第329回 益子直美の提言 怒らない指導を

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 公立中学校の部活動、いわゆるブカツは、生徒全員の入部が義務付けられているわけではない。

 

 学習指導要領には「生徒の自主的・自発的な参加により行なわれるもの」と明記されている。

 

 要するに、やるもやらないも、途中でやめるも、最終的な判断は個人に委ねられなければならない。

 

 しかし、一部には強制的にブカツへの参加を義務付けている学校もあり、顧問となる教職員への負担が深刻な問題となっている。

 

 文科省の調査によると、昔に比べると減少したとはいえ、残業が「過労死ライン」を突破した公立中学の教職員は36%を超えている(令和4年度)。

 

 

 令和の今、さすがに“暴力教師”は少なくなったが、優越的地位を利用しての指導現場でのパワハラは、まだ後を絶たない。

 

 先頃、スポーツ庁と文化庁が中心となって進めている「部活動の地域展開」に関するシンポジウムで、元女子バレーボール日本代表の益子直美さんとご一緒した。

 

 5年前から益子さんは一般社団法人「監督が怒ってはいけない大会」の代表理事を務めている。

 

 益子さんは学生時代、指導者から21発もの往復ビンタをくらったことがある。それにより、2度ほど鼓膜が破れた。今なら立派な傷害事件だが、当時は怖くて言い出せなかったという。

 

 これは女子バレーボールに限った話ではない。程度の差こそあれ、体罰に名を借りた暴力は、スポーツの強豪校ならどこでも存在した。

 

 その意味で、益子さんたちが主催する「監督が怒ってはいけない大会」は、勝利至上主義に骨の髄まで染まった指導者にとっては、さぞや居心地の悪い大会に違いない。

 

 近年の調査では、パワハラ体質の指導者は、自身も学生時代に、体罰を含むパワハラを受けたことのある者が多い、という実態が明らかになっている。自分は、そうした厳しい試練に耐えて成長したという、ある種の成功体験が、体罰の連鎖を生んでいるのだ。

 

 益子さんは「指導者だけじゃなく、保護者の価値観を変える必要がある」とも言う。

「保護者の心ないヤジが、子どもたちの心を傷つけているんです」

 

 近年では、指導者や保護者のパワハラまがいの行為がSNSでさらされ、炎上騒ぎに発展する事案も散見される。

 

 冒頭で中学のブカツのあり方について述べたが、スポーツの入り口でつまずくと、立ち直るのに時間がかかる。おとなは、そこに思いを致さなければならない。

 

<この原稿は『週刊漫画ゴラク』2026年10月2日-9日合併号に掲載されました>

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