3月11日に発生した東日本大震災はダイキスポーツの活動にも影響を与えている。ジュニアゴルフでは2選手が参加予定だった全国小学生ゴルフ選手権春季大会(滋賀・瀬田ゴルフコース)が中止。また埼玉県の戸田ボートコースが地震で被害を受けたこともあり、25日から同コースで行われる予定だったボートの日本代表合宿は取りやめになった。だが、各選手たちは一日も早い被災地の復興を祈りつつ、今できることに取り組んでいる。ボート武田大作選手、ダイキ弓道部、ダイキジュニアゴルフスクールの新しいシーズンに向けた動きを追った。
(写真:武田選手は地震当日、岐阜で合宿中だった)
<武田、厳しい現状も「逃げない」>

 ダブルスカルで世界を転戦し、ロンドン五輪への弾みをつける――五輪のプレシーズンとなる今季、武田が描いていたプランだ。しかし、それは出だしからつまづいている。まず肝心のパートナーが見つからないのだ。
「いい選手は多いんです。でも、世界で勝てるレベルまで行けるかとなると難しい……」
 ダブルスカルでシドニー、アテネ、北京と3大会連続で大舞台に臨んできた37歳にとって、経験のない緊急事態である。

「状況は厳しいです。ただ、パートナーを組めるような後輩が育たないのは自分にも責任がある。現実から逃げずに立ち向かっていくしかない」
 古傷の左ひざ痛は、入念にケアを行い、今のところ競技に支障はない。人一倍の練習量をこなし、貪欲に自身のレベルアップを図っている。

 五輪の出場権を得るためには8月末からスロベニア・ブレドで開催される世界選手権で上位11位までに入ることが求められる。
「でも、(11位に入って)出場枠を獲ることを目指していては、それすらムリだと思います。やはり出るからには、世界選手権の決勝に残ってメダルを獲るつもりでやらないと」
 これまでも、その思いで世界と戦ってきた。武田にとって、もはや五輪は出るためにあるのではない。あくまでも勝つためにあるのだ。

 今後は早急にパートナーを決定し、5月のワールドカップ第1戦(ドイツ・ミュンヘン)に臨む。一時帰国した後は再び渡欧し、7月のワールドカップ第3戦(スイス・ルツェルン)に出場する予定だ。そこで弾みをつけ、世界選手権へ乗り込む考えだ。
「頑張っていれば、光は見えてくる。そう信じています」
 自分に言い聞かせるように武田は言った。集大成となるロンドンへ、ボート界の第一人者は最大の正念場となる1年に挑もうとしている。

<弓道部、本気で「3冠」を狙う>

 ダイキ弓道部の今季のテーマは「弓の安定」だ。今回から国体の県代表の選考方法が変わり、既に昨年の秋から予選がスタートした。3月27日には2次予選が実施され、4月、5月の予選会も合わせた計4回の選考を踏まえ、8月の四国ブロック予選に出場する県代表が決定する。長いスパンで代表選びを行うことで、より安定した力を持つ選手が残るシステムになったのだ。
(写真:年度末で仕事が忙しくなる中、弓に励む部員たち)

 5名の弓道部員は、それぞれ「弓の安定」をはかるべく、毎日の練習に取り組んでいる。
「現状は、目に見えて変わった選手もいれば、改善しようと悩んでいる選手もいる。調子のいい選手と本調子ではない選手が分かれている感じです」
 石田亜希子監督は、こう弓道部の今を分析する。

 5月まで続く国体予選が終われば、6月には岐阜で全日本勤労者弓道選手権大会に臨む。昨年は橋本早苗、山内絵里加、原田喜美子の3選手でチームをつくり、準優勝をおさめた。もちろん、今回の目標は優勝しかない。

「これまでは優勝が目標と言っても、本気でできるとは思えなかった。でも、あの準優勝で手の届くところにあると実感しました」
 ある選手はそう明かす。これまでダイキ弓道部は勤労者大会、国体、実業団大会での3冠を目指してきた。ただ、近年は国体そのものに出場できない年もあり、部員からも「3冠」という言葉があまり聞かれなくなっていた。

 だが、今年は違う。石田監督もそう感じている。
「誰が試合に出るか悩むくらい、レベルが上がって競争が激しくなってほしいですね」
 指揮官の望みが本当になった時、ダイキ弓道部は本気で「3冠」を狙える位置にいるはずだ。

<ジュニアゴルフ、実戦の中で成長を>

 ダイキジュニアゴルフスクールは、昨年12月より江口武志新監督を迎えた。江口監督は大分を拠点にプロゴルファーの卵や、若手プロをレッスンしてきた実績を持つ。その指導経験から「練習場ではできていることが実際のコースではできない」ケースをたくさん見てきた。
(写真:専用の練習場を設けたスクールの活動も3年目に突入)

 ダイキ・大亀孝裕会長の依頼でスクールの指導を引き受けた際も、それは例外ではなかった。
「監督になって、すぐにゴルフコンペをしたんですが、練習で取り組んでいたことができていませんでした。試合はコースでやるのですから、そこで成績が残せるような練習をしなくてはいけません」
 江口監督は上級者を中心に土日や冬休みにコースでラウンドする機会を増やした。そこで見つかった課題を日々の練習に反映させるようにしたのだ。

 練習のための練習ではなく、試合のための練習――この成果は徐々に現れつつある。3月7日に新居浜カントリー倶楽部で行われた四国小学生ゴルフ選手権春季大会では男女1名ずつが上位に入り、全国大会への出場キップを手にしたのだ(先述のように震災のため大会は中止)。
「ショットはまだまだ不安定ですが、コースでスコアをまとめられるようになってきました」
 ジュニアの選手は飲み込みが早く、実戦を重ねれば重ねるほどに成長する。江口監督も手ごたえを感じている。

「ここに通っている選手は、みんな可能性がある。やることは山ほどありますが、1つ1つクリアすることが大事です」
 スクールでは、個々人の課題を紙に書き、一目で分かるようにボードに貼り付けている。基礎を着実にモノにし、ひとりでも多くのスクール生がラウンドに出てほしい。江口監督はそう願っている。

 そして夏の四国小中学生ゴルフ大会で小学生男女、中学生男女それぞれの部で全国大会の出場権を得るのが大きな目標だ。楽しみながらも結果を残す。新監督の目指す理想のスクール像に一歩ずつ近づきつつある。

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(石田洋之)
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