“音はめ”と“羽生結弦のヘッドロールターン”
ゼビオアリーナ仙台(仙台市アリーナ)開館記念イベントとして、5日に行なわれたアイスショー「The First Skate」に出演した羽生結弦。「春よ、来い」とアンコールで「Let me entertain you」を披露した。
羽生は地元のリンクで、ハイパフォーマンスを披露した。音楽に合わせた動きは、いつ見てもレベルが高い。
ジャンプの瞬間やジャンプの着氷時に、音や歌詞に合わせるのは羽生にとっては、もはや当たり前のようだ。細かく刻む音に合わせて披露するステップもしかりだ。音にどんぴしゃりで動きを当てはめることから、“音はめ”と言われている。
もちろん、上に記した“音はめ”のレベルは高い。そんな羽生の音はめの中で、私が注目している箇所がある。体の回転軸上から首をわざと外し、体のよりコンマ何秒か早めに首を回しながらターンをするパートだ。
ダンスのヘッドロールターンに近い仕草、と言えばよいだろうか。首および頭の遠心力で体をターンさせる。羽生は、これを氷上で披露する。しかも、音に当てはめて。
ヘッドロール気味のターンが見られるのは、譜面上でいう付点音符やスタッカート(もしくは8分休符前や16分休符前など)の箇所であることがままある。厳密に言えば、スタッカート部分に関しては、その直前でヘッドロールターンをして、スタッカートをいかすためにそこで上半身の動きをピタッと止めたりするのだ。
羽生は譜面を見るというより、音楽を聴いて振りをつけているのだろう。彼はそういった感覚、感性も抜きん出ている。
羽生はYouTubeで、アニメ「メダリスト」の主題歌「BOW AND ARROW」の曲に合わせて、演技を披露している。「BOW AND ARROW」の作詞・作曲・編曲を担当し、自らが歌っている米津玄師は、羽生との対談で言及していた。
「BOW AND ARROW」を例にすれば、冒頭部分がそうだ。母音の「E」で歌詞の韻を踏んでいるパートは、まさに“音はめ”を堪能できる箇所だろう。その中で1度、ヘッドロール気味のターンを披露している。
フィギュアスケーターとしての技術、トップアスリートとしてのフィジカル的要素、豊かな表現力は羽生の武器だ。それらと合わせて、“音はめ”の感覚も、羽生が唯一無二のスケーターである所以なのだろう。
(文/大木雄貴)