真っ白な美術館は、心のアルバムを象徴? ~Yuzuru Hanyu “REALIVE” an ICE STORY project~
プロフィギュアスケーターの羽生結弦が総指揮を執り、出演する単独公演「Yuzuru Hanyu “REALIVE” an ICE STORY project」が11日、宮城県利府町のセキスイハイムスーパーアリーナで幕を開けた。公演は2部制となっている。羽生は第1部でMass Destruction-Reload-など6曲(SEIMEIのコレオシークエンス部分を含めると7曲)を披露した。第2部では今後、開催予定(時期は未発表)のICE STORY 4thの前日譚(たん)となる「PREQUEL(プリクエル):Before the WHITE」(アニメーション含む全10曲)を演じ、会場に詰めかけた7000人とCS放送視聴者を魅了した。今回の単独公演は12日が千秋楽となる。

画像提供:REALIVE広報事務局
羽生は、第2部「プリクエル」で上下白の衣装に、黒のシースルーのロングカーディガンを身にまとった。「プリクエル」は、羽生の氷上でのパフォーマンスと、会場スクリーンに映し出されたアニメーションで物語が概ね進行していく。2部で使用された全10曲は原摩利彦(大ヒット映画「国宝」の音楽担当、主題歌制作)による作曲だ。
スクリーンには大きくひび割れた惑星、もしくは月のようなものが映し出された。羽生は氷上で、ムーンウォークのような動きを見せた。
アニメーションには羽生と似た衣装を着た少年が登場した。氷上の羽生にスポットライトが当たるのだが、影は羽生本人の影ではなく、スクリーンに映し出される少年のかたちをした影だった。羽生は、アニメーションに出てくる少年を演じていることを観客や視聴者に伝えるような演出だった。
少年が存在する世界は、歩いても歩いても荒れ果てた大地しかなかった。そんな世界にひとりぼっち。寂しさを紛らわせるためには眠るしかない。少年が地面に突っ伏していると、クリスタルのかたちをした可愛らしい小さなキャラクターが登場した。
少年は、そのキャラクターから“温かみのある光”を受け取った。荒れ果てた荒野には水が走り、緑や木々が生えた。少年が存在する世界は、彩に満ち溢れた。氷上の羽生は、手足をうんと伸ばし楽しそうな様子を表現した。その直後、全身が脈打っているようなそぶりを見せた。
少年の少し前を例のキャラクターが歩く。まるで、少年の先導役を買って出たように。ふたりは楽しそうに水中などの世界を探検した。階段を一歩ずつのぼる。小さな歩幅でも着実に、懸命にのぼる。成長の階段を、のぼる。
ふたりは水中にいたはずだが、その階段は、宇宙へとつながっていた。宇宙でも、クリスタルを模したキャラクターは少年の前をいった。しかし、そのキャラクターは何かに衝突し、粉々に割れてしまった。成長し、やがて感情が芽生えると楽しいことだけでなく、つらいことも認識できてしまう。そう教えてくれているようだった。
大切な存在を失った少年役の羽生は、ショックのあまり倒れ込んだ。羽生のナレーションが入った。
「落ちている。世界が終わっていく。世界がはじまっていく。落下の感覚が消える。体の痛みも重さも全て消える。白。辿り着いた世界の底。音もなく、色もない。心の痛みだけがわずかな輪郭を保っていた。ゆっくりと世界に目を凝らす。そこには美術館があった……」
すると、スクリーンには真っ白な美術館が映った。館内も真っ白のようだった。さらに間を置き、画面には<To be continued ICE STORY 4th WHITE…>の文字。観客の大歓声が会場に響いた。
初日公演後、羽生は今回の第2部「PREQUEL(プリクエル):Before the WHITE」について、こう説明した。
「プリクエルはICE STORY4thをやるぞ、という事をまず念頭におきながら4thに向けての期待感を持っていただけるような、ワクワクできるようなものを何かしらひとつ創りたいと頑張りました。主人公がモノクロの世界から徐々に外の世界の彩を知っていく。いろんな出会いや、いろんな旅路の中で段々と外の世界を知っていって、いろんな感情が芽生えてくるみたいなストーリーにしたつもりです」
クリスタルのかたちをしたキャラクターについて「あの子は希望の権化なのか、主人公が外の世界を知るための水先案内人なのか、何なのか」と問うと、羽生は「どこまで言うか、ちょっと悩むんですよねぇ」と笑い、続けた。
「どういうふうに見えてほしいなぁ、と自分の中ではあるんですけども、それを言っちゃう事によって(観る人の想像を)狭めちゃうのもなぁというのもありつつ……。それぞれの大切な人であったり、大切なものであったり、大切な出会い、みたいな感覚であの子を見ていただけたらうれしいなぁと思います」
あのキャラクターは、観る人によって変わるのだろう。仲間だったり、真剣に取り組んだスポーツだったり、恋愛だったり、応援し甲斐のある人物と出会いだったりするのではないか。人生や心に彩を与えてくれる何か――。そして、それらは人々の成長へとつながるのだろう。
あの可愛らしいキャラクターがそれらの権化だとするならば、真っ白な美術館は、心のアルバムを象徴しているのかもしれない。どんな彩になるのか、「ICE STORY 4th WHITE…」に注目したい。
(文/大木雄貴)
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