トレイ・ヒルマン、梨田昌孝、栗山英樹。フロント主導人事で、三代続けて優勝監督を輩出するのだから、北海道日本ハムは進歩的な球団である。
 指導経験のない栗山を、いきなり監督に据えたのも、フロント力に確固たる自信があったからだろう。

 栗山本人が、こう語っていた。
「ここはフロント主導型の球団。僕がキャスターをやっていた頃、そういう方向がプロ野球界に望ましいと伝えてきました。この球団なら、僕にもやれることがあるのではないか……。そう考えると(就任の決断は)むずかしくはなかったですね」

 かつて日本ハムでGMとして活躍した高田繁(現横浜DeNAGM)から、こんな話を聞いたことがある。
「日本ハムは高いおカネを出してFAで選手を獲得しようなどとは全く考えていない球団。ファームで選手を一から育てようということであればスカウトシステムを充実させるしかない。

 しかも日本ハムは一軍が札幌で二軍が千葉の鎌ケ谷と分かれている。距離が離れているためスタッフたちの連絡を密にしておかなければならなかった」
 今季、日本ハムの年俸総額は約21億7000万円で、12球団では6位である。それでいて順位は06年の日本一(リーグ1位)以降、1位、3位、1位、4位、2位、そして1位。Bクラスはわずかに一度だけだ。
 これだけ安定した成績を残せるのは、フロントがしっかりしているからに他ならない。

 前年まで4年間にわたって指揮を執った梨田は、日本ハムの強さの背景をこう語っていた。
「この先、チームをどうすべきかビジョンが明確です。二軍の育成環境も相当な投資をして、選手を伸ばすためにどう実戦で使うかまでプランを決めている。その前に監督をしていた近鉄とは大違いでしたよ(笑)」

 指揮官にコーチ人事やドラフト指名まで委ねる球団が未だにあるが、それは“昭和の野球”である。北海道に移転して8年、日本ハムは今や、この国のリーディングチームである。

<この原稿は2012年10月22日号の『週刊大衆』に掲載されたものです>

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