『ROUND AFTER ROUND.10』“独一无二”の世界観へのこだわり ~D.LEAGUE~

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 日本発のプロダンスリーグ「D.LEAGUE」のBenefitone MONOLIZ(ベネフィット・ワン モノリス)は、ダンスジャンル「ヴォーグ」をベースに<唯一無二の世界観を武器>としている。ピンヒールを履いてのパフォーマンスを披露することもあり、妖艶な雰囲気はD.LEAGUEの中でも異彩を放つ。チーム名は、巨大な一枚岩という意味の「monolith」に由来。今季(24-25シーズン)は開幕戦を白星で飾ったものの、そこから2勝目が遠かった。今回は9ラウンドぶりの勝利となったROUND.10を、リーダーのYOICHIROと、加入3季目のHONAMIに振り返ってもらった。

 

 3月13日に東京ガーデンシアターで行われたROUND.10の2nd MACTHにMONOLIZは登場した。対戦相手はValuence INFINITIES(バリュエンス インフィニティーズ)。ROUND.9終了時点の順位はINFINITIESが3位に対し、MONOLIZが13位。その勢いに差はあったものの、過去の対戦成績では2戦全勝と相性が良かった。

 

 先攻はINFINITIES。ダンススキルとグルーヴ感が売りでストリート色の濃い、このチームは、作品ごとに世界観、ストーリーのあるMONOLIZとは対極なスタイルと言っていいかもしれない。この日のショーテーマは「Stay Curious」。好奇心を持つ続けるINFINITIESはブレイキン、ハウス、ヒップホップというチームの三本柱を惜しげもなく披露した。

 

 対する後攻MONOLIZのショーテーマは「独一无二 岩舞踊団」だ。“独一无二”は中国語で、意味は唯一無二。岩舞踊団はMONOLIZを表している。中国古典舞踊とヴォーグの掛け算に挑戦した。三絃(中国三味線)の音色に合わせ、MIUとRiNnAが中国雑技団のように台座にエビ反り、両足で2本の扇子を持つ。

 

 ピンスポットがYOICHIROに当たり、ソロパートが始まる。そこにHONAMI、komomo、Cheriが加わり、重低音のビートに合わせヒットのような動きで見事な音ハメ。ここの振り付けはYOICHIROによれば「踊った4人で考えてつくったパート」だという。

「いつものMONOLIZではあまりしないようなテイスト。見てほしかったところのひとつです」

 そして2つ目のこだわりポイントが、カンフーを思わせる振り付けで闘争心を表現したところだ。「ヴォーグにはオールドウェイというジャンルがあるんですが、それにカンフーっぽい動きを混ぜて、中国舞踊に結びつけられるような感じにしました」とYOICHIRO。曲の「ハッ!」という歌詞に合わせ、拳を突き出した。

 

 そしてエースパフォーマンスに起用されたkomomoは、躍動感溢れる舞を披露。「こもっち(komomo)とアームスコントロールの踊りを一緒にすることが多く、私も勉強中ではあるんですが、“この動きを入れたら面白いんじゃない”“この方が、こもっちの個性が出るんじゃない”と、ちょっと口を出したりしていました」とHONAMI。初のエースパフォーマンスを任された17歳を影でサポートした。リーダーのYOICHIROは背中を押した。

「僕は『かませ』と。『殻を破る時』だとは伝えました」

 

 ショーはフィナーレに向かっていく。ROUND.10では小道具使いもキラリと光った。冒頭に扇子に続き、両脇のHikari OricciとHONAMIが黄金色のフラッグを振り回す。これはベリーダンスで使用されるポイベールというもので、ROUND.1でも使用した小道具だ。チームでは小道具を扱うことが多いHONAMIは「ポイは舞台映えするので、ステージを大きく見せたい時に使います。ポイを回すのは若干テクニックが必要で、メンバーの中で私がうまく操れる方だったので、開幕戦同様に担当しました」と言う。後方の台座にMIUが立ち、3人でポイベールを振るう姿は壮観だった。最後はHikari OricciとHONAMIの2人がポイベールを宙にフワリ舞わせて幕を閉じた。

 

 ジャッジの結果、「テクニック」項目は相手に譲ったものの、残り5項目(「オーディエンス」「コレオグラフィー」「ステージング」「シンクロパフォーマンス」「エースパフォーマンス」)を取り、5対1でINFINITIESを破った。MONOLIZは続くROUND.11でも勝ち、今季初の連勝。順位を12位に上げている。

 

 YOICHIROは語る。

「もちろん結果だけが作品の良し悪しではないと思っているのですが、どうしてもラウンドで負けると自分たちがつくったものが世の中に認められなかったような気持ちになってしまう。それが続くと、メンバーの中でも、自信が削られ、チームの雰囲気の悪化などにも繋がりかねない。だからROUND.10の勝利は、みんなの心の中に再び火を灯したような気がします」

 

 ROUND.10のテーマ通り、唯一無二であることがMONOLIZのアイデンティティーとも言える。

「主軸となるジャンルのヴォーグとヒールを押し出してはいるんですけど、ジャズやワックなど意外と幅が広いんです。作品のつくり方を含め、ひとつひとつの作品で全く違う。常に新しいこと、新しいジャンル、新しい見せ方にすごくこだわっている。MONOLIZは自分たちらしさを軸に置きながら、新しいチャレンジをし続けることに誇り、こだわりを持っているチームだと思います」(YOICHIRO)

「D.LEAGUE全体の中でも、MONOLIZのような世界観で作品をできるチームは私たちしかいないと思っている。それを楽しみに観に来てくださっているファンの方がいるから、D.LEAGUEでの勝ち方は取り入れつつも、MONOLIZらしさは消したくない。自分たちらしさを残しながらも勝てる方法を探っていきたいと思っています」(HONAMI)

 

 自分たちらしさを貫く戦い。ROUND.10で魅せたファイティングポーズは、その宣戦布告のようにも映った。

 

>>ROUND.10のショーケース

 

(文・2ショット写真/杉浦泰介、その他の写真/©D.LEAGUE24-25)

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