いよいよ2011シーズンの開幕を迎えた愛媛FC。甘え心は通じない、Jリーグ参入6年目。まさに勝負の一年である。
 3月5日(土)、J2リーグ2011シーズンの開幕戦(第1節)となる愛媛FC対コンサドーレ札幌の一戦が、ホーム(ニンジニアスタジアム)にて行われた。
(写真:スピード感あふれる愛媛の攻撃!)
「シーズン前のトレーニングマッチなどから、攻撃力はアップしているように見える。期待の新戦力も活躍してくれるに違いない。だが、センターバックはどうなるのか? ディフェンスラインはうまく機能するのか?」などなど、期待と不安の感情が入り混じる中、キックオフの時刻が刻一刻と近づいてくる。
 
 試合前、今節でJ2リーグ通算100試合出場となるGK川北裕介選手を祝福する記念セレモニーが執り行われ、会場には一瞬、和やかなムードが漂う。しかし、その後、選手たちがピッチへと散らばり、臨戦態勢が整うと、スタジアム全体に独特の緊張感が張り詰め、サポーターのボルテージも一気に最高潮へと達する。
 
 時刻は午後2時を廻り、メインスタンドからバックスタンド方向へと風が吹き抜ける中、コンサドーレ札幌のキックオフで試合がスタートした。
 序盤、前線へのロングフィードなどを駆使して、積極的に敵陣内へとボールを進める愛媛FC。相手にボールを奪われ自陣に攻め込まれても、DF陣が落ち着いて対応し、カウンター攻撃への布石を打つ。
 
 前半12分、敵のフィードボールを最終ラインのDF池田昇平選手がカット。そこから自陣の右サイドで繋いだボールをMF赤井秀一選手がキープ。センターサークル付近に陣取るFW齋藤学選手へとパスを送る。ボールを受けた齋藤選手が敵陣へとドリブルで持ち込み、敵DFライン裏へと飛び出す構えをみせるFWジョジマール選手に向けてスルーパスを供給した。

 ワントラップを挟み、敵ペナルティアークへとボールを進めるジョジマール選手。素早くシュート体勢に入るが、敵DFと接触し、うまくシュートを放てなかった。
 それでも愛媛による流れるようなカウンター攻撃に対して、スタンドからは大きな拍手が送られていた。
 
 スピード感あふれる積極的な攻撃で、試合のリズムを掴んだ愛媛イレブン。早くも歓喜の瞬間が訪れる。
 前半16分、敵GKからのロングボールを拾い、自陣内でパスを繋ぐ愛媛FC。最終ラインのDF高杉亮太選手が、そのボールをキープ。左サイドへとシフトしつつ、敵陣内に向けてロングフィードを供給する。敵DFライン裏へと抜け出した齋藤選手が、このボールに追いつき、ドリブルでペナルティエリアまで持ち込む。シュートかと思わせるキックフェイントで、敵DFを引きつけつつ、後方からペナルティエリアへと走り込んできたフリーのジョジマール選手へとラストパスを出した。

 次の瞬間、ジョジマール選手が足元に来たパスをダイレクトに捉え、左足を素早く振り抜きシュート! ボールは、敵GKの伸ばした手の先をすり抜け、見事、ゴールイン! 大歓声が湧き起こるスタジアム! チームメイトと抱き合って喜びを爆発させるジョジマール選手!
「スウィーンギン! スウィンギン・エヒメ! フォーエバー〜!」
 サポーターたちによる歓喜の大合唱がスタジアムに響き渡る! 嬉しい愛媛FCの先制ゴールは、J1、J2通じて2011シーズンのJリーグファーストゴールでもあった。
 
 この得点で自信をつけ、後半に入っても良い雰囲気で試合を進める愛媛イレブン。
 後半4分、MF田森大己選手の自陣からのロングフィードが、敵ペナルティエリアでの混戦を呼び込む。そこからのルーズボールを拾ったジョジマール選手が、敵DFをかわしつつ、シュートを放つが、惜しくもゴールマウスを捉えることはできなかった。
 
 後半11分、相手のバックパスを奪った齋藤選手が、そのまま敵陣内の左サイドをドリブルで駆け上がる。敵陣中央へと走り込むジョジマール選手の前方へとパスを通す齋藤選手。ボールを受けたジョジマール選手が、敵DFを背負いつつ、赤井選手の上がりを待ち、パスを送る。ボールを足元に収めた赤井選手が右サイドからオーバーラップを仕掛けるDF関根永悟選手をおとりに使いながら、巧みに切り返し、敵DFを翻弄。シュートコースが開けたのを見計らって、左足を豪快に振り抜き、ミドルシュートを放った!

 ボールは、美しい放物線を描きながら、敵ゴールマウス左上隅に吸い込まれていった!
「素晴らしいゴール! ワールドクラスのビューティフル・ゴールだ!」
 再び大歓声が湧き起こり、歓喜に包まれていくスタジアム! 両手を広げ、小さくガッツポーズを作り、喜びを表現する赤井選手! チームメイトが駆け寄り、手荒な祝福を浴びせる。
 
 その後、札幌もリスクを負って反撃を試みるが、守護神・川北選手を中心にDF陣も良く踏ん張り、相手の得点を許さない。攻守が目まぐるしく入れ替わる展開は、試合終盤まで続き、ついにはタイムアップ。結局、最終スコア2−0で愛媛FCが見事、シーズン開幕戦にて勝利を収めた。

 今節、明確な攻撃意思から先制ゴールと追加点を生み出したことは評価できるし、敵の攻撃を完封したことも、新しいセンターバックを含めたDF陣に大きな自信をもたらしてくれたと思う。また、新入団選手の齋藤選手は、先制点のアシストや攻撃の起点をつくり出すなど、素晴らしい活躍ぶりだったと感じる。次は彼自身のゴールにも期待したい。
 
 2011シーズン、見事なスタートを切ることができた愛媛FC。活気あふれるチームの雰囲気はそのままに、次の試合でも自前のポテンシャルを存分に発揮してもらいたい。


松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール
 1967年5月14日生まれ、愛媛県松山市出身。
 愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。
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