ゴールデンウィークの連戦を終えて10勝4敗2分けの首位。いいシーズンのスタートを切れました。昨季、連覇を逃した悔しさを主力選手が持ってオフから取り組んできたことが、結果につながっているのでしょう。投打がかみ合い、しっかりとしたゲームができています。
 ピッチャー陣では山口直紘が4勝1敗、防御率1.30とエースらしい働きをみせています。昨季、1年目で10勝をあげ、彼にとっては今季が勝負のシーズンです。本人もその自覚は十分で、オフには約10キロの増量に成功しています。その分、球持ちがよくなり、キレも増しました。ストレートの球速も常時140キロ台が出るようになっています。

 明らかに一段階レベルは上がっているだけに、チームの中心として昨季以上の結果が求められます。常に試合をつくり、成績を残してNPBのスカウトにアピールしてほしいものです。

 一方、もうひとりの柱として考えていた岩根成海は、1勝2敗、防御率3.21。いい時と悪い時がオセロのように交互に出ており、安定感が不足しています。その原因は勝たなければいけないという気持ちが空回りしているから。いい時は問題ないのですが、少しでも悪くなるとマウンド上で焦りが生じています。

 プロとして成功するには、悪い時にどうやってバッターを抑えるかが重要になります。いい時は誰でも抑えて当たり前です。そうではない時に、いかにゲームをつくるか。この方法をみつけることが岩根の課題です。

 僕は現役時代、苦しい時にはまずストライクをとれるボールを投げることを考えていました。また、そういった自信のあるボールを日頃から磨いていたものです。岩根にもストライクをきちんととれる球種がストレート以外にもあるだけに、ちょっともったいなく感じています。5日の福岡ソフトバンク(3軍)戦は、8回1失点で今季初勝利をあげました。これをきっかけに波に乗ってほしいものです。

 現状、3人目の先発ピッチャーは広島から派遣された小松剛に任せています。ドラフト3位で広島入りした右腕だけあって、ボールの質やコントロールはさすがです。ただ、彼はここ2年、1軍での登板がなく、実戦感覚が鈍っています。どうしてもバッターが打席に立つと、力んで自らバランスを崩してしまうのです。そのため四球がリーグワーストの15個を記録しています。

 実力も実績もあるピッチャーですから、このまま実戦で投げていけば、徐々に力みは消えていくでしょう。気持ちのコントロールができればボールのコントロールもできるはずです。NPB1軍でも勝っているピッチャーだけに考え方はしっかりしており、若い選手たちにいい影響を与えています。小松には早くいい時の状態を取り戻して、シーズン途中の支配下選手復帰を狙ってほしいものです。

 ルーキーの福岡一成宍戸勇希はまだまだこれからでしょう。宍戸はゴールデンウィーク中の連戦で先発も経験してもらいましたが、4日は4回途中5失点でKO。ランナーを背負ってからの投球に課題が見えましたね。ランナーを気にするあまり、リズムを崩し、ボールが先行したあげく、ストライクを取りに行ったところを痛打される。本人にとっては苦い登板となったはずです。

 ピッチャーは打たれてピッチングを覚える。僕はそう考えています。だからこそ特に若手にはど真ん中でもいいので、どんどんバッターと勝負してほしいのです。ボール、ボールで歩かせていては何のプラスにもなりません。確かに結果は大事ですが、それだけを追い求めていても上のレベルには到達しないものです。

 まず、バッターとしっかり対決をする。抑えれば自信にすればいいですし、打たれれば反省して、どうやって抑えるかを試行錯誤する。その繰り返しなしにピッチングは磨かれません。福岡と宍戸には、今後もいい意味でどんどん打たれてほしいと感じています。

 野手では開幕前から1番で想定していた吉村旬平がリードオフマンとして打線を引っ張っています。ここまでリーグ10位の打率.317。2試合連続のホームランも放ちました。長内孝コーチの指導の下、しっかりボールを見極め、確実性がアップしました。彼がトップバッターとして機能したことは攻撃面で大きいですね。

 また当初は控えメンバーだった酒井亮がいいアピールをして、ゴールデンウィークからは5番に座るようになりました。主力の活躍のみならず、こういった選手が競争を勝ち抜いてスタメンに名を連ねるのはチームにとっても喜ばしいことです。酒井の頑張りに呼応するようにキャッチャーでも2番手だった小野知久が攻守にいい仕事をしています。

 相手に勝つ前に、チーム内のポジション争いに勝たなくてはならない状況は、必然的に選手の実力を高めます。もちろん、このまま好調が続くとは思っていません。香川も愛媛も高知も必ず巻き返してくるでしょう。

 ただ、選手とは開幕前にひとつ約束したことがあります。それは「目標に向かって最後の最後まで諦めず、全力プレーをすること」です。長いシーズンといっても、公式戦は80試合、半年間だけです。目標を達成するには1分1秒、ワンプレーもおろそかにはできません。野手ならたとえ打てなくても守る。守れない時は打つ。投手なら打たれても次は抑える。これを忘れずに継続していけば確実に自分の身になるはずです。ひいてはお客さんに喜んでいただける結果にもつながるでしょう。

 今のところ、この約束を全選手が徹底できていることが何よりうれしく思います。これからジメジメする梅雨時や、暑い夏場を迎えますが、この気持ちを失うことなく、1年間戦っていく決心です。選手にとっては皆さんの声援が大きな後押しになります。引き続き応援、よろしくお願いします。
  

島田直也(しまだ・なおや)プロフィール>:徳島インディゴソックス監督
1970年3月17日、千葉県出身。常総学院時代には甲子園に春夏連続出場を果たし、夏は準優勝に輝いた。1988年、ドラフト外で日本ハムに入団。92年に大洋に移籍し、プロ初勝利を挙げる。94年には50試合に登板してチーム最多の9勝をあげると、翌年には初の2ケタ勝利をマーク。97年には最優秀中継ぎ投手を受賞し、98年は横浜の38年ぶりの日本一に貢献した。01年にはヤクルトに移籍し、2度目の日本一を経験。03年に近鉄に移籍し、その年限りで現役を引退した。日本ハムの打撃投手を経て、07年よりBCリーグ・信濃の投手コーチに。11年から徳島の投手コーチを経て、12年より監督に就任。
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