第327回「太陽」 ~森脇良太選手の現役引退~
2024年9月2日(月)、愛媛FCの公式サイトにて森脇良太選手の今季限りでの現役引退が発表された。
昨シーズン(2023シーズン)末頃の本人の言動から『進退の事を考えているのかな』と思えるところもあり、覚悟はしていたものの、いざ正式な発表に直面すると寂しさが込み上げてくる。
森脇良太選手は広島県福山市の出身。サンフレッチェ広島ユースでの活躍から、2005年にサンフレッチェ広島のトップチームに昇格し、プロ選手としての生活をスタートさせた。
2006年にはレンタル移籍で愛媛FCに入団。リーグ開幕戦からレギュラー選手として、愛媛FCトップチームを牽引してくれた。
当時、愛媛で成人(20歳)を迎えた森脇選手。とは言え、まだまだ「やんちゃ」でプレースタイルも粗削りな部分もあり、試合ではよく接触ファウルなどでイエローカードをもらっていた。
私が代表を務める愛媛FCサポーターズクラブ「ラランジャ トルシーダ」のメンバーには、森脇選手のファンもいて、個人応援横断幕を作り、毎試合スタジアムに掲出されている方がいた。その方は、森脇選手がイエローカードをもらうたび、次の試合前(横断幕設置時間)に、その横断幕に黄色い布(ハンカチ大のもの)を安全ピンで1枚ずつ取り付けていたことを思い出す。本人への戒めなのか、強めのジョークなのか分からないが、溜まっていく黄色い布を眺めながら「また増えたなぁ。」とサポーターメンバー皆で笑っていたことも懐かしく感じる。
その一方、大事な四国ダービーではゴールを決めてくれるなどの大活躍を見せ「ダービー男」とも呼ばれていた。また2007年にはジャイアントキリングを達成し、天皇杯ベスト8進出にも貢献してくれるなど、多くの愛媛サポーターから愛される存在でもある。
惜しまれつつ2008年、広島に復帰。その後、浦和レッズや京都サンガF.C.で活躍し、また日本代表にも選出されるなど、サッカー選手として大きな成長を遂げていた。
そんな中(2022年)、彼は愛媛FCへと戻って来てくれた。その頃愛媛FCは、成績不振や新型コロナウイルス感染症拡大の影響による地域経済の落ち込み等で苦しい状況下にあった。それでも古巣のクラブを救おうと愛媛FCへの移籍を決断してくれたのである。
そして、サッカー人生の中で得た経験や知識、特にメンタルのコントロール面を若い選手達へと伝え、自らもピッチ上にて、その熱き思いをプレーで表現し続け、J3優勝&J2復帰へと導いてくれたことは皆さんご承知のことだと思う。
11月3日(日)、2024シーズンのホームゲーム最終戦(第37節)の試合後には森脇良太選手の引退セレモニーが行われた。
多くの方々から労いを受ける中、涙を浮かべながら引退挨拶を行う森脇選手。挨拶の最後には「皆さん、I LOVE YOU!大好き―!」とコメント。この言葉に対してサポーターからは、お約束の大ブーイング(もちろん、サポーターからの愛情を込めたブーイングである)。
このブーイングに対し、森脇選手は「ブーイングも嬉しい。ファン・サポーターの皆さん、本当に愛しています。皆さん、これからも愛媛FCを宜しくお願いします! ありがとうございました!!」と挨拶を締め括った。
セレモニー後、ゴール裏席内の応援コアブロックまで挨拶に来てくれた森脇選手。「~今後、愛媛に残って仕事を続けたい。でも愛媛FCさんが雇ってくれるか分からないけど……」的なコメントで、サポーターたちを爆笑させていた。
その後、私も古くからの付き合いである森脇選手を労い、彼のコメントを受け「これからもヨロシク!」と伝え、抱擁を交わさせていただいた。
そして11月12日(火)、愛媛FCは森脇良太さんの2025シーズンポジティブエナジャイザー就任を発表した。ポジティブエナジャイザーとは、組織や職場にポジティブなエネルギーをもたらす存在。人々に元気や勇気を伝え、自らポジティブなエネルギーを生み出し、周囲に良い影響を与えることのようである。
具体的な活動内容は、まだ不明だが、とにかく愛媛FCから解雇されず、愛媛に残って地域を明るくしてくれるようなので、お別れとはならなくて本当に良かったなと感じている。
同日(11/12)の晩、愛媛FC2024活動報告会の席にてポジティブエナジャイザー就任直後の森脇さんにお会いすることができた。その際、今度は森脇さんの方から「これからも宜しくお願いします!」と挨拶していただき、互いに強い握手で絆を深め合った。
現役時代の所属チームにて、J1・J2・J3すべてのカテゴリーで優勝を経験し、またJリーガーとして国内全てのタイトルを獲得した「持ってる男」森脇良太さん。『将来、Jリーグチームの監督になりたい。』という夢も持っているようなので、愛媛FCにてスタッフ業をこなしつつ、指導者ライセンスの取得にも取り組むことになると思う。
できることなら、今度は監督という立場から、また愛媛FCを優勝へと導いてもらいたい。
「森脇良太さん、20年間の現役生活お疲れ様でした。寂しい気持ちは残りますが、引退という大きな決断を自分自身に下した勇気を称えたいと思います。新たな夢の実現への歩みと共に、今後も愛媛FCや愛媛県を照らす元気な太陽でいてください。これからも宜しくお願い致します!」
<松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール>
1967年5月14日、愛媛県松山市出身。愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。