後期が開幕して1カ月が経とうとしています。27日現在、新潟アルビレックスBCは5勝4敗1分で、信濃グランセローズと並んで上信越地区のトップとなっています。とはいえ、3位の群馬ダイヤモンドペガサスとのゲーム差はわずか0.5。3チームが横一線で競り合っている状態です。ここからどのチームが抜け出すのか。夏本番となるこれからが正念場です。
 後期に入ってからの新潟は前期と比べると打線が活発で、試合の内容自体もよくなってきています。前期の前半は昨季同様、打線がふるわず、得点力不足が浮き彫りとなっていました。それでも試合を重ねるたびに橋上秀樹監督の考えが徐々にチームに浸透してきたことが何より大きかったと思います。

 開幕当初から橋上監督に口を酸っぱくして言われてきたのは、「考えた末の結果なら、割り切ろう」というものでした。つまり打席に入る際、自分なりにどういうふうに攻めていこうかプランを考え、その結果が凡打や三振であったのなら、気にするなということです。とはいえ、私も含めて選手はなかなか割り切れず、結果をひきずってしまっていました。

 結局、前期は4試合を残して群馬に早々と優勝を決められてしまい、その後の4試合はいわゆる消化試合となったのです。しかし、その4試合がチームにとっては非常に大事なモノとなりました。結果を気にせずに戦えたことで、選手たちが割り切れるようになったのです。それが後期、打線の好調につながっているのです。

 私自身も開幕時には脇腹を痛めていたこともあって思うようなスイングができず、ここという勝負どころでことごとく凡退していたのです。しかし、今はいろいろとアドバイスをいただき、どういうふうに考えて攻めていけばいいのか、打席での心構えやプランニングについて徐々にわかってきました。加えて、どんな結果でも割り切れるようになったことが打点(27)にもつながっているのだと思います。

 また、新人の福岡良州(流通経済大学付属柏高−流通経済大)がクリーンアップの一角を担っていることも大きいですね。もともと勝負強さがあるバッターの福岡は、大きいのも小さいのも打てる長打力のある巧打者。その彼が前後にいることで、私自身も「自分がダメでもアイツがいる」と気持ちが楽になりますし、逆に相手ピッチャーには「ランナーを出してはいけない」とプレッシャーを感じさせることができます。最近は少し調子を落としてはいるものの、それでも打てる雰囲気をもっている打者ですから、ピッチャーには十分に怖い存在。そういう彼がいてくれるのは、私にとっても非常に心強いのです。

 そしてもう一人のクリーンアップ、主に3番を任せられているのが、チーム創設時からのメンバーである稲葉大樹(安田学園高−城西大−横浜ベイブルース)です。今季、彼には大きな変化が生まれています。昨季までの彼は、「このフォームでうまくいっているから、それ以上は求めなくてもいい」というようなところがあり、新しいことに挑戦することを怖れている節がありました。しかし、今季の彼はアドバイスを素直に聞き入れ、いろいろなことにチャレンジしています。だからでしょう、今季の稲葉はこれまでで一番、野球を楽しんでいるように見えるのです。

 私が最も成長を感じているのが佑紀(日本文理高−平成国際大)です。現在、打率は3割1厘と好調で、1番打者として最も重要な出塁率もしっかりと残しています。彼は昨季まで甘い球を見逃したり、一発で仕留める技術がないためにファウルにしてしまい、簡単にカウントを整えられ、その結果、最後は手を出すことができずに見逃し三振で終わるということがしばしば見受けられたのです。しかし、今季の佑紀は違います。初球から積極的に振っていくことができています。それも、やはり“割り切る”ことができているからでしょう。

 さて、先述したように現在、上信越地区は3チームがしのぎを削っている状態で、今後も接戦が続くことが予想されます。新潟がこのせめぎ合いから抜け出すためには、その接戦をモノにできるかどうか。実際、後期に入ってからの負け試合はすべて2点差以内なのです。これからはこうした接戦にも勝つことができるように、チーム一丸となって戦っていきます。ぜひ、球場に足を運んで、新潟の選手を応援してください!


青木智史(あおき・ともし)プロフィール>:新潟アルビレックスBCプレーイングコーチ
1979年9月10日、神奈川県出身。98年、ドラフト6位で広島に入団したが、2000年オフに自由契約の身となる。その後渡米し、トライアウトを受け続けた結果、03年にシアトル・マリナーズ1Aと契約。しかし、同年に解雇。翌年には豪州のセミプロチームに所属し、05年には豪州選手主体のウェルネス魚沼に唯一の日本人選手として入団した。同年夏にはセガサミーに入社。08年、新潟アルビレックスBCに入団し、09年よりプレーイングコーチに就任。08年に本塁打王に輝くと、09年には本塁打、打点の2冠を獲得した。187センチ、100キロ。右投右打。
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