感無量です。年間王者をかけたリーグチャンピオンシップ、徳島は3勝1敗で初優勝を収めることができました。抑えるべき投手が抑え、打つべき打者が打つ。それぞれが役割を果たした上でつかんだ全員の勝利だと感じています。
 後期はあと1勝という試合を落とし、香川に優勝をさらわれました。ただ、チームの中にショックはなかったと言っていいでしょう。むしろ年間を通じて大きな連敗がなく、前後期ともに優勝争いを演じたことはチームにとって自信になりました。
「チャンピオンシップはみんなでつかんだチャンス。全員で仕切り直して頑張ろう」
 ミーティングでそんな話をすると、選手全員から「初優勝を何としてもやってやる」という意気込みが伝わってきましたね。

 第1戦はその気持ちが空回りしたのか、シーズン中から苦手にしていた香川の先発・酒井大介を攻略できず、黒星スタートとなりました。それでも「やられた」という雰囲気はあまりなかったように思います。
「0−5だろうが、0−10だろうが負けはひとつ。切り替えてやろう」
 僕も試合後にこんな話をしました。「初戦を落としても、自分たちの野球をやれば大丈夫」という感覚は全員が持っていたのではないでしょうか。

 そして第2戦。ここで流れを一気につかみました。エースで最多勝(15勝)をあげた大川学史が6回2失点で試合をつくると、打線は4番・大谷龍次のタイムリーなどで4回に一挙5点のビッグイニング。第3戦以降はホームゲームでしたから、1勝1敗のタイに持ち込んだことが、徳島にはかなり有利に働いたのは間違いありません。

 今回の優勝は全員の勝利ではありますが、あえて1人MVPをあげるとすれば、4番の大谷でしょう。このチームで指揮を執ると決めてから、僕は主軸の確立をひとつのテーマにしていました。大谷は三振は多かったものの、他の選手にはないボールを飛ばす力があります。最初から「オマエは4番で行くぞ」と伝えていただけに、その期待に1年間応えてくれたのは大きかったです。

 タイトルこそ獲れなかったものの、本塁打(11本)も1本差、打点(53点)も1点差。昨季までは追い込まれると、ワンバウンドでも振るほどだった脆さがなくなりました。軸が安定し、ボールを見極めて打てるようになりましたね。彼は一度、千葉ロッテを戦力外になった身。この打撃をさらに伸ばしていけば、再びNPBのユニホームを着るチャンスも出てくるでしょう。

 うれしい優勝とはいえ、まだ我々の戦いは終わったわけではありません。チャンピオンシップで感無量の気持ちで胴上げされながら、次に頭に浮かんだのはBCリーグ王者とのグランドチャンピオンシップのことです。アイランドリーグ勢はここまで毎年優勝していますから、その記録を止めてはいけないプレッシャーがあります。

 BCリーグも5年目を迎え、どのチームが勝ちあがってきても完成度は高いはずです。初めての対戦で情報もさほどありませんから、昨季まで信濃にいた島田直也コーチに頼る面が大きいでしょう。いずれにしても投打ともに自分たちの野球ができるかどうかがポイントになるでしょう。チャンピオンシップ同様、全員で戦います。ここまで徳島の皆さんには熱い応援をいただき、ありがとうございました。グランドチャンピオンシップも引き続き、球場での声援をよろしくお願いします。


斉藤浩行(さいとう・ひろゆき)プロフィール>: 徳島インディゴソックス監督
1960年5月10日、栃木県出身。宇都宮商から東京ガスを経て、82年にドラフト2位で広島入り。パワーを武器にポスト山本浩二として期待を集める。目のケガもあって1軍ではなかなか活躍できなかったが、2軍では3度の本塁打王を獲得。ファーム通算161本塁打は最多記録として残っている。89年に中日、91年に日本ハムへと移籍し、92年限りで引退。06年からは愛媛のコーチを6年間に渡って務めた。11年より徳島の監督に就任。現役時代の通算成績は228試合、打率.196、16本塁打、41打点。
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