後期も残すところあとわずかとなりました。14日現在、福井ミラクルエレファンツは15勝12敗2分で北陸地区の首位です。とはいえ、2位の石川ミリオンスターズとのゲーム差はわずか1.0。残り7試合(石川戦3試合、富山戦4試合)が正念場となります。
 前期は後半で投打がかみ合わなくなり、結局、修正ができないまま地区最下位に終わりました。そして、前期の最終戦からわずか2日後にはもう後期が始まってしまったのです。しかし、返ってそれがよかったのかもしれません。考える間もなく、すぐに気持ちを切り替えざるをえなかったのでしょう。後期は連敗をしても、そのままズルズルいくことはありません。逆に連勝をしてその分をすぐに取り返しています。簡単に勝てる試合などは一つもないものの、なんとか持ちこたえてくれています。

 それは数字にもはっきりと表れています。チーム成績を見ると、打率2割5分2厘はリーグ5位、防御率3.94にいたってはリーグ最下位です。それでも首位を守ることができているのは、ピンチを凌ぎ、なんとか少ないチャンスをモノにしているからなのです。

 例えば、10日の富山サンダーバーズ戦。この日先発した川端元晴(鯖江高−福井工大)は富山打線に10安打を打たれ、毎回のようにランナーを背負いました。それでもなんとか9回まで2失点に抑えたのです。すると、6回まで1点に抑えられていた福井の打線が7、8回の終盤に集中打を見せて逆転。結局12安打の猛攻で8−2と快勝したのです。これはひとえに川端が終盤まで粘りの投球で最少失点に抑えたからに他なりません。

 そして、打線はというと、ヒットを量産することは望めませんし、盗塁数も少ない。それではどうやって得点を取っていくかというと、ランナーが出たら犠打で得点圏に進め、そこでのワンチャンスにかけていく。リーグでダントツトップの109個の犠打はまさに攻撃の生命線といっていいでしょう。

 そして、そのチャンスを必ずモノしなければならないのが、4番に座る裕太(大阪桐蔭高)です。彼にだけは、たとえランナーが出たとしてもバントのサインは出しません。それは主砲として打つべき打者だからです。確かに、ここという時の1本は出ます。しかし、それで満足していては彼が目指すプロの世界に行くことはできません。裕太の打球は非常に鋭く、プロでも十分に通用します。そこに2本、3本と続いて出るような高い確率を上乗せすることができれば、自ずとプロのスカウトの目も違ってくることでしょう。現在、彼は打率2割6分6厘。やはり3割は欲しいですね。

 さて、前述したように後期も7試合を残すのみとなりました。福井が後期優勝するためには今週16日の石川戦が最大のヤマ場となると考えています。この試合を終えると、次の直接対決は24、25日。これがシーズン最終戦となるわけですが、それまでお互いに4試合あります。どれだけその4試合で貯金を増やし、24、25日の連戦に臨むことができるか。そのためにはやはり、16日の試合で勢いをつけることができるかがカギとなることでしょう。優勝を目指して全力で戦いますので、ぜひ注目してください。

野田征稔(のだ・ゆきとし)プロフィール>:福井ミラクルエレファンツ監督
1941年12月5日、長崎県出身。PL学園高校、PL教団を経て1963年秋に阪神に入団。70年には88試合に出場し頭角を表し始めると、翌年よりセカンドのレギュラーとして定着。72年にはリーグ最多となる21個の犠打をマークした、75年に現役を引退。その後は阪神のマネジャー、二軍コーチ、フロント、二軍監督、スカウトを務めた。2008年、福井ミラクルエレファンツの野手コーチに就任。2010年より監督としてチームの指揮を執っている。
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