ここ数年、押し出すような投げ方になっていたのは、無意識のうちにヒジをかばっていたせいかもしれない。
レッドソックスの松坂大輔が右ヒジに正常な腱を移植する、いわゆる「トミー・ジョン手術」を受けることになった。
これは1974年、ドジャースのサウスポー、トミー・ジョンが左ヒジの腱を断裂した時に、チームドクターだったフランク・ジョーブ博士が初めて行なったことから名付けられた。
日本人では“マサカリ投法”で知られる村田兆治が初めてこの手術を受け、術後には“サンデー兆治”として見事に復活をとげた。
松坂と村田に共通するのは、ともに投げ込むことでフォームをつくっていく力投派。とりわけ松坂は高校時代から大舞台で活躍しており、ヒジ痛の最大の原因は“勤続疲労”だったと見られている。
「アメリカの硬いマウンドもヒジを痛める原因となったのではないか」
こう見るのは松坂が師と仰ぐ西武時代の監督・東尾修である。
「つまりマウンドが硬くて、うまく体の軸が回転できないからステップの幅を狭くした。重心が高くなり、上半身もそれに合わせて投げるしかない。それが原因で日本にいる時よりヒジが下がり、全体的にフォームが変わってしまっていた……」
春先に行なわれた2度のWBC出場もヒジには大きな負担を強いたかもしれない。09年の第2回大会後のレギュラーシーズンは股関節痛などが原因で全く振るわず、わずか4勝(6敗)に終わってしまった。
果たして手術後、松坂は復活できるのか。
答えは「イエス」だと思う。腱の移植手術自体、それほど難しくはなく、術後トミー・ジョンは164勝、村田は59勝をあげている。
復帰には約1年かかる見通しだが、来年は契約最終年。しかも30歳という年齢を考えれば、早いうちにやっておく方が正解だろう。
<この原稿は2011年6月27日号『週刊大衆』に掲載されたものです>
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