渡辺将斗(車いすバスケットボール選手/愛媛県宇和島市出身)最終回 「いまの目標は天皇杯4連覇」

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 渡辺将斗(神奈川VANGUARDS)は2017年4月、宇和島市立三間中学校に入学した。小学6年から愛媛車いすバスケットボールクラブ(愛媛WBC)の練習に参加していた彼は、クラブと部活動の“二刀流”でスキルを磨いた。

 

写真提供/神奈川VANGUARDS

 父・大助は語った。

「息子の中学入学時、当時の校長先生とバスケットボール部の外部コーチのもとへ挨拶に伺いました。事情を説明して“息子がバスケ部に入りたいと言ってきたときは、お願いします”と。校長先生もコーチも“もちろん”と。コーチの息子さんと将斗は同い年で、すごく仲が良かったんです」

 

 将斗が愛媛WBCの練習に参加できたのは、金曜日のみだった。

 

 本人は、こう振り返った。

「愛媛WBCの競技用車いすに余りがあった。“一台、持って帰ってもいいよ”と。三間中のバスケ部にも入部したので、毎日車いすに乗って練習ができたのは本当にありがたかった」

 

 

 将斗は、中学の部活では月曜日から木曜日まで、バスケットボール部の隣の片面コートでシュート、ドリブル、チェアスキルを磨いた。金曜日は愛媛WBCである。

「中学の仲間と体育館で同じ時間を過ごせたのは、いい思い出です。バスケ部の試合には、もちろん応援に行きました。僕が中学3年生になり、愛媛WBCの試合に出場できるようになると、バスケ部のみんなが逆に応援に来てくれた。バスケと車いすバスケは違うけど、同じチームメイトとして一緒に過ごせたのは、僕の人生の中で大きかった」

 

 愛媛WBCは松山市内の愛媛県身体障がい者福祉センターを拠点としていた。自宅のある宇和島市から松山市は車でも2時間近くかかった。車いすバスケットボールに専念するため、高校は練習拠点に一番近い愛媛県立松山北を選んだ。

 

 1年時は松山市内の母親の友人宅で下宿生活を送った。2年に進級すると、一人暮らしを始めた。「サラリーマンに飽きた」大助は、将斗の高校進学と同時に鍼灸師の資格を取得するため、松山市内の河原医療福祉専門学校に入学した。大助は「松山で仕事もしていたので火曜日、水曜日は将斗のアパートに泊まっていた」という。

 

 「悔しい世界一」

 高校2年の春、将斗に転機が訪れた。U-23日本代表トライアウトの四国ブロック枠に1つ、空きが出た。愛媛バスケットボール協会は、将斗を推薦した。「同世代には、どんなプレーヤーがいるんだろうと、ワクワクした」と将斗。関東合宿では「手応えはなかったけど、とにかく必死に食らいついていった」。トライアウト最終日に紅白戦の接触プレーで左脚を骨折した。しかし、骨折が完治すると、春に続き秋のU-23日本代表選考合宿に呼ばれた。

 

「選考合宿では、手ごたえはあまりなく“選ばれないだろう”と。最終選考には僕と同じ持ち点(4.0)の選手が結構残っていた。みんな、僕より年上で経験もあるから難しいなと……。選ばれた瞬間は“本当に、オレっ!?”と喜びよりも驚きの方が大きかったです」

 

 高校3年の9月、ついに将斗はU-23日本代表入りを果たし、チーム最年少選手としてタイ・プーケットで世界選手権を戦った。だが、出番は予選リーグ・カナダ戦の7分46秒のみ。本人の回想――。

 

「出場したら、“絶対に点を取って、オレの名前と数字をスコアボードに残してやる”という気持ちでコートに入った。カウンターのシチュエーションからワンゴールを決められて、良かったんですけど……」

 

 U-23日本代表は決勝でトルコを52対47で破り、初優勝を果たした。

「表彰式で金メダルを首にかけてもらったときはうれしかった。でも、段々とそんなに貢献できなかった悔しさが込み上げてきた。世界選手権で活躍する選手たちを目の前で見た。大会前は“これで競技は最後にしてもいいかな”と思っていたが、“強いチームに入って、自分のレベルを上げたい”と考えるようになったんです」

 

 カフェでの出会いに「頑張らないと」

 

 将斗の頭の中には、パラ神奈川SC(現:神奈川VANGUARDS)がよぎった。2023年3月の天皇杯を優勝したチームだ(のちに3連覇達成)。神奈川には2021年東京パラリンピック銀メダルに貢献した鳥海連志、古澤拓也らが所属していた。鳥海とは世界選手権をともに戦い、刺激を受けていた。

 

 将斗は世界選手権後の秋、再びU-23日本代表合宿に招集された。ハイパフォーマンス日本代表(年齢制限のないフル代表)も同じ施設で合宿中だった。ここで古澤と話す機会があった。

 

「この時、古澤選手に“神奈川に入りたい”と言ったんです。おそらく、古澤選手がこの話をチームにしてくれた」。会話が言霊となり、彼は高校卒業後、VANGUARDSに入団した。

 

 入団時には、鳥海、古澤、髙柗義伸ら代表組が所属していた。VANGUARDSは天皇杯を3連覇した強豪チームである。だが、鳥海と髙柗は2025年に、古澤は2026年1月に海外へと移籍していた。

 

 将斗は語った。

「他のチームは、“いまのVANGUARDSなら勝てるかも”と思っているはず。それはすごく悔しいので、3月に始まる天皇杯は守り切りたい。4連覇を達成したいです」

 このインタビューは、横浜市内のカフェで行なった。隣の席の女性が「車いすバスケットの選手ですか?」と声をかけてきて、涙ぐみながら続けた。

「私は脳性麻痺で半身不随になった。車いすバスケットをやられているなんて、すごいです。頑張ってください。ぜひ握手をしていただければ」

 

 彼女が店を出たあと、将斗はこう言った。

「車いすバスケットボールをやっていてよかった。もっと頑張らないといけないですね」

 

(おわり)

 

渡辺将斗(わたなべ・まさと)プロフィール>

2004年5月20日、愛媛県生まれ。幼少期に維性骨異形成症を発症。2020年4月、愛媛県立松山北高校に入学。同年、車いすバスケットボールクラブ・愛媛WBCに入団。高校3年時、U-23日本代表世界選手権メンバーに最年少で選出され、世界一を経験した。2023年、神奈川VANGUARDSに加入。同年4月、桐蔭横浜大学に入学(スポーツ科学部)。2025年U-23日本代表世界選手権メンバーに選出された。チームでの背番号は「24」。ポジションはセンター。

 

(文・写真/大木雄貴、競技写真提供/神奈川VANGUARDS)

 

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