第326回 大相撲地方巡業減少の功と罪

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 名古屋場所開催中に、地方巡業の責任者である高田川巡業部長(元関脇・安芸乃島)は、来年の夏から、年間の巡業日数を「90日間から70何日間にしていく」と明言した。力士の負担軽減が狙いだ。

 

 大相撲の世界では、十両以上の力士を「関取」と呼ぶ。ざっと数えて関取は本場所の90日間(年6場所✕15日)と巡業(春・夏・秋・冬)の約90日間の、計約180日間を日本相撲協会に拘束されている。

 

 多くの関取から、「これではケガを治す時間もない」と不満の声が出ていた。協会はそれを斟酌したのだろう。

 

 上位陣を見れば、ケガ人ばかりだ。横綱の大の里は、昨年の九州場所で痛めた左肩の状態が、未だに思わしくない。同じく横綱の豊昇龍は、先の名古屋場所、右足を痛め、14日目から休場した。その名古屋場所を制し、大関への返り咲きを決めた安青錦も両足首に爆弾を抱えている。

 

 

 

「土俵のケガは土俵で治せ」とは、“土俵の鬼”と呼ばれた初代若乃花の名言だが、目下、幕内の平均体重は160キロ前後。力士の重量化に伴い、ケガの重症化と慢性化が進み、回復までには、より多くの時間がかかるようになってきた。初代若乃花の力士魂には頭が下がるが、「土俵のケガ」は「病院で治す」のが筋だろう。

 

 一方で、地方巡業の減少は、少々、寂しくもある。というのも、本場所をナマで見られるのは、東京、名古屋、大阪、福岡に住む人、あるいはその近辺の人に限られ、地方に住む人々が力士と触れ合えるのは巡業くらいのものである。

 

 かつて、巡業部長の任にあった元尾車親方の琴風さんは、「おじいちゃん、おばあちゃんが、ざぶとんを抱えて会場の外で待ってくれていた風景が忘れられない」と懐かしそうに語っていた。禁じ手をコミカルに演じる“しょっきり”は、巡業ならではの相撲文化だ。

 

 とはいえ、力士ファーストの視点で考えれば、巡業日数の減少は止むをえまい。これも時代の流れか……。

 

<この原稿は『週刊大衆』2026年8月31日号に掲載されました>

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