第805回 復活する「牛骨バット」の“旨味”
「牛骨」と聞いて、ラーメンを連想した向きも少なくなかったのではないか。
<この原稿は2024年12月30日-1月6日合併号『週刊大衆』に掲載されました>
ラーメンのスープといえば、鶏ガラや豚骨、煮干しや鰹節、干し椎茸などが一般的だが、旨味が凝縮された「牛骨」も根強い人気を誇る。インターネットで検索すれば、お薦めの店がいくつも出てくる。
もっとも「牛骨」といってもラーメンの話ではない。野球のバットに関する話である。
NPBは来シーズンから、「牛骨」によるバットの表面加工を解禁する方針を打ち出した。これにより反発係数が増し、ホームランが増加することが期待されている。
バットを「牛骨」でしごくのは木目を詰めるためだ。「牛骨」がなければビール瓶でもいい。昔の選手はよくやっていた。
これとは別に「圧縮バット」というのもあった。王貞治が使用していたことで知られるが、「ボールが飛び過ぎる」という理由で、1981年のシーズンから使用禁止になった。これに伴い、「牛骨バット」も不認可となったのだ。
しかし、近年は“投高打低”が著しい。今季は両リーグ合わせて975本と、ホームラン数は12年ぶりに1000本の大台を割った。
投手のレベルアップに加え、長打を売り物にする外国人選手の減少、そして“飛ばないボール”の使用が、ホームラン減少につながったと言われている。
12球団で最も少なかった広島にいたっては52本。ドジャース大谷翔平がひとりでマークした54本にも及ばなかった。
「NPB日本人最多本塁打(56本)の記録を持つ東京ヤクルトの村上宗隆も、日本で野球をやるのは来季限り。幸い、どの球団も観客動員数は伸びているが、いつまで好況が続くか、という危機感がある。今年は大谷のホームランのニュースばかりで、NPBの話題は、ほとんどメディアに取り上げられませんでしたから……」(在京球団幹部)
復活する「牛骨バット」は、日本球界にどんな“旨味”をもたらすのか。