最終予選突破。森保監督が3バックにこだわる理由

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 森保一監督は出場を決めた来年の北中米ワールドカップでも“攻撃的3バックを採用するのかどうか--。

 

 主に左サイドに三笘薫、前田大然、中村敬斗を、右サイドに堂安律、伊東純也を配備する布陣はあくまで対アジア用と見る向きもある。ただ今回、埼玉スタジアム2連戦となったバーレーン戦(20日)、サウジアラビア戦(25日)で終始3バックにこだわったことを考えると、この形をより成熟させていきたいとの意図がうかがえる。

 

 バーレーン戦で言えば、相手は日本の3バック対策として全体をコンパクトにしつつ、4バックを守備時に可変させてそれぞれを1対1で噛み合わせていく策で対抗してきた。欧州から長距離移動で帰国してわずかな日数で試合に臨まなければならないコンディションの問題はいつものこととはいえ、早めに来日してしっかりと準備してきたバーレーン代表の戦略に苦しめられた。それでも日本は焦ることなくじっくり構え、後半に入って鎌田大地、久保建英のゴールで押し切った。

 

 バーレーン戦後の記者会見で、システム変更の可能性を問われた指揮官はこのように応じている。

 

「(システム変更を)考えてはいました。いろんなパターンの練習ができる状況ではなかったので、今のシステムの形のなかで耐えながら、自分たちのペースに持っていくことが最善策かなと思ってシステム変更はしませんでした。試合の途中に自分でも考えていましたし、コーチとも少し話したりしました」

 

 バーレーンの戦術があれだけハマっていたのだから、当然その選択肢はあったということ。だが「耐えながら」活路を見いだしていくことに懸けたわけだ。

 

 誰の目から見ても、バーレーン戦のMVPは久保だった。GKの動きを見ながらニアを射抜いたゴールシーンは見事。シャドーというポジションを自分なりにつかんだうえで躍動があったように感じる。

 

 これまでの久保はウイングバックが堂安の場合、ポジションチェンジを繰り返すことが多かった。だが今回はそこに固執せず、より流動的にポジションを取っていた。指揮官がこのポジションで継続的に起用してきたからこそ、段々とアジャストしてきた感がある。

 

 敢えて動かない――。

 

「耐えながら」という表現は、相手に対してのみならず、チームづくりにおいても同じではないだろうか。森保監督は今回の最終予選を通じて3バックにこだわってきた。そうなれば相手が対策を取ってくるのは当然。バーレーンの組織力を個の力で打開しつつも、それもまた組織の力というのが指揮官の思いとしてはあるのではないだろうか。

 

「きょうの(バーレーン戦の)勝利もそうですけど、これまでの戦いのなかでもチーム一丸となってスタメン、サブ、メンバー外の選手も含めて、試合に挑んできました。スタメンがまず出し切る戦い方をしつつ、サブの選手がつなげて試合を勝っていく。チームでバトンを渡しながらつなげて勝つというところを、きょうも体現してくれたかなと思っています。

 スタメンがレギュラーという捉え方をされるかもしれないですが、我々の考え方としては全員レギュラーだと。スタートで出るのか、サブで出るのかというところで力を持った選手たちがその役割の中で、チームでつなぎ勝つというところを、選手たちは表現してくれている。それがきょうの結果につながったかなと思います」

 

 出場を決めた後のサウジアラビア戦においても指揮官は〝攻撃的3バック〟を崩さなかった。最大限に勝利を目指しつつ前田大然の1トップ、菅原由勢の右ウイングバック、高井幸大の右ストッパーなどをテストしている。守備に徹する相手からゴールを奪えなかった反省点は残る。だがこれも敢えて動かなかったとするならば、今後を見据えての判断だとは感じる。本大会で“攻撃的3バック”を採用するかどうかは分からないとしても、より成熟させておけばオプションの幅が広がることは間違いない。

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