日本代表「中村俊輔コーチ」への期待

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 長年、日本代表の「10番」を背負った中村俊輔が日本代表コーチに就任した。6月に開幕する北中米ワールドカップを控える日本代表にとって、大きな“戦力補強”になることは言うまでもない。

 

 中村はJFAを通じて、こうコメントしている。

「ワールドカップ本大会を目前に控えた重要な時期に自身が加わることによる影響について慎重に考えましたが、森保監督から熱く力強いお言葉をいただき、お引き受けする決意をいたしました。世界で戦う日本代表選手たちと志を同じにし、チームが掲げる目標の達成に貢献できるよう努めてまいります」

 

 彼は昨季限りで3シーズン務めた横浜FCのコーチを退任し、今年は指導者として勉強していく1年にするつもりだった。海外研修に行くことも考えていた。本人からそのことを聞いていただけに、このタイミングでの日本代表のコーチングスタッフ入りには正直驚かされた。森保一監督の「熱く力強い言葉」を聞き、力になりたいと思ったのだろう。

 

 日本代表は名波浩(攻撃)、齊藤俊秀(守備)、前田遼一(セットプレー)、長谷部誠(主に守備)、松本良一(フィジカル)、下田崇(GK)がコーチとしてチームを支えており、それぞれ担当制になっているのが森保ジャパン2期目の特徴である。中村はPK担当になるとのことだが、おそらくFKや攻撃など全般的にかかわってくるはず。そういう意味では長谷部に近い役回りになってくるのではないだろうか。

 

 森保監督はなぜ中村を呼び入れたかったのか――。

 

 日本代表の司令塔として活躍したその知見や戦術眼、そして希代のプレースキッカーとしてFK、CK、PKにおいてその経験値を必要としていることは言うまでもない。ただ、そればかりではない気がしている。

 

 コーチ陣のなかで選手としてワールドカップを経験しているのは名波、齊藤、長谷部、そして中村の4人。1998年フランス大会のメンバーである名波はレギュラーであり、逆に齊藤はバックアッパーとして出場機会はなかった。長谷部は2010年の南アフリカ大会、14年のブラジル大会、18年のロシア大会をキャプテンかつレギュラーとして引っ張っている。

 

 中村はこの3人とまた違う経験を持っている。

 

 2006年のドイツ大会では中心選手としてプレーしながらも、次の南アフリカでは大会直前でレギュラーから外された。「心に大ケガを負った」とのちに、そう明かしてくれたことがある。

 

「調子が上がらなかったことは事実だし、(起用は)監督が判断すること。自分に対して不甲斐ないっていう気持ちと、チーム内における立場も違ってきて絶望感しかなかったですね」

 

 しかし絶望するだけで終わるストーリーではなかった。必死にモチベーションを引き上げようとし、チームへの貢献を彼なりに行動に移していった。

 

 中村は言った。

「それでも何とか粘ろう、と。全体練習後に、ほかのサブメンバーと一緒に時間が許す限り、自分のトレーニングをして、試合になったらスタメンで出ている選手を鼓舞していこうって。チームが一つになるとこうなるんだと、ピッチで活躍して経験できれば一番良かったけど、スタメンじゃない立場であっても経験できたのは大きかったと思います。宿舎に戻って1人になるとまた苦しい気持ちが出てきたりするけど、年長者の(川口)能活さんが部屋に来てくれて励ましてくれたりもした。能活さんはじめチームメイトに助けられたところも凄くある。中国で優勝したアジアカップのときに、マツさん(松田直樹)やアツさん(三浦淳宏)たち控えにいた先輩たちがタオルや水を持ってくれたり、チームを盛り上げたりしてくれた。代表というのはただ、呼ばれました、ただ、いいプレーしましたっていう場所じゃない。受け継いでいくものだし、(南アフリカのときは)それを試されているのかなっていう感じも自分のなかにはありました」

 

 北中米ワールドカップに臨む日本代表メンバーは26人。スタメン、サブの括りなく、全員の力を結集しなければ「最高の景色」に近づいていくことはできない。

 

 チームはケガなどもあってメンバーを入れ替えながら戦ってきた。これまでスタメンで多く出ている選手も、スタートではサブに回るケースだってあるだろう。そういった状況においても自分の経験からアドバイスできるコーチがいるというわけだ。欧州組が大半のメンバー構成では、長谷部と同じく長年欧州でプレーしてきた経験も頼りにされるに違いない。

 

 中村俊輔コーチの入閣は、なかなかの妙手である。

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