第327回 拓真「返り討ち」 天心「リベンジ」
10カ月ぶりの再戦は、どちらに軍配が上がるのか。
WBC世界バンタム級王者の井上拓真に、同級1位で、キックボクシングの世界で無敵を誇った那須川天心が挑む世界戦は、9月27日、トヨタアリーナ東京で行なわれる。
王座決定戦として行なわれた前回は、拓真の完勝だった。1、2回こそ天心にポイントを奪われたが、3回から戦い方をガラリと変えた。
中間距離での戦いは不利と判断した拓真は、足を止め、接近戦に持ち込んだ。これが功を奏した。至近距離での打ち合いは拓真に一日の長があった。結果は3対0の判定勝ち。リング上で土下座までした天心は「経験の差が出た」と言って唇を噛んだ。
しかし、天心も同じ轍は踏むまい。4月のWBC世界同級挑戦者決定戦では、元2階級制覇王者ファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)を9回TKOで退け、パワーが増したことを証明した。
「預けたものを、利子をつけて持ち返る」
いつもの“天心節”で、リベンジを誓った。
井上拓真も負けていない。
「完封して返り討ちにする」
世界4階級制覇のレジェンド井岡一翔を迎えての5月の防衛戦では、2回と3回にダウンを奪い、大差の判定勝ちを収めた。
井岡は37歳とはいえ、日本ボクシング界のマエストロである。計算されつくした理詰めのボクシングは他の追随を許さない。
拓真は、その井岡に全くボクシングをさせなかった。スピードで圧倒し、技術戦でも勝利し、ほぼ全てのラウンドをコントロールし続けた。
正直言って、ここまでワンサイドの展開になるとは想像していなかった。拓真の底力を見る思いがした。
ところで、リターンマッチという言葉には、どこか甘美な響きがある。もっとも、これはあくまでもチャレンジャーサイドの言葉であり、チャンピオンの側からすれば、防衛戦のひとつに過ぎない。
返り討ちにすることで格の違いを満天下に知らしめたい拓真。一方、天心からすれば、さすがに同じ相手に2度続けて負けるわけにはいかない。互いの火花が散ることで、前回以上の好勝負が期待できる。
さて予想だが、どちらが勝っても判定までいくのではないか。拓真の対戦成績は24戦22勝(5KO)2敗。天心は9戦8勝(3KO)1敗。両者ともKO負けが1度もない。
バンタム級は、日本人にとってはファイティング原田以来の由緒ある階級。新たなる伝説は生まれるのか――。
<この原稿は『週刊漫画ゴラク』2026年9月4日号に掲載されました>