第20回「なぜブカツを研究したか!?」ゲスト トーマス・ブラックウッド氏

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二宮清純: 今回のゲストは、東京国際大学教授で社会学者のトーマス・ブラックウッドさんです。

トーマス・ブラックウッド: 本日はよろしくお願いいたします。

 

二宮: ブラックウッドさんは、日本の部活動を研究されているそうですが、そもそも来日したのは、何歳の時でしょうか?

ブラックウッド: 1986年、高校生の時に短期留学で千葉の八千代東高校に入りました。わずか7週間でした。

 

伊藤清隆: では、日本の部活動の研究を始められたきっかけは?

ブラックウッド: 最初に興味を持ったのは、高校生の時です。ちょうど高校野球の夏の千葉県予選が行なわれていた。野球場の近くを友人と歩いていると、すごい歓声と吹奏楽部の音楽が聞こえてきた。「これは何?」と友人に聞くと「高校野球の県大会だよ」と。2、3週間もすると甲子園がスタートしました。その時期にデパートや電器店、ラーメン屋に行くと、朝から晩まで甲子園の中継が流れていた。タクシーに乗れば、車内でラジオの野球中継が流れてくる。どこに行っても、高校野球が追いかけてくるような状況でした。

 

伊藤: なぜ日本では高校野球に人気があるのか、と興味を持つようになったんですね。

ブラックウッド: はい。ただ当時はまだ高校生でしたから、研究しようとまでは思いませんでした。大学卒業後、2年間、茨城の高校に英語教師として赴任しました。その時に一番礼儀が正しくて、挨拶がしっかりできる子たちが、野球部員だった。それに関心を持ち、野球部の監督さんに聞くと、「高校野球は教育の一環で、人間形成の場だから」と言われた。大学院では社会学を専攻していたので、教室以外で行なわれている教育について学ぼうと思ったんです。

 

二宮: ブラックウッドさんの生まれたアメリカでは、ハイスクールのスポーツにあれだけ熱狂するのは珍しいでしょう?

ブラックウッド: ハイスクールスポーツであそこまでの熱狂を、私は感じたことがない。アメリカの国土は広いですから、場所によってはバスケットボールやアメリカンフットボールが盛り上がっているところもあるでしょう。ただ全国的な盛り上がりを見せているとまでは言えない。全国大会自体はありますが、日本の甲子園ほどの熱量は感じませんでした。

 

二宮: 研究していくうちに、日本の部活動の意義に確信を持つようになった、と?

ブラックウッド: そうですね。アメリカの高校スポーツの監督さんも同様なことを言う。ただ、それは個人個人の考えにとどまっている。日本は高校野球連盟(高野連)、全国高等学校体育連盟(高体連)全体でそういう考えを持ち、ルールづくりをしています。最初に調査したのは、高校球児は野球部で何を学び、それがその後の人生にどう役立っているのか、という点でした。その10年後には、全国の野球部に限らず、他の部活に入っている学生、部活に入っていない学生を対象にアンケートを採り、比較しました。それにより、礼儀、挨拶、感謝の気持ち、友人を大事にすること、先輩に対する敬語、異性の友人などは、部活動を通して習得していることが分かりました。

 

女子マネージャーという存在

伊藤: 部活動は人間関係を構築する場でもありますね。

ブラックウッド: データを集めたことで部活動の見方が変わりました。監督さんたちが言っていた「教育の一環」「人間形成の場」という言葉が建前ではない、と。部活動、特に運動部においては、試合に勝つことだけがすべてじゃないんです。人間形成につながっているということが、データで裏付けられました。

 

二宮: ブラックウッドさんがおっしゃるように部活動には人間形成の場という側面がある。リーフラスでは部活動の地域展開に力を入れていますが、共感できる部分が多いのでは?

伊藤: はい。当社は中学校の部活動のほか、小学生以下のスポーツスクールを運営しています。スポーツが持つ力で、人間力を高めることができる。礼儀や挨拶を学ぶだけでなく、協調性やリーダーシップ、コミュニケーション能力が養えます。それについて我々は実証実験をし、学会で発表させていただきました。

 

二宮: さきほど文化部もというお話でしたが、吹奏楽部なども調べられたのでしょうか?

ブラックウッド: 文化部も含め、多様性に富んでいるんです。その中でも吹奏楽部は体育会系に近い部活動と言えると思います。ある学校の吹奏楽部員に話を聞くと、「陸上部よりも走らされる」と。肺活量が必要になるため、心肺機能を鍛えるんです。ただ文化部全体を見ると、運動部に比べ、「子どもたちが楽しければいい」「自分を表現できるようになればいい」という考えの顧問が多い。運動部と文化部とでは目的、目標が少し異なるのでは、と感じています。

 

二宮: ブラックウッドさんは、女子マネージャーについても研究されたそうですね。

ブラックウッド: 私はアメリカと日本しか知りませんが、アメリカにこの制度はありません。これは日本独特の文化だと思います。付け加えれば、男子チームの中に女子マネージャーはいますが、女子チームの中の男子マネージャーは聞いたことがない。それに誰かにやれと言われているわけではなく、自主的に入部しているのも興味深い点でした。

 

伊藤: 部活動によって女子マネージャーの有無はありますが、野球部には確かに多い気がしますね。今、ブラックウッドさんがおっしゃったように本人が選んで入部している。マネージャーの経験が評価され、大学推薦の内申に響くこともあるようです。

二宮: マネジメント能力や人間関係の築き方などが評価されるんでしょうね。

ブラックウッド: 何かを頼まれなくても自ら動く子が多い。ある日、私が靴を磨いている女子マネージャーを見かけたので「誰の靴を磨いているんですか?」と聞くと「わかりません」と答えた。誰かに磨けと言われたわけではないんです。それでも自ら動き、行動していました。

 

部活動の教育的役割

二宮: 日本では部活動の地域展開が進んでいます。これに関しての、ブラックウッドさんのお考えは?

ブラックウッド: 部活動の地域展開で危惧しているのは、格差が生じてしまうのではないかということです。今は低額で部活動に参加できていますが、地域移行で民間企業に部活動指導が渡ることによって、指導員に支払う金額を誰が負担するのか。それによって不公平が生まれないか。もうひとつは地方の人口が減少している中、専門性の高い指導員を集めにくいという点でも地域格差が生まれるかもしれない。

 

二宮: これまで教育的役割を果たしていた部活動が地域展開によって、変わってしまうことを危惧されているわけですね。その点について伊藤さんは、どうお考えですか?

伊藤: 結論から言うと、当社であれば大丈夫です。なぜなら、当社は教育的な観点からスポーツを指導しているからです。

 

二宮: 具体的には、どのようなことを?

伊藤: 当社は指導員の研修プログラムを組んでおりまして、そこをクリアした人でなければ指導員になれません。我々が管理・監督をしていき、問題が見つかれば再検証する。現在は中学校の部活動が対象ですから、中学生の特徴や行動心理など最低限のことを学んだ上で、子どもへの言葉遣い、接し方を身に付けてから指導を任せています。

 

二宮: ただ技術を教えるだけではない、ということですね。

伊藤: 学校の先生方が危惧されているのは、技術指導だけになってしまわないかということ。当社はスポーツスクール事業にも取り組んできましたし、非認知能力を身に付けるにはスポーツが最高に優れた教材だと考えています。これを当社は25年間もやってきた。そうしたノウハウの蓄積があるので、自信を持っています。

 

二宮: ブラックウッドさんも民間の事業者を研究されてみてもいいかもしれませんね。

ブラックウッド: そうですね。ただ研究させてくれると企業、団体と、そうじゃないところもあると思います。リーフラスさんのように自信があるところはOKを出してくれるかもしれませんが、逆にしっかりしていないところは受けてくれないのではという心配もあります。

伊藤: ぜひ、弊社の取り組みをご覧になってみてください! お待ちしております。

 

トーマス・ブラックウッド(とーます・ぶらっくうっど)プロフィール>

1969年、アメリカ出身。シカゴ大学(東アジア研究学 学士)、ミシガン大学(日本研究 修士)を経て、2005年、ミシガン大学にて博士号(社会学博士)取得。専門は教育社会学。日本の高等学校における課外活動、いわゆる「部活」の教育的役割について20年以上にわたり研究を行なっている。2008年から2012年まで東京大学社会科学研究所の准教授、2012年から2014年まで「MITジャパンプログラム」(マサチューセッツ工科大学の学生を対象とした日本の企業・研究所へのインターンシップ)のプログラム・マネージャーを務めた。現在は東京国際大学教授。学術雑誌『Social Science Japan Journal』および『Japan Forum』 の国際編集委員を務めている。

 

伊藤清隆(いとう・きよたか)プロフィール>

1963年、愛知県出身。琉球大学教育学部卒。2001年、スポーツ&ソーシャルビジネスにより、社会課題の永続的解決を目指すリーフラス株式会社を設立し、代表取締役に就任(現職)。創業時より、スポーツ指導にありがちな体罰や暴言、非科学的指導など、所謂「スポーツ根性主義」を否定。非認知能力の向上をはかる「認めて、褒めて、励まし、勇気づける」指導と部活動改革の重要性を提唱。子ども向けスポーツスクール会員数、スクール数ともに4年連続国内No.1、部活動受託校数は2年連続国内No.1、支援部活動数も国内No.1(※1)の実績を誇る(2025年12月現在)。2025年10月、日本のスポーツ企業として初めてNASDAQに上場を果たす。社外活動として、スポーツ産業推進協議会代表者、経済産業省 地域×スポーツクラブ産業研究会委員、日本民間教育協議会正会員、一般社団法人日本経済団体連合会 教育・大学改革推進委員ほか。

 

二宮清純(にのみや・せいじゅん)プロフィール>

1960年、愛媛県出身。明治大学大学院博士後期課程修了・博士(学術)。株式会社スポーツコミュニケーションズ代表取締役。広島大学特別招聘教授。大正大学地域構想研究所客員教授。経済産業省「地域×スポーツクラブ産業研究会」委員。認定NPO法人健康都市活動支援機構理事。『スポーツ名勝負物語』(講談社現代新書)『勝者の思考法』(PHP新書)『プロ野球“衝撃の昭和史”』(文春新書)『変われない組織は亡びる』(河野太郎議員との共著・祥伝社新書)『歩を「と金」に変える人材活用術』(羽生善治氏との共著・廣済堂出版)、『森保一の決める技法』(幻冬舎新書)など著者多数。

 

 

※1

*スポーツスクール会員数4年連続 国内No.1

・スポーツ施設を保有しない子ども向けスポーツスクール企業売上高上位3社の会員数で比較

・会員数の定義として、会員が同種目・異種目に関わらず、複数のスクールに通う場合はスクール数と同数とする。

*スポーツスクールスクール数4年連続 国内No.1

・スポーツ施設を保有しない子ども向けスポーツスクール企業売上高上位3社のスクール数で比較

・キッズ・小学生で分かれている場合は、それぞれを1スクールとする。

*部活動受託校数2年連続 国内No.1

・部活動支援事業売上高上位3社の2025年の受託校数を比較

*支援部活動数 国内No.1

・部活動支援事業売上高上位3社の2025年の支援部活動数を比較

株式会社 東京商工リサーチ調べ 2025年12月時点

 

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リーフラス株式会社

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サッカー、野球、バスケットボール、ダンスなどのスポーツスクール事業を展開している リーフラス株式会社とのタイアップコーナーです。 日本のスポーツ、教育の現場における様々な社会課題解決に取り組む同社代表取締役の伊藤清隆氏が、 スポーツ界の有識者やご意見番をゲストに迎え、スポーツの未来を展望します。 司会進行は当HP編集長・二宮清純が務めます。

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