監督就任2年目の今季は「何が何でも優勝したい!」という強い思いを抱いて、1年間、コーチや選手とともに戦ってきました。しかし、前後期ともに上信越地区2位という結果に終わりました。特に後期は初優勝にあと一歩というところまで迫っていただけに、本当に悔しい思いをしました。その分、「来季こそは」という思いでいっぱいです。
 今季はリリーフ陣が安定しなかっただけに、せっかく先発投手が頑張って抑えても、継投の失敗が多くありました。加えて守備でのミス。ほとんどの敗因がこの2つだったと思います。まずはこの点を、来季は改善していかなければいけません。

 さて、前述したように後期は優勝がもうすぐそこまで来ていました。9月には引き分けをはさんで6連勝をし、残り3ゲームを残したところで優勝マジック2としていたのです。おそらく大半の人が信濃の優勝は間違いなしと思っていたことでしょう。しかし、チームが全てうまくいっていたかというと、実はそうではなかったのです。6連勝をしていても、そのほとんどが序盤にリードを奪われていました。それを好調だった打線が逆転しての勝利だったのです。私が目指す「守り勝つ野球」では決してありませんでした。それまでは先発投手が5回まで最少失点に抑え、チーム防御率はリーグトップを誇っていました。しかし、6連勝の時期はそれが崩れていたのです。そのため私は正直、不安を抱えていました。そして、その不安が的中し、新潟に逆転優勝を許してしまったのです。

 しかし、シーズンを通しては胸を張っていいと思っています。チーム成績は前後期をトータルすれば、打率はリーグトップ、勝率も2位です。チームは着実に強くなったと言っていいでしょう。昨季との違いの一つは、打線です。昨季、信濃の打線は左投手に滅法弱かったのですが、今季は坂巻卓也(つくば秀英高−中央大−茨城ゴールデンゴールズ)や原大輝(広島国際学院高−北海道東海大)、ペレスといった左投手に強い右打者がいました。これが打線の好調につながったのです。また、8月の半ばからは、それまで中軸を打っていた竜太郎(松商学園高−明治大−ヤマハ−オリックス−東北楽天)を2番に上げました。確かに竜太郎は出塁率はいいのですが、得点率でいうと原やフミヒサ(山梨学院大付高−日本大−ワイテック)の方がありました。そこで彼らの前に竜太郎が出塁してくれれば、チームの得点力もアップするだろうと考えたのです。結果的にはこれが功を奏しましたね。

 さて、来季に向けてですが、就任時から言い続けている“ミスの少ない野球”をしたいと思っています。いや、そうしなければ優勝をすることはできません。今季は決して他球団に力負けはしていなかったものの、ミスという点では大きな課題として浮き彫りになりました。エラー数はリーグ最多の103。これが3分の1でも4分の1でも減らすことができれば、自ずと勝率はさらに上がるはずです。

 そのためにも、今季は安定させることができなかったショートとサードの補強が必要です。特にサードは誤算続きでした。当初はフェルナンデスを予定していたのですが、不運にもオープン戦で骨折してしまったのです。そこでペレスをサードにまわしたのですが、彼が機能しなかった。やむなく外野手の今村亮太(佐久長聖高−東京経済大)をサードにコンバートさせて凌いだのですが、来季はきちんと固定させたいと思っています。

 シーズン中はもちろん、短期決戦のプレーオフを見ていても、やはりミスした方が負けるということははっきりしています。ですから、そこをどこまで減らすことができるか。これこそが頂点に上りつめるための最重要課題。来季こそはミスのない守り勝つ野球で初優勝をしたいと思いますので、さらなる熱い応援をお願いいたします。

佐野嘉幸(さの・よしゆき)プロフィール>:信濃グランセローズ監督
1944年4月1日、山梨県出身。甲府工業高から1962年、東映(現・北海道日本ハム)に入団。72年に南海へ移籍し、レギュラーに定着した。73年にはリーグ優勝に貢献する。75年のシーズン途中で広島に移籍し、同年チーム初のリーグ優勝に貢献。79年に現役を引退し、翌年から国内外の球団でコーチや二軍監督を務める。2001年〜03年にはMLBパドレスのスカウトに就任。04年〜08年は千葉ロッテのコーチを務めた。10シーズンより信濃の監督に就任した。
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