勝者に自信 敗者に失意「4-0」の衝撃

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 実質20歳以下のチームでU-23アジア杯に挑んでいた日本が、決勝で中国を4-0で下して2連覇を達成した。見事な優勝だった。

 

 試合前、無失点で決勝まで勝ち進んできた中国の鼻息は荒かった。彼らが準決勝で快勝したベトナムよりも日本の方が与しやすし、という声まであった。それだけに、惨敗のショックは相当なものがあったようだ。

 

 衝撃の大きさをわかりやすく教えてくれたのは、中国・プチェ監督のコメントだった。試合後、彼は大会の最優秀GKに日本の荒木が選ばれたことに異議を唱えた。準決勝まで素晴らしいプレーを連発した中国の李昊(リーハオ)が選ばれなかったのは「不公平」だというのだ。

 

 正直、気持ちはわかる。確かに李昊は素晴らしかったし、わたしが選考する側であれば、彼か荒木か、大いに悩んだことだろう。いや、日本にPKが与えられた際の非紳士的な行為がなければ、むしろ李昊を選んでいたかもしれない。本人はPKの際の暴言で有名なアルゼンチンのマルティネスを気取ったつもりだろうが、所詮はまがい物にすぎなかった。

 

 さて、それはさておき、プチェ監督はスペイン人である。当然、“サモラ賞”の存在は知っているはず。このスペインにおける年間最優秀GK賞ともいえる賞が、選考者の主観ではなく、失点の数によって決定されることも知っているはず。つまり、母国の基準に則れば荒木しかありえない選考結果に対し、プチェ監督は「不公平だ」と訴えたのである。

 

 無理筋であることは、本人が一番よくわかっているはずだ。

 

 だが、そうまでしてでも、彼は後に残るもの、チームや選手の支えになるものがほしかったのだろう。0-4という結果がもたらした衝撃の大きさが、はっきりとうかがえる。

 

 確かに、サッカーにおける4点差は、それまで積み上げてきたものすべてを吹き飛ばしてしまうほどに大きい。99年、“黄金世代”と呼ばれた20歳以下日本代表は、日本男子サッカー史上初にしていまだ唯一となるワールドユース(現U-20W杯)決勝進出を決めた。

 

 いまでも思うのだが、決勝のスコアが違っていれば、少なくとも2点差ぐらいで収まっていれば、日本サッカーの進化の足どりはまた違ったものになっていたかもしれない。だが、スペインに0-4と粉砕されたことで、決勝進出の喜びやそれまでに掴んだ自信、手応えは相当部分破壊されてしまった。結果、彼らの世代は、ベスト8止まりではあったものの、スペインと1-2という互角の戦いを演じた中田英寿たちの世代を、ついに超えられなかった。

 

 純粋に個々のポテンシャルのみを比較した場合、上回っていたのは、“黄金世代”だとわたしは思う。彼らに欠けていたのは、中田英寿にあった自信、世界の頂点を現実的な目標としてとらえる視点だった。そして、彼らがそうした視座を持ち得なかった理由の一つが、0-4にあった気がする。

 

 自信の厚み、志の高さは、ひょっとすると才能や運以上に選手の未来を左右する。

 

 中国との決勝戦で2点をあげた小倉は、関東大学リーグの2部にいた法大の学生である。関東2部であっても、世界を目指す選手がいて、それを嘲笑しないどころか、錆びさせない環境が、いまの日本にはある、ということだ。これは、世界的にみても稀有な状況だと言っていい。

 

 U-23アジア杯については、もう少し触れておきたいことがある。続きは来週、ということで。

 

<この原稿は26年1月29日付「スポ-ツニッポン」に掲載されています>

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