北京五輪代表選考会を兼ねた競泳の日本選手権最終日は20日、東京・辰巳国際水泳場で6種目の決勝を行い、女子200メートル背泳ぎ決勝では中村礼子(東京SC)が2分08秒80で優勝し、100メートルに続き、2位に入った伊藤華英(セントラルスポーツ)とともに代表入りを決めた。アテネ五輪代表の寺川綾(ミズノ)は3位となり、派遣標準記録は突破したものの2大会連続の代表入りはならなかった。
 前日の準決勝後、「決勝では積極的な泳ぎで勝負したい」と語っていたとおり、中村が序盤から一度もトップを譲ることなく泳ぎ切った。150メートルまで日本新を上回るペースに記録への期待も高まったが、惜しくも及ばず。レース後、中村は「自分の記録を更新できなかったのはかなり悔しい。気持ちのどこかに弱さがあったと思う」と自己評価は厳しく、「オリンピックに向けて一度死んだつもりで戦っていきたい」と語ると、涙も見せた。
 平井コーチは「しっかり練習ができていて良い状態だったので、記録に結びつかなかったことが悔しかったのだろうと思う。大会前から精神面でも落ち着かない部分があったので、プレッシャーが大きかったのかもしれない」と分析し、「積極的なレースは評価できるが、まだまだ。(北京に向けて)トレーニングはもちろん、メンタル、レース戦略もしっかり考えて、力を出せるように指導していきたい」と語った。

 100メートルを制した伊藤は、得意とする200メートルでは2位に終わり「代表権が獲れたのは良かったが、2位だったし記録もベストにも及ばなかった。自分の甘さが出たかなと反省しています」と振り返った。それでも2種目で初の五輪切符を手にし、ホッとした表情を見せた。「この4年間、たくさん悩んだし、アテネでは自分がオリンピックに行けなかったことで、いろんな人を悲しませてしまった。多くの人に支えられてここまで来て、今回ダメだったら死のうと思うくらいだった。北京は、水泳人生の集大成だと思っている。やるからには世界一を目指したい」。
 世界のレベルも上がっているが、中村、伊藤のダブルメダルにも期待したい。

 大混戦となった男子100メートルバタフライ決勝は、50メートル自由形を制した岸田真幸(アクラブ調布)が51秒86の日本新記録で優勝し、五輪代表権を獲得。2位には200メートル個人メドレーでも代表入りを決めた藤井拓郎(KONAMI)が入り、2種目での代表切符を手にした。
 積極的なレースで、前日に藤井が樹立した日本新を塗り替え、五輪代表切符も手にした岸田は「本当に嬉しい。前半からいって、持つところまで持たせよう、と。1年間ツラい練習をしてきたので優勝できてよかった」と喜びを口にした。
 驚異的な追い上げで2位に食い込んだ藤井は「正直、勝ちたかったので悔しいが、本番では負けないように頑張りたい」と語った。

 ベテランの山本貴司(近大職員)は終盤、懸命な追い上げを見せたが及ばず4位に終わり、4大会連続の五輪出場はならなかった。レース後は、すっきりした表情で「自分の持っている力は全て出し切った。北京に向けて、これが最後と思ってやってきた。結果を見たら、僕が泳ぐところはないなと感じるし、やることはやった。思い切りできたので良かった。完全に燃えつきました」と、今大会での現役引退を表明した。

 女子200メートル平泳ぎでは、種田恵(JSS長岡)が2分24秒54で制し、100メートルに続き代表権を獲得した。「いろんな人にお世話になって、感謝の気持ちでいっぱい。まだまだスピードが足りないし、自信が持てるようなタイムではない。この大会で笑顔で追われたように、北京でも笑顔で終わりたい」。
 2位の金藤理絵(東海大)も派遣標準記録を突破し、初の五輪出場を決めた。同じく東海大の田村菜々香は3位で代表入りはならなかった。

 男子100メートル自由形決勝は佐藤久佳(日本大)が49秒70で優勝、同女子は上田春佳(東京SC)が制した。佐藤、上田ともに個人での派遣標準記録突破はならなかったが、男女400メートルメドレーリレーの代表に決定した。

 男子1500メートル自由形は、同400メートルと200メートルバタフライで五輪代表入りを決めた松田丈志(ミズノ)が15分15秒67で制したが、派遣標準記録突破はならなかった。

 今大会では、各種目の派遣標準記録を突破した上で上位2位以内に入った選手が北京五輪代表に決定。全種目を通じて31名が代表入りに決まった。