東日本大震災の影響により延期となっていたJ2第7節、愛媛FC対水戸ホーリーホックの一戦が、10月26日(水)にホーム(ニンジニアスタジアム)にて行われた。 
 第32節終了時点で引き分けを挟んで、ここ7試合、勝利から遠ざかっている愛媛FC。中2日や中3日という過密日程で行われている10月後半の公式戦により、選手たちも体力的には厳しい状況にある。だが、今節こそは勝ち点3を手に入れ、リーグ戦における浮上のきっかけをつかみたい。
 晴天に恵まれた今日のニンジニアスタジアム。ピッチコンディションも概ね良好の模様で、好ゲームが期待できそうである。 
 照明塔に灯が点り、ピッチの緑が美しく浮かび上がる中、時刻は午後7時を廻り、水戸ホーリーホックのキックオフで試合がスタートした。
 
 今節も3バックのシステムを採用する愛媛FCは、立ち上がりから味方FWをターゲットに鋭い縦パスを使いながら、敵陣へと積極的に攻撃を仕掛ける。 
 前半17分、敵陣内の右サイドでMF東浩史選手がボールをキープ。そのまま同サイドをドリブルで駆け上がり、さらに外側へと開いていたMF大山俊輔選手へとパスを送る。ボールを受けた大山選手がワントラップ挟みつつ、ペナルティエリアへとアーリークロスを供給。そこへ飛び込んできたのは、MF前野貴徳選手だ。敵DFと競り合いながら大きくジャンプ! ヘディングシュートを狙ったが、惜しくも敵ゴールマウスを捉えることはできなかった。
 
 得点を感じさせるようなプレーも飛び出し、愛媛の先制ゴールを期待していたのだが、パスミスや敵によるカウンター攻撃などからピンチを招くと、攻守のバランスが崩れ始める。そして前半22分、相手の攻撃陣に簡単に自陣中央を突破され、先制点を献上してしまった。
 
 それでも反撃に向けて奮起する愛媛イレブン。前半24分、敵陣内の右サイドで繋いだボールをMF越智亮介選手が捉え、ダイレクトにゴール前へとアーリークロスを入れる。そこへ駆け込んできたのはFW福田健二選手。半身の構えからジャンプし、ヘディングシュートを放った! しかし、シュートは敵GKの正面に飛び、同点ゴールとはならなかった。
 
 その後、システムを4バックに変更するなど工夫を試みるが、状況の打開には繋がらず前半終了。試合は愛媛が1点ビハインドのまま、後半戦に突入する。
 得点に向けて、サイド攻撃やフィードボールなどを駆使して敵陣へとボールを進める愛媛FC。後半16分、GK川北裕介選手がセンターサークル付近に向けてロングフィードを供給。このフィードボールを大山選手が捉えた。大きくジャンプし、ヘディングでボールを前線へと流す。

 すると、敵DFライン裏への抜け出しを狙っていたFW内田健太選手が素早く反応し、このボールに追いついた。トラップを挟みながら敵DFをかわす内田選手。次の瞬間、ペナルティアーク手前から豪快に左足を振り抜き、ミドルシュートを放った! 弾丸シュートは敵GKの伸ばした手の先をすり抜け、ゴールへと迫るが、わずかにポストの外側をかすめ、得点には至らなかった。
 
 その後、選手たちの運動量が落ちる中、決定機をつくり出すことができず、逆に相手チームにうまく時間を使われてタイムアップ。結局、最終スコア0−1で愛媛FCの悔しい敗戦となった。
 今節、試合途中でシステムを変更するなど、自分たちのサッカーに対しての迷いが感じられた愛媛FC。サポーターが求めている「皆が観たいサッカー。皆が応援したいサッカー」とはズレが生じてきているようにも思える。

 厳しい日程の中、戦術をどうこうする前に出場機会に恵まれていない選手たちの起用も考えてほしい。チームには経験豊富なベテランや日々成長している若手など、やる気にあふれ、コンディションの良い選手も控えている。ポジションの問題があるのなら、「愛媛FCしまなみ」にだって良い選手たちはいる。そういったクラブ全体の力を結集し、皆が待ち望む愛媛FC独自のサッカーを構築してもらいたいのだ。
 
 また今節は日程の変更から平日開催となった。スタジアムへ足を運べなかったサポーターもたくさんいたとは思うが、Jリーグ公式戦での入場者数が1563人というのは、あまりにも寂しすぎるように感じる。チームや私たちサポーター、支援者を含め、皆で愛媛FCの未来のため、何をすべきかを考える時期にきているのかもしれない。
 
 この日、ゴール裏のサポーターたちは試合終了後も帰らず席に留まり、「FORZA!」のコールと手拍子を選手たちのクールダウンが終わるまで続けていた。
「苦しく厳しい状況を、頑張って乗り越えてほしい!」
 皆の熱い思いが、選手やスタッフに届いてくれていることを願って止まない。


松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール
 1967年5月14日生まれ、愛媛県松山市出身。
 愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。
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