Sフライ級・井岡一翔、ダウン奪うもリベンジならず 〜ボクシング世界戦〜

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 11日、ボクシングのWBA世界スーパーフライ級タイトルマッチが東京・大田区総合体育館で行われ、元WBA同級王者の井岡一翔(志成)が現王者フェルナンド・マルティネス(アルゼンチン)に判定で敗れた。井岡は昨年7月7日の統一戦(マルティネスは後にIBF王座を返上)以来の再戦だったが、リベンジを果たせなかった。

 

 10カ月ぶりのダイレクトリマッチは、井岡が再びマルティネスの軍門に下るかたちとなった。
 
 昨年の七夕以来の再戦は当初、大晦日に実施される予定だった。しかしマルティネスがインフルエンザに感染し、キャンセル。仕切り直しの一戦は年を越し、5月の第2日曜日、母の日に行われた。
 
 過去の世界戦再戦は3戦全勝。井岡はリマッチに強いとされていた。それは彼の修正能力に加え、ボクサーIQの高さ所以か。ガンガン前に出てプレスを掛けていた前回とは違い、距離を取る慎重な立ち上がりに映った。
 
 ジャブで刺しつつ、ボディやフックで叩く。しかしマルティネスは得意の接近戦で回転の速いパンチを繰り出してくる。どちらが取ったと言えないラウンドはあったものの、井岡の顔を跳ね上げられるような場面もあり、劣勢もあり得る展開となった。
 
 それでも井岡は我慢。マルティネスの戦闘力を削るようなボクシングを続けた。ラウンドによってはマルティネスの足が止まる時もあったが、不用意に飛び込めば、強打の暴風雨にさらされかねない。
「 疲れているし、休んでいるのは分かるんですが、彼と向き合って目を見ているとカウンターを狙っているところで、その駆け引きの中での休み方。ディフェンスだけをしてる時は、ディフェンスをしやすい。来るパンチを待ってるだけなんで。その時に僕もミスブローしたくないという気持ちがあった」
 
 試合が動いたのは10ラウンド。井岡の左フックがマルティネスの顔面をヒットすると右、左のワンツーでダウンを奪った。無敗の王者が揺らぎかけた瞬間だったが、「倒したい気持ちが先行し、(パンチが)単発になった」と井岡は仕留め切れない。いや、マルティネスがそれを許してくれなかったと言ってもいい。ラウンド終盤に反撃に転じてきたこともあり、流れを完全には掴み切れぬままゴングを聞いた。
 
 11、12 ラウンドは打ち合いに持っていったが、2度目のダウン、KOシーンは訪れなかった。両陣営がガッツポーズでアピールした後、ジャッジの判定は0対3で王者を支持。リングアナからは「New」のコールは聞かれず、「Stiil」、つまり王座は動かなかった。ジャッジペーパーを見ると、1人のジャッジは1〜9までフルマークでマルティネスを支持。トータルでも7点差を付けたが、それほどの差はなかったかに思えた。
 
 試合後、井岡は判定を聞く前の心境をこう振り返った。
「7月に戦った時もそうだったんですけど、1ラウンド1ラウンド、全身全霊で戦うような感じだった。負けているという感じは別になかったですけど、自分もかなり熱くなっていたので、客観的に見れていない。冷静さも中にはあるんですが、終わって、あっという間の12ラウンド。前回も今回も“勝ってたらいいな”という気持ちでしたね」
 
 リングを降りた後、リングサイドを一周し、関係者に挨拶していた。進退を決めた上での行動かと思ったが、井岡は「年齢も36になって、“もう引退かな”というふうな気持ちは別にない。『もうこれで引退します』と、皆さんの前で言うような感情ではないですね」と話すにとどめた。「別に限界は感じていない」とも。彼が花道を去る直前、会場からは「辞めるなよー」というファンの声があった。「一番は自分がどう生きたいか」と井岡。4階級制覇した偉大なボクサーの1人、今後の動向に注目だ。
 
 一方、ベルトを守ったマルティネスは7月に行われる予定のWBC王者のジェシー・ロドリゲス(アメリカ)とWBO王者のブメレレ・カフ(南アフリカ)の統一戦の勝者と対戦を希望する。「全部のタイトルが欲しい」と抱負を語った。
 
(文・写真/杉浦泰介)
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