第332回 「支柱」~石丸清隆監督の解任~

facebook icon twitter icon

 5月21日(水)、愛媛FC事務局は石丸清隆(トップチーム)監督の解任(契約解除)を発表。また同日、青野慎也ヘッドコーチが暫定的に監督を務めることも併せて発表された。

 

 今季もJ2で戦っている愛媛FC。開幕前には「リーグ優勝」を目標に掲げ、ここまで(第16節まで)戦ってきたが「1勝7分け8敗(勝ち点10)」でリーグ最下位と思わぬ苦戦を強いられている。

石丸清隆さんの応援横断幕(2005年作成)

 4月に行われたアウェーでのモンテディオ山形戦にて今季初勝利をマークしたものの、ホームゲームでは未だ勝利なし(リーグ戦に限る)。ホームゲームという括りで見ると、昨年の8月から勝利が無く、サポーターの多くがトップチームに対し不満を抱いていた。

 

 クラブ側も変化を求め、選手の入れ替えや若返りなど、強化を図ってきたが、当初の目標に手が届くような成果は、ここまで得られてはいなかった。

 

 そして四国ダービー(第16節)での敗戦という結果を受け、クラブはシーズン途中での監督解任に至ったものと思われる。

 

 石丸さんは、2005年10月にJFL参戦中の愛媛FCに選手として入団。2006年にはJ21年目の愛媛FCをキャプテンとして支えてくれた。2006年シーズン後、現役を引退することになったが、クラブに残り、トップチームコーチやユースの監督などを務めた。

 

 S級ライセンスを取得後の2013年と2014年には愛媛FCトップチームの監督として活躍。その後、一旦愛媛から離れることになるが、2022年から愛媛に戻り、監督としてチームを率い、2023年にはJ3優勝(J2復帰)という大仕事を成し遂げてくれた。

 

 大阪府出身の彼だが、長年に渡り愛媛FCや地域と深く関わってくれており、2005年(JFL時代)のJリーグ昇格への貢献、また前述の通り2023年のJ3制覇という初タイトルをクラブにもたらしてくれた恩人でもある。

 

 私は現役時代(JFL時代)の石丸選手が、中盤でチームメイトに支持を送りつつ、堅実なプレーをしている姿に感銘を受け、2005年末に応援横断幕(個人幕)を作成し、2006年から試合会場に掲出させていただいている。

 

 その横断幕には「石丸KIYOTAKA」の名前表記の他に「il PILASTRO di EHIME」という言葉を添えてある。イタリア語で「愛媛の大黒柱(支柱)」という意味だ。自分が石丸選手を初めて見た時の印象を、イタリア語で表現したのである。

il PILASTRO di EHIME(愛媛の大黒柱)

 2006年に開催された「愛媛FCファン感謝祭」にて、この横断幕に、ご本人からサインをいただいた。その際「僕のファンなんて珍しいですね」と語り、照れ臭そうにサインをしてくださったことを今でも覚えている。

 

 その後も「il PILASTRO di EHIME」という言葉の通り、愛媛FCを監督という立場から支え続けてくれた。

 

 この成績不振の中、最近では周囲から監督批判も聞こえていたが、解任される(第16節)まではスタジアムに横断幕を掲出した。

 

 今回、シーズン途中での監督解任という残念な結果となってしまったが、チーム内での意識変化を促すため、またサポーターや支援者ら、周囲からの理解を得るためにも仕方なかったのかもしれない。

 

 クラブや我々とも長く関りを持ち、宝物も残してくれた功労者である石丸さんを、もう少し良いタイミングで送り出してあげたかったし、これまでの感謝の気持ちを直接伝えたかったという思いもあり、個人的には心残りである。

 

 厳しい状況を招いたのは、監督のみの責任ではないとも思うが、もう一度、クラブやファン・サポーター、支援者が団結して困難へと立ち向かうための決意と受け止め、私も前向きに進んでいきたい。

 

「石丸清隆さん、愛媛FCや我々の故郷を愛してくださり、本当にありがとうございました。あなたの功績を未来へ伝えていくためにも、チームの存続とクラブの発展に取り組んでいきたいと思っております。機会があれば、また何処かで、お会いしましょう」

 

 

<松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール>

1967年5月14日、愛媛県松山市出身。愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。

facebook icon twitter icon
Back to TOP TOP