希望か絶望か もはや“ただの一戦”ではない
阪神ファンとしてのわたしが、“アレンパ”を諦めたのは、9月23日の巨人戦だった。前日は才木で1-0。ここで連勝を決めれば勝ったも同然。そう意気込んで迎えた試合で負けた。現場の選手たちのきもっちはわからないが、少なくとも、わたしの気持ちは折れた。
スポーツには、ただの1勝、ただの1敗では片づけられない試合がある。
10月5日は、わたしが札幌のファンであれば、降格を受け入れた日、になっていたかもしれない。
敵地でのG大阪戦。札幌の選手は奮闘した。新戦力の白井が古巣相手に先制弾をたたき込み、その後は押され気味になりながらも決定機の数と質では互角以上の戦いを見せる。
中でも目を引いたのはベテラン大崎の奮戦ぶりだった。一昔前であれば「リベロ」という言葉で表現されていたであろう、神出鬼没のポジショニング。G大阪にとっては、間違いなく札幌で一番邪魔な選手だったことだろう。
ところが、1点リードで迎えた追加時間、G大阪にPKが与えられる。原因は、不運としかいいようのない大崎のハンド。これを決められて勝ち点を「2」失った札幌は、その数分後、今度は痛恨のミスタックルで決勝点を奪われた。飛び込み、かわされたのは大崎。マンオブザマッチに選ばれていてもおかしくなかった選手が、最後の最後で勝ち点を0にする2失点に絡んでしまった。わたしが札幌のファンであれば、気持ちが折れるどころか粉砕されてしまう敗戦だった。
どれほど有能な監督だったとしても、立て直しは不可能としか思えない深手。ただ、札幌にとって幸いだったのは、ここで2週間の中断期間が入ったことだった。人間には癒せぬ傷も、時間なら可能だった、ということだろう。先週土曜日、彼らは敵地で名古屋を下した。残留への道は依然として険しいが、しかし、可能性を灯す勝利だった。
同じ日、やはり降格圏内に沈む磐田は敵地でC大阪と対戦した。幸運な形での先制点など2点のリードを保って終盤を迎えた彼らだったが、後半43分に1点を返されると、追加時間にはPKを献上。ところが、この絶体絶命の危機を、GK川島が「一世一代」といってもいいぐらいのビッグセーブで食い止める。わたしが磐田ファンだったら号泣していただろうし、この勝ちで、残留を確信していたことだろう。
だが、11月には再び、W杯予選による中断期間がある。
単なる1敗ではない敗北を喫したチームには吉と働き、単なる1勝ではない勝利を上げたチームにはつかみかけた流れを獲り逃すことにもつながりかねないこの中断期間が、各チームにどんな影響をもたらすのか。今年の残留争いは、例年以上に読みにくい展開となりそうだ。
もちろん、優勝経験のある広島、神戸に2強に懸命に町田が食い下がっている優勝争いからも目は離せない。
興味深いのは勝ち点で後れをとる町田の対戦相手である。首位の広島が敵地での浦和戦や札幌戦、2位の神戸が磐田、柏、湘南など、残留を争うチームとの対戦を残し、日程的にも苦しいのに比べ、ACLのない町田は中位クラスとの対戦が続く。ラク、とまでは言えないものの、相手の“火事場の馬鹿力”的なパフォーマンスに相対する可能性は、他の2チームよりは低いとみる。気温は一気に下がってきたが、Jリーグはここからが激アツである。
<この原稿は24年10月24日付「スポ-ツニッポン」に掲載されています>