最終回 内藤裕二先生(消化器専門医、京都府立医科大学大学院医学研究科教授) 「二宮さんは珍しい腸内環境」
野村乳業株式会社と株式会社スポーツコミュニケーションズのタイアップ企画第3弾のコーナータイトルは<二宮清純の「おなかを育てる」プロジェクト>です。2024年9月から始まったこのコーナー、今回で最終回を迎えました。トリを飾るのは消化器専門医で京都府立医科大学大学院医学研究科教授の内藤裕二先生です。先生が監修を務める腸内フローラ検査サービス「Flora Scan(フローラスキャン)」で当サイト編集長・二宮清純編の腸内環境を事前にチェック。明らかになったデータをもとに、健康について語り合いました。

「変わってんなぁ~」
二宮清純: 今日(6月27日)は京都からご足労いただき、誠にありがとうございます。
内藤裕二: 朝の6時に起きてラジオ体操をやって、しっかり朝食を摂って東京に来ました。
二宮: 今回は、事前に「Flora Scan」で私の腸内細菌叢のデータを取っていただきました。それをもとにお話できればと思います。よろしくお願いします。
内藤: こちらこそ、よろしくお願いします。私とは全然違うデータが取れたので、興味深かったですね。

二宮: さて検査結果はいかがでしょう。
内藤: ビフィズス菌が少ない。日本人はビフィズス菌を多く持っていて体に有益な短鎖脂肪酸を産生してくれますが、二宮さんの場合、0.03%。こういうデータは、あんまり見た事がない。正直、「変わってんなぁ~」というのが第一印象です(笑)。
二宮: あまり、よろしくないってことですか?
内藤: いやいや、ライフスタイルは人それぞれですから。お酒は飲みますか?

二宮編集長の腸内細菌データの一部。ブラウティア菌、アッカーマンシア菌ともに平均を超える数値を記録した。
二宮: ほぼ毎日飲みます。
内藤: 一般的にお酒を飲む人は、ビフィズス菌が少ないと言われています。お酒とビフィズス菌は相性があまりよくないようなんです。ただ、二宮さんの腸内環境を見ると、ほかの菌がビフィズス菌の代わりをしてくれているようです。
二宮: それはなんという菌ですか。
内藤: ブラウティア菌です。腸内における最優勢菌のひとつと言われ、現在注目されている菌です。これが腸内細菌叢の7.12%も占めています。
二宮: この菌の主な働きは?
内藤: 脂肪の蓄積を予防してくれたり、炎症を抑える働きをする物質を産生します。世間では“やせ菌”と呼ばれています。
豆が苦手な二宮編集長
二宮: それを聞いて安心しました。
内藤: それともう1つ、アッカーマンシア菌も多い。これも“やせ菌”の一種。BMI指数が低い人に多いと言われ、二宮さんは8.34%も保菌しています。これを持っている日本人は、かなり少数ですよ。
二宮: へぇー、珍しいんですか。
内藤: 日本人の中では珍しい。私が知る限りだと、長生き家系の人がアッカーマンシア菌を持っている傾向にある。糖尿病を予防するとも報告されています。
二宮: ということは、長生きの可能性があるんですね。
内藤: 最近では、アッカーマンシア菌をサプリメントにしようとしている会社もあるくらいですから。しかし、こんなに保菌している人、初めてみました。
二宮: 本当ですか?
内藤: 日本人にしてはかなり珍しい腸内環境ですわ。どっちかと言うたら、欧米人っぽい(笑)。

二宮: バリバリの愛媛県人なんですけど(笑)。
内藤: 付言すれば近年、日本人には減少傾向にあるルミノコッカスという菌を4.12%も保菌しています。これも短鎖脂肪酸を産生してくれる菌です。ビフィズス菌が少なくても、元気な理由がデータから読み取れます。
二宮: 食生活で、ほかに気を付けるべき点はありますか。
内藤: 二宮さん、大豆製品はあまり食べない?
二宮: 豆類全般、苦手です。どうしてわかったんですか。
内藤: 大豆を食べたらエクオール産生菌が分解して、前立腺がん予防や血圧を抑制する物質を産生してくれます。二宮さんの場合、このエクオール産生菌が0%ですから、もしかしたら、と……。
風邪重症化のリスクも!?
二宮: 福井県出身の内藤先生も、納豆は苦手でしょう?
内藤: いえ、私は納豆食べますよ。豆腐、厚揚げなども好きです。豆類は健康増進にかなりおすすめ。
二宮: 反省します(笑)。
内藤: 日本人の大半、豆好きやのになぁ(笑)。専門家の立場からすれば、健康面の事を考えるともう一度トライしてほしいですね。豆は良質なたんぱく源なうえ、最近では食物繊維が豊富なこともわかっていますし、ビタミン、ミネラルも含まれています。パックに入った煮豆をみそ汁とかカレーに入れたりするのがいいかもしれません。食生活面で、何か健康を意識してやっていることは?
二宮: マイ・フローラを毎日飲むことに加え、スムージーを毎朝、飲んでいます。
内藤: いいですね! 私も毎朝、スムージーを飲んでいます。
二宮: バナナ、りんご、キウイ、グレープフルーツ、トマトなどを入れています。
内藤: そこに豆乳を入れないと。
二宮: 豆乳かぁ(苦笑)。明日から必ず入れます。私のスムージー、野菜などの緑が少ないんですよね。
内藤: 粉末の青汁をスムージーに入れるのもおすすめですよ。
二宮: 豆類の摂取以外で、気を付けるべきことは?
内藤: フィーカリバクテリウム菌が少ない。酪酸という酸を産生してくれるのですが、二宮さんの場合、これが今回の結果では0%。風邪を引くと重症化しやすい傾向にあるので注意してください。

二宮: 免疫が低いってことですか?
内藤: 免疫をコントロールする力が少し弱い。
二宮: これは食生活で改善できないのでしょうか。
内藤: この系統は食物繊維に依存します。これは日本人全体に言えることですが、食物繊維の摂取量が減っています。よく、「レタス何個分の食物繊維」とかいう宣伝文句を見るでしょう?
二宮: はい。「レタス4個、5個分の」というCMが流れていますね。
内藤: レタスを4個も5個も食べる人いませんから(笑)。食物繊維は、主食でも補える。全粒穀物と言われている玄米や麦で食物繊維を摂取した方がいい。
パーキンソン病との関連も
二宮: 玄米は体にいい、とよく聞きます。
内藤: 昔の玄米は硬くて食べにくい、と言われていました。今は発芽玄米など柔らかいものが販売されています。
二宮: そこまで食物繊維を意識することはありませんでした。
内藤: 京都で長寿の研究をしていると、ご高齢の方はイモなどの根菜類やわかめ、もずくなどの海藻類を多く食べる傾向にあることがわかってきました。これらにも食物繊維が含まれています。
二宮: 食事は、見直すところが多そうですね。
内藤: 食事の話を続けると、私は「塩分制限」について何年も前から警鐘を鳴らしています。しかし、日本人はどうしても塩分を摂り過ぎてしまう。WHOの基準では、1日当たり5グラム程度の摂取量が推奨されています。
二宮: 現代の日本人の塩分摂取量は?
内藤: 1日当たりの平均で10グラムも摂取しているというデータがあります。
二宮: えっ! 2倍も!?
内藤: 間違いなく日本人は塩分過多。早く、台所からお醤油をしまった方がいいですよ。
二宮: それが、なかなかできないんですよね(笑)。
内藤: 市民公開講座とかでよく食生活に関する講演をさせてもらいます。来場されたみなさん、その場では「ウンウン」と聞いていても、会場を出たら、もう……。

二宮: 忘れてしまうと……。
内藤: 塩分過多だと、おなかの中の塩分濃度もあがります。すると塩分を好む腸内細菌が増えます。それが悪さをするんです。
二宮: 私はこの企画を通じて、「腸活」の大切さを実感しています。自分のデータを先生に検証してもらったことで、さらに納得感が高まりました。
内藤: 私は消化器の医者です。おなかの調子が悪い人はうつ気味の傾向がある。逆に心療内科や精神科の患者は、便秘の人が多い。患者をずっと診ていると、病状が悪くなる時はおなかもメンタルも両方悪くなる。スッキリとおなかの状態が快方に向かう時は、メンタルも良くなっていく。片一方だけよくなるって、あんまりないですね。
二宮: おなかの不調は、体全体に影響を及ぼすんですね。
内藤: 便秘の人を10年間追いかけると、パーキンソン病や認知症になる人が多い。だから、“5年後、この患者さんは元気かなぁ。そのためには今、何をしないといけないのかな”としっかり考えて治療にあたってきました。
二宮: 今後のことも含めて今日は大変勉強になりました。
内藤: こちらこそ、大変珍しいデータを提供していただき、ありがとうございました。

<内藤裕二(ないとう・ゆうじ)プロフィール>
1958年、福井県生まれ。京都府立医科大学大学院医学研究科生体免疫栄養学講座教授。1983年、京都府立医科大学卒業。2001年、米国ルイジアナ州立大学医学部分子細胞生理学教室客員教授。09年、京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学准教授、および同附病院内視鏡・超音波診療部部長などを経て、21年4月より現職。腸内細菌学、抗加齢医学、消化器病学を専門とする。23年、胃腸の機能低下と病気のリスクとの関連について研究する「日本ガットフレイル会議」を発足。「健康の土台をつくる 腸内細菌の科学」(日経BP)など著書多数。
(文・写真/大木雄貴)