早大、1年生コンビの躍動で快勝 明大も全勝キープ 〜関東大学対抗戦グループA〜
関東大学ラグビー対抗戦グループAが3日、東京・秩父宮ラグビー場で行われた。早稲田大学が全国大学選手権3連覇中の帝京大学を48-17で下した。明治大学は筑波大学に31-0で勝利。これで全勝は早大(4勝)と明大(5勝)のみとなった。
春季大会は帝京大、夏合宿の練習試合では早大に軍配が上がった直接対決。秋は互いにリーグ戦全勝で迎えた。帝京大は4連勝、早大は3連勝。今季の大学選手権の行方を占いそうな一戦、秩父宮ラグビー場には1万2000人を超える観客が集まった。
先制したのは早大。FWバトルで優位に立ち、敵陣でプレーを続けた。前半13分、SO服部亮太(1年)の鋭いパスを受けたWTB田中健想(1年)がインゴール右隅に飛び込んだ。19分にはスクラムで押し込み、相手の守備陣形を崩してからFB矢崎由高(2年)のバックフリップパスを受け取った田中が再びインゴール右隅にトライ。21分には主将のHO佐藤健次(4年)から田中がインゴール右隅にダイブし、ハットトリックを達成した。CTB野中健吾(3年)が2本のコンバージョンキックに成功し、19―0とリードを奪った。
帝京大を意地を見せる。主将のFL青木恵斗(4年)が持ち味のフィジカルでチームを牽引する。27分、左ラインアウトでショートサイドに走り込むサインプレーでトライを奪う。「相手を分析した結果」とモールを敢えて組まず、ディフェンスラインを突破した。35分にはSH李錦寿(4年)のパスを受けると身体をブチ当てる。対峙した2、3人を物ともせずインゴールラインを割った。主将の2トライで9点差に迫る。
この試合、再三ロングキックで会場を沸かせていた赤黒の10番が、今度はランで魅せる。前半終了間際、右ラインアウトのボールが乱れるが、佐藤のパスをキャッチすると緩急使い分けるステップでするりと抜け出し、インゴール右中間にボールを置いた。野中のコンバージョンキックも決まり、帝京大の反撃の勢いを遮断した。
1年生コンビは後半に入っても躍動。4分に服部のロングキックで相手のノックオンを誘うと、その2分後、田中が右サイドを突破して、そのままインゴール右にトライ。27分には服部がトライを挙げた。40分には田中がインターセプトトライで50mを独走。この日5本目のトライをインゴール右に飛び込んだ。終了間際に1トライ1ゴールを返されたものの、早大の完勝だった。
「今日の試合は対抗戦の1試合ではなく、我々が何としても超えないいけない帝京さんが相手ということで準備してきた」と早大の大田尾竜彦監督。主将の佐藤も「ひとつのターゲットゲームだった」と振り返り、こう続けた。
「全員がポジションバトルのところですごいファイトができたので良かった。僕がHOになって3年目。これまで過去2年はセットプレーで圧倒され、負けてしまった。今年はセットプレーを中心にいいゲーム運びをできたかなと思います」
また佐藤はBチーム以下の雰囲気づくり、試合に向けての準備が良かったとも話した。
早大は次節10日、筑波大と対戦し、その後は早慶戦(11月23日)、早明戦(12月1日)とビッグゲームが控えている。佐藤は「まずは1戦1戦。相手を意識するより自分たちにベクトルを向ける」と前を向いた。
POMには5トライを挙げた田中が選ばれたが、服部のインパクトも絶大だった。2トライを挙げたランスキル、田中のトライをアシストした鋭いパスも良かったが、特に際立ったのは自陣深くから蹴ってもハーフウェイラインまで陣地を戻せるキック力だ。敵将の相馬朋和監督も「キックが素晴らしかった」と脱帽。キックの度にどよめきにも近い歓声が上がっていたことについて、本人は「少しは聞こえていましたが、そこで調子に乗ってしまってはダメと思い、1本1本集中して蹴りました」と語り、今日のエリアマネジメントについても「中途半端なキックが多かったというイメージ」と満足してはいなかった。
佐賀工業、早大と服部と同じ進路を辿った大田尾監督はジャパンにも選ばれたSO。教え子に司令塔学を伝授する。「皆さんもご覧の通り、服部は非常に恵まれた才能を持っている。本人もしっかり練習を大事にする人間なので、成長する余地は大いにあります。その中でポジショニングとか、パスをするときの細かいところとか、これからもっと上のステージにいっても困らないようにプレッシャーを背負いながらプレーする位置を覚えさせないといけないなと思っています。今は彼の高校時代の癖を抜きつつ教えているという感じですね」
帝京大は対抗戦では4年ぶりの黒星。相馬監督も「すべての面で早稲田さんが我々を上回っていた。学生たちを勝たせてあげる準備をさせられたなかったのが反省点」と肩を落とした。特にスクラムをうまく組めず、流れを掴めなかった。これで3連覇に黄信号が灯ったが、次節は17日、ここまで5戦全勝の明大と対戦する。優勝戦線に残るには勝利は必須だろう。
(文・写真/杉浦泰介)