M&A SOUKEN QUANTS、最適解を探し分析中 ~D.LEAGUE~
10月に開幕した日本発のプロダンスリーグ「第一生命 D.LEAGUE 25-26」はROUND.2を消化した。今季から新規参入を果たしたM&A SOUKEN QUANTS(エムアンドエー ソウケン クオンツ)は勝ち星こそないが、アニメのコマ送りや映像のような、人間離れした動きで表現するアニメーションダンスを軸に独特の存在感を放っている。まだ全容が見えぬ新チームについて、リーダーの光好とチーム最年長のNAOTOに訊いた。
チーム名QUANTSの由来は<金融市場において高度な数学的手法を駆使し分析、予測を立てる専門家>である。年々ルールやジャッジシステムがアップデートされるD.LEAGUEにおいて勝利の方程式を探っている最中だ。ディレクターはDa-Yoshi、クリエイティブディレクターはGORIKINGが務める。いずれもアニメーションダンスチーム「TRIQSTAR」のメンバー。Da-Yoshiは“クイーン・オブ・ポップ”のマドンナのMV出演やツアー帯同を果たしており、GORIKINGは世界的なダンスコンテストで優勝経験がある。ダンス界では知られた存在だ。
その2人の誘いを受け、チーム入りしたのがNAOTOだ。昨季はavex ROYALBRATS(エイベックス ロイヤルブラッツ)のSPダンサー(ROUND.12)として出場。QUANTSでは唯一、オーディションを経ずに入団した。
「僕はDa-YoshiさんとGORIKINGの2人がいるから決めました。元々すごくお世話にもなっていて、関係値のある2人。ディレクターになるにしても、人生をガッとD.LEAGUEに振らないとできない仕事。その覚悟を持ったDa-Yoshiさんから『NAOTOくん、ぜひ協力してくれないか』と言われた。親交があるGORIKINGからも『NAOTOさん是非お願いします』と声を掛けてくれた。“この2人が言うんだったら、やるしかない”っていう感じでしたね」
リーダーの光好は、オーディション参加組である。過去に他チームのオーディションを受けたこともあるという。ただ、その時は縁がなかった。
「一度、Dリーガーになることを諦め、自分のやりたいことをやりつつ、ダンスを仕事にしながら、ストリートダンスのバトルやコンテストを目指していました。今年、(オーナー企業の)M&A総研さんがダンサーを募集していると、友人に教えてもらった。自分は今29歳なんですが、そろそろ人生的に区切りを付けて、挑戦できる場にいきたい思い、オーディションを受けました」
QUANTSの初戦。光好らオーディション組にとってはD.LEAGUEデビュー戦となった10月のROUND.1である。「僕らの自己紹介。お客さんに知ってもらうためにも、とにかく自分たちらしさを出そうとしました」と光好。名刺代わりの挨拶をストンプ、チェストポップ、アームスイングを駆使したパワフルでエモーショナルなダンスのクランプを武器とするFULLCAST RAISERZ(フルキャスト レイザーズ)を相手に披露した。敗れはしたものの、確かな存在感を示した。ショーテーマは「WATER DROP」。派手さはなかったかもしれないが、水が滴り落ちるように、滑らかに踊った。少しダブついた白い衣装で揃え、バイブレーションを視覚でも強調していた。
11月のROUND.2は多様なダンススタイルを融合し、リーグでも独自の世界観を創り上げるLIFULL ALT-RHYTHM(ライフルアルトリズム)の前に敗れた。ショーテーマは「GEYSER」。間欠泉を意味するだけあってROUND.1より、強めのビートで噴き出すような活力が表現されていた。
2連敗スタートをどう受け止めているのか。リーダーの光好はこう語る。
「アニメーションダンスを自分たちなりに表現することをコンセプトとしています。そこをまず全面に出し、どうなるかを試してみたのですが、残念な結果になった。ただ負けはしましたが、自分たちなりの分析はできたと思う。ROUND.3に関しては、もうちょっと構想を練るなどして勝ちに行けるように頑張っていきたいと思います」
続いてNAOTO。
「勝敗に関して、ジャッジの評価は、僕の友人にたくさんDリーガーがいますが、その方々も『ちょっと難しい』と言っていた。それは聞いていた通りだと感じました。僕自身、昨年CYPHER ROUNDに出ましたが、ステージで浴びた歓声と、実際に付けられた得点にギャップがあった。その点の難しさは感じています。今はウチのチームが、D.LEAGUEという舞台でどう採点されているか分析する必要がある。どこが得意で、どこが苦手かをこの1、2戦で炙り出し、改善していけば、勝てるチームになっていくと思う。今シーズンは特にオーディエンスの割合も増え、新しいチームが勝ちづらい状況ではあるのかなと思っています。ただアニメーションは、ダンスに詳しくない人にもわかりやすいのが強み。そういう魅力も存分に伝えながら、ちゃんとジャッジの票も稼いでいけるように、成長していきたいですね」
QUANTSは男女混成チームで年齢層も幅広い。最年長はNAOTOの35歳で、最年少はNANOKAの15歳。NAOTOから見るメンバー評はこうだ。
「みんな明るい。ひたすらテンションが高い。僕がみんなぐらいの時、それこそ10代から20代前半までは、どれだけカッコつけるかしか考えていなかった。だけど、みんなにはそれがない。まっすぐで素直でいい子ばかり」
そして「すごく人気になって、調子乗って嫌なヤツになっていったら嫌だな」と呟いた。
とはいえ、リーダーとしてチームをまとめるのは容易でないだろうと、光好に質問をぶつけると「全然まとめてないですよ」とキッパリ。隣にいたNAOTOも「肩書きだけで、まだ何もしていない」と笑いながら続いた。光好本人によれば「リーダー的なことをやったこともないですし、そういう素質もない」とのこと。ディレクターのDa-Yoshiからは「メンバーの心の支えになって欲しい」と言われ、受諾した経緯がある。「みんながしゃべりやすい存在のリーダー」(NAOTO)。チームを代表して表に立つことも多い役回りだが、「改まって話すとなると何をしゃべったらいいか分からなくなる」と、リーダー業は勉強中ということらしい。
最後に2人に今季の意気込みを聞いた。
「お客さんに楽しんでもらうことが一番だと思っています。いろいろなジャンルに引っ張られて、グチャグチャになるようなことはしたくない。アニメーションを貫いて勝利したい。それを重ねて、お客さんに喜んでもらい、ファンになっていただくのが理想。ひたすらに、自分たちの好きなことをやり続けたいなと思います」(光好)
「残り全部勝つぞとは言えない。ただ、自分たちのスタイルでできる可能性を探りつつ、それが見ている人たちに僕らがリーグを通して成長していく姿が伝わるような、その都度結果を出せるといいなと思うんです。あれやって、これやってとコロコロを変えるのではなく、積み重なって勝てるチームになっていくのが目標です。最初はダメかもしれないけど段々と勝ちに近付いていく。そういう未来を僕の中では描いています」(NAOTO)
自分たちの最適解を求め、 分析と実験を繰り返す。「個人的に分析と実験が大好き。トライ&エラーをしないと成長はないと思っています。それをD.LEAGUEという舞台でやらせてもらえていることが、すごくありがたい」とNAOTO。答えを導き出すために、時には痛みも伴うだろう。QUANTSが泣き、笑い、もがきながら前進していく。その姿を追いかけるのも、今季のD.LEAGUEの楽しみ方のひとつと言っていいかもしれない。
(文・写真/杉浦泰介、ROUND.1の写真/©D.LEAGUE25-26)