秋春制初年度となるJリーグの行方を読む
秋春制に移行するJリーグの新シーズンがいよいよ開幕する。
J1は8月7日にスタートして6月6日に最終節を迎えるスケジュールとなる。厳密に言えば“夏夏制”となるものの、12月中旬から約2カ月間ウインターブレイクを設けられるのが大きな特徴。秋から春にかけて開催されるACLの戦いや、欧州のカレンダーにも沿う形となる。
秋春制によって、どのような変化が起こるのか――。
2カ月間のウインターブレイクでチームをいかにもうひと伸びさせられるかどうかが、大きなカギを握るだろう。これまでは最後までもつれる「戦国J1」がほかのリーグにはなかなかない魅力であったが、資金力やクラブ力のあるチームがテコ入れして成績に反映させていきやすい環境となってくる。欧州とカレンダーが重なることで日本人選手が欧州に飛び出していく流れは加速する一方、欧州から選手を獲得するハードルも下がるはず。選手を引き抜かれようとも移籍金を有効活用して戦力を維持、いや逆にアップできるクラブが主役になってくるに違いない。過密日程を乗り切っていくには層の厚さも求められる。
かつこれまではACLが重なると疲弊が強まってJリーグの戦いに影響が出てしまうケースはよくあった。だがウインターブレイクが入ることで、後半戦に向けてネジの巻き直しができる。“二兎”を追いやすくなったとも言える。
あくまで筆者の個人的な見解ではあるが、J1勢の戦力面で充実ぶりを示しているのはJ1百年構想リーグ覇者のヴィッセル神戸を筆頭に鹿島アントラーズ、FC町田ゼルビア、サンフレッチェ広島の4クラブだろうか。神戸、鹿島はACLエリートに、町田はACL2に参戦する。
陣容を見ても、ミヒャエル・スキッベ監督率いる神戸と鬼木達監督率いる鹿島はしっかりとメンバーをそろえてきた。神戸は2023、24年シーズン得点王のアンデルソン・ロペスを、そして中盤に厚みを加えるために渡辺皓太を、補強ポイントだったサイドバックに髙橋壱晟を加えた。
25年シーズン覇者の鹿島は荒木遼太郎、濃野公人、知念慶ら主力が抜けたとはいえ、ヤン・マテウス、マテウス・ブエノ、広瀬陸斗と実績のある実力者を呼び入れた。特に清水エスパルスで評価を爆上げしていたマテウス・ブエノは鹿島の戦力をさらに引き上げることになるだろう。
東西の2強が優勝争いの軸になるだろうが、筆者が推したいのは広島である。
ドイツ人指揮官のバルトシュ・ガウル監督を迎え、百年構想リーグではハイプレスなど組織的な守備に磨きを掛けつつ、攻撃のバリエーションを増やして終盤戦は5連勝を飾った。オフの補強についてもインパクトは随一。カタールワールドカップで活躍した浅野拓磨、欧州ではケガに泣かされた川村拓夢の復帰に加えてコートジボワール代表として34試合11得点の実績を誇り、アヤックス時代にはリーグ得点王に輝いたストライカーのセバスティアン・アレーを獲得した。そして欧州移籍が取り沙汰された日本代表GK大迫敬介の現時点での残留も大きい。移籍期間は8月いっぱいまであり、冬を含めて近い将来欧州に飛び出していく可能性はあるにせよ、大迫が抜けることを想定しながら準備できるとも言える。
次世代のスター候補として20歳のファンタジスタ、中島洋太朗が輝きを放つシーズンになるのではないだろうか。中村草太が抜けたとはいえ浅野、アレーのみならず鈴木章斗、加藤陸次樹、前田直輝ら前線のタレントがそろっているだけに、タクトを振る中島のテクニックやアイデアが存分に活かされるような予感がする。
広島は若手、中堅のみならず、37歳の塩谷司、36歳の佐々木翔もまだまだ元気だ。2015年のリーグ制覇を知るベテランがいて、青山敏弘、林卓人ら優勝経験者がコーチとして支えている。クラブの総合力やチームの伸びしろを考慮しても、今シーズンの主役に躍り出る可能性は十分にある。
リーグ初制覇を目指す町田も、的確な補強をした。ポリバレント性を発揮する明本考浩、スピードスターの松尾佑介とチームのスタイルに合致した選手を獲得できた。百年構想リーグは全体5位にとどまるも、天皇杯制覇、ACLエリート準優勝と着実に力をつけている。安定した戦い方と戦力アップによって優勝争いにも顔を出してくるだろう。
北中米ワールドカップが終わり、ロスオリンピック世代をはじめとする新たなスター誕生が期待される。先に挙げた中島、川崎フロンターレの大関友翔、セレッソ大阪の横山夢樹、V・ファーレン長崎に移籍した保田堅心ら若手の飛躍がJリーグを盛り上げることにもつながる。
秋春制初年度のJリーグ、一体どんなドラマが待ち受けているだろうか――。