久保建英をゲームキャプテンにした指揮官の意図とは
日本代表が既に突破を決めているアジア最終予選のラストマッチ。ピッチに遠藤航がいるのに、キャプテンマークを久保建英が巻くというサプライズが用意されていた。4位以内を確定させアジアプレーオフ進出権を手にして大阪にやってきたインドネシア代表に対して、その久保が躍動した。
前半19分、左CKではショートコーナーを選択。相手をつり出した鎌田大地からリターンを受け、もぐり込んで放ったシュートこそ弾かれたものの、華麗なテクニックから右足でチームの2得点目を挙げる。前半アディショナルタイムには鎌田にラストパスを送ってアシストをマーク。さらに後半13分にもペナルティーエリア内に入ってフワリと浮かしたパスで町野修斗のゴールをアシストしている。全6得点中3得点に絡む攻撃面もさることながら、守備での貢献が光った。プレスバックで猛然と体をぶつけてボールを奪い取るシーンが何度あったことか。
試合後のフラッシュインタビューでは、ピッチリポーターの槙野智章からそのことを聞かれて、このように応じている。
「いつもキャプテンマークを巻いている遠藤選手が球際、ネガティブトランジション(攻から守への切り替え時)でしっかりしたものを見せてくれている。きょうは僕が遠藤選手になったつもりで切り替えのところは誰よりも早くやろうと心掛けてやっていて、何回かいいパスカット、ボール奪取から攻撃につなげられて良かったなと思います」
激しく、しつこく、まとわりつく守備は久保にとっては元々“標準装備”のものではある。だがそれを攻撃的なポジションにいる自分が率先し、強調することによって周りにもそれを促すような力があると感じる。インドネシアは裏を狙ってロングボールを送ろうとするが、日本は若手で形成する3バックを中心に個のバトルで圧倒していく。〝いい守備からいい攻撃〟を実践できたことが6発快勝、そして無失点どころか被シュート数ゼロにつながった。
森保一監督はなぜ今回、遠藤が出場しているにもかかわらず久保にキャプテンマークを託したのか――。
4月、指揮官に話を聞く機会があった。北中米ワールドカップ行きを決めた3月のバーレーン代表との一戦、プレーヤー・オブ・ザ・マッチに輝いた久保のパフォーマンスについて尋ねると後半開始早々ワンツーで抜け出そうとする相手についていきつつ、また全力で戻ってきてヘディングで体をぶつけて相手と競り合った場面を取り上げて評価していた、
「ああいうシーンを見ても全員攻撃、全員守備をやっていくというところで攻撃的なポジションにいる選手がああやって出してくれると、チームの士気自体が上がります。今回の最終予選を通して言えることは局面の競り合い、ルーズボール(の回収)で相手を上回ることによって試合をコントロールして、ピンチを少なくできている部分に結びついていました。
攻撃に守備に関わり続ける部分はレアル・ソシエダで3シーズンにわたってフルに出続けてきて間違いなく力をつけている。局面を強く、粘り強く戦うという根幹の部分を、タケはより意識をしてくれています」
6月の2連戦は“消化試合”とあって指揮官はケガや疲労を考慮して三笘薫、守田英正、堂安律、板倉滉、上田綺世、伊東純也ら主力選手を休ませた。それでもレアル・ソシエダと日本代表でフルにシーズンを働いた久保は遠藤、鎌田らとともにわざわざ招集している。
オーストラリア代表とのアウェイマッチでキャプテンマークを巻いた鎌田に対しても同じことが言えるが、それはやはり代表経験の少ない選手、初招集の選手に対して「日本代表はこういう戦い方をしていくんだ」というメッセンジャーとしての役割を担えるという確信と期待があったからではなかったか。キャプテンマークは指揮官からの信頼の証でもあった。
フラッシュインタビューでのコメントを聞いても、久保自身、日本代表でキャプテンマークの重みというものを知ったはず。チームを引っ張っていくという自覚はこれからより強くなっていくに違いない。