第330回 「喜色」~愛媛FCレディース、2025シーズンがスタート~

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 「今年も愛媛県総合運動公園に桜が咲いた」

 

 

 愛媛FCレディースが参戦する「2025プレナスなでしこリーグ1部」が、3月16日(日)に開幕した。

 

 今季、9名の新加入選手を迎え、チーム内の競争が活発化している。

新たなシーズンが幕を開け、どのような試合を魅せてくれるのか楽しみである。

 

 開幕戦の相手は、昨シーズンの準優勝チームであるニッパツ横浜FCシーガルズだった。強敵相手だが、愛媛は臆することなく立ち向かい、高いボール保持率で、幾度となく得点チャンスを創り出した。しかし、ゴールには至らず、スコアレスドローに終わった。

 

 この試合、目を惹いたのは今季、下部組織からトップ昇格を果たしたGK山内れな選手。初めての「なでしこリーグ1部」での公式戦だったのだが、終始落ち着いてプレーしていた。ナイスセーブを連発し、随所でチームを救ってくれた。またキック力もあり、プレースキックのコントロールも素晴らしかった。新守護神として今後も活躍に期待したい。

 

 第2節の日体大SMG横浜との対戦は3月23日(日)にアウェーにて行われた。

 

 前半23分、相手ゴール前での間接フリーキックからDF筬島彩佳選手がゴールを決め、愛媛が先制点した。チームは筬島キャプテンの得点で波に乗り、試合を優位に進めたが、追加点が取れないまま試合終盤に突入。徐々に自陣へと押し込まれる展開になると、後半36分に相手MFにミドルシュートを決められ同点に追い着かれた。その後、守備に時間を取られる中、反撃も単発に終わり試合終了。最終スコア「1-1」で、この試合も引き分けに終わった。2戦続けての悔しい引き分けではあったが、アウェーで勝ち点1を積み上げたこと、今季のチーム初ゴールをキャプテンが決めたことは、プラスとして捉えたい。

 

 スペランツァ大阪との対戦となる第3節は、3月29日(土)に行われた。会場は八分咲きの桜に囲まれた愛媛県総合運動公園球技場。

 

 前半立ち上がり、大阪はカウンター攻撃やロングボールを駆使し、愛媛陣内に攻め込んで来た。それでも、GK山内選手が好セーブを見せ、チームを落ち着かせた。

 

 その後、愛媛は自陣でボールをキープしつつ、攻撃の組み立てを図った。巧みなパスワークで敵陣内へとボールを進め、セットプレーなどから得点機を創り出す。

 

 前半30分には敵陣左サイドからパスを繋ぎ、MF黒岩沙羽選手がシュートを放ったものの、GKに塞がれた。その他、あと少しでゴールという惜しい場面が何度も見受けられた。

 

 後半に入り、愛媛は攻勢を更に強め、試合を優位に進めた。それでもスコアレスのまま時計の針だけが進んだ。このまま、また引き分けかと思われたが後半42分、敵陣左サイドのMF安齋結花選手が粘り、FW松岡優空選手へとパスを繋ぐ。松岡選手がゴール前に走り込むFW児野楓香選手へラストパスを供給。ボールを受けた児野選手がDFを背負いつつ放ったシュートを、相手選手がクリアミス。ボールはゴールラインを割り、オウンゴール! スタンドに大歓声が沸き起こる! 児野選手はチームメイトと抱き合い、ベンチメンバーともハイタッチを交わし喜びを分かち合った。

 

「スウィーギン スウィンギン愛媛 フォーエヴァー!~」サポーター達による歓喜の大合唱が鳴り止まない。

 

 途中出場の3選手がボールを繋ぎ、誘発した素晴らしいオウンゴールだった。

 

 その後、追加点を狙いに行く愛媛だったが、時間は過ぎ去りタイムアップ。最終スコア「1-0」で愛媛FCレディースが嬉しい今季初勝利を収めた。

 

 この試合、愛媛の選手たちのボールへの執着心が凄かった。相手にボールを奪われても喰らいつき、すぐにボールを取り返す執念が感じられるプレーが随所で見られ、感動を覚える程だった。このことが勝利へと繋がったひとつの要因だっただろう。

 

 試合後、選手たちや会場のファン・サポーターが一緒に、今季初となる勝利のラインダンスを踊り、たくさんの笑顔の中、今節を締め括った。

 

「今年も桜とともに笑顔が咲いた」

 

 冬の厳しい寒さを耐え凌ぎ、力を体に溜め込み、新しい季節に美しい花を咲かせる桜の木々。辛い出来事や苦しいこと、思うようにいかないことも多々起こりうる世の中で、耐え忍んだ先には笑顔の花を咲かせたい。

 

 

<松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール>

1967年5月14日、愛媛県松山市出身。愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。

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