいられなかった。
(写真:坊っちゃん劇場・正面入口)

 イベントの前売り券は完売状態だったらしく、いざ開場されると客席(約450席)はみるみるうちに、お客さんで埋め尽くされ、あっと言う間に満席となった。
 午後5時を過ぎて開演の時刻となり、主催者やゲストの挨拶のあと、舞台の幕が静かに開かれた。舞台上では、劇団俳優の皆さんにより、ミュージカル作品の名場面が次々と展開されていく。観客たちは皆、その素晴らしい歌や踊り、お芝居に魅了され、演劇の世界へと引き込まれていた。
 
 大盛況のうち、第3部が終了すると、いよいよ私たちの出番。司会者に導かれ、劇場の舞台へと上がる。愛媛FCと愛媛マンダリンパイレーツの選手たちも来場していたので、先にそれぞれの選手へのインタビューが行われた。
 舞台後方で、その様子を窺いつつ、緊張がピークに達する中、応援合戦がスタート。太鼓を抱えながら、舞台のセンターに立ち、基本チャント(「愛媛FC」)を観客の皆さんにレクチャーした上で、応援コールへの協力を呼びかけた。

「エヒーメ!エフシー!」
 私の唄い始めに続けて、会場全体が「エヒーメ!エフシー!」と大合唱! ものすごい盛り上がりだ! 最初は不安だったが、お客さんは皆さんノリが良く、圧倒される程の大きな声と手拍子で盛り上げてくれた。それは、まるで劇場がスタジアムと化したような不思議な感覚だった。いつしか緊張もとれ、その後も応援チャントを3曲、会場の皆さんとともに大合唱で楽しみ、私たちの出番が終わった。
 
 午後6時30分、全イベントが終了し、会場をあとにする観客をお見送りすると、「楽しかったよ!」「お疲れさん!」などなど見ず知らずのお客さんたちから、たくさん声を掛けていただいた。皆さん、満面の笑みを見せてくれており、短い時間ではあったが、スポーツにおける「応援」というものを楽しんでいただけたのではないかと感じている。

 この日のイベントに来場されているお客さんは観劇などを趣味とされており、普段、愛媛FCの試合観戦はされていない方々がほとんどだろうと思われる。しかし、今回のイベントでの応援合戦をきっかけに、ひとりでもスタジアムへ足を運んでいただける方がいらっしゃれば本当に嬉しいことである。
 
 このような素晴らしいイベントを開催し、私たちを招いて下さった坊っちゃん劇場の皆様や劇団関係者の方々には感謝の気持ちでいっぱいである。ありがとうございました。
「スポーツと芸術(演劇)」、また「スタジアムと劇場」。形の違いはあれども、どちらもそこに集う人々の心へ大きな「感動」をもたらすことができる至高の文化であり、非日常的な空間でもある。これからも廃れることなく、地域とともに発展を遂げ、未来へと「感動」を紡いでくれることを望んでやまない。


松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール
 1967年5月14日生まれ、愛媛県松山市出身。
 愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。
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