コロナ禍の影響 競技超えた検証を

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 文部科学省が発表した24年度の「経年変化分析調査」によると、調査対象となった小学6年と中学3年の学力が、過去の調査に比べると明らかに下落したのだという。

 

 文科省の分析では、原因の一端として考えられるのはコロナ禍の影響。「対面授業の減少などが影響した可能性がある」としている。

 

 この分析が正しいかどうかは人によって評価の分かれるところだろうが、中3の英語が数字よりもかなり大きな下落をしているあたりは、なかなか興味深い。いずれにせよ、あれほどの規模で、あれほどの期間、社会生活が変質したのだから、子供たちに影響が及んでいないはずもない。そして、当然のことながら、その影響は学力だけでなく、スポーツについても波及していることが考えられる。

 

 調査対象となった小6、中3は年齢に直せばおよそ12歳と15歳。彼ら、彼女らがスポーツ界の前線に加わってくるのはそれほど遠い未来ではない。文科省にはぜひともスポーツ面での影響についても分析していただきたいところだし、スポーツ界としては、そこから対策を講じておきたい。

 

 先日、都立高で野球部の監督をしている方々にお話を伺う機会があったのだが、彼らが口を揃えていたのは、「コロナ以前と以降では、指導法を変えざるを得なかった」ということだった。端的にいうと、以前であれば効果もあった「強めの指導」に対し、拒絶反応を示す子供の割合が明らかに増えたのだという。ごく少数のサンプルをもって全体を語る危機は承知しつつも、昭和スタイルの指導法が次々と否定されていった平成のように、いまは平成が令和にアップデートされる時期に入ったのかも、と思った。

 

 経済的に勢いのあった時代の日本が、しかし世界各地で反発と軋轢を生んでいった一方で、経済的に「失われた30年」と言われる時期は、日本への好感度が右肩上がりを見せた時期でもある。コロナ禍を単純にマイナスとだけ考える愚は避けておきたい。スポーツについても、何かが失われたとしたら、それまでにないタイプが生まれやすくなった可能性はある。

 

 忘れてはならないのは、コロナ禍に見舞われたのは日本だけではない、ということ。ほぼすべての国々があのウイルスに苦しめられ、何らかの対策と妥協を余儀なくされた。その問題、変化は国によって違うかもしれないが、共通する課題も必ずやある。

 

 だが、わたしの知る限り、コロナ禍がスポーツ界にどんな影響を及ぼしたかを分析し、今後の対策に生かそうとしている国は見当たらない。学力低下の原因として、スマートフォンやゲーム機の使用時間が長くなった点を指摘する声もあるが、だとしたら、その影響は間違いなく体力面にも及んでいる。これまでと同じやり方をしていたら行き詰った、という状況が、全世界で起きるかもしれない。

 

 だからこそ、文科省だけでなく、野球、サッカー、バスケ、バレー、ラグビー、武道――各スポーツ界が手を結び、自分たちのよく知る世界にコロナ禍がどんな影響を及ぼしたかを共有できたならば、それは日本スポーツ界全体にとっての財産となり、国際競争力の向上にもつながる。

 

 簡単なことではないが、日本ほど、よくも悪くもスポーツと学校が強く結びついた国はちょっとない。競技を超えた情報共有と対策立案は、実は欧米よりもやりやすいのでは、と思ったりもしている。

 

<この原稿は25年8月7日付「スポ-ツニッポン」に掲載されています>

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