26日から始まる日本シリーズは、球団創設9年目で初めてパ・リーグを制した東北楽天と、23度目の日本一を狙う巨人との間で争われる。新興と名門の対決は興趣が尽きない。
 こうした図式の頂上決戦は海の向こうにもあった。12年前のワールドシリーズは球団創設4年目のダイヤモンドバックスと、26回(当時)の世界一を誇るヤンキースの対決になった。米国メディアは次のような見出しで対決をあおった。「OLDvs.NEW」。下馬評はシリーズ3連覇中のヤンキースが圧倒していた。

「ダイヤモンドバックスに勝機があるとすれば?」との質問に対する識者の答えは、どれもハンで押したように同じだった。「2枚看板がヤンキースの強力打線を封じることができれば……」

 カート・シリング22勝6敗、ランディ・ジョンソン21勝6敗。2人の大車輪の働きなくして、ダイヤモンドバックスのワールドシリーズ出場はなかった。勝つも負けるも2枚看板次第――これが大方の見立てだった。

 果たして2枚看板は獅子奮迅の活躍を演じた。シリングは初戦、4戦、7戦といずれも中3日で先発した。ジョンソンは2戦、6戦に先発し、最後の7戦には、なんと8回途中からリリーフに立ち、4つのアウトを奪ってダイヤモンドバックス初の世界一に貢献した。シリーズの4勝はすべて2人が稼いだものだった。

 試合後のセレモニーでは、粋な計らいが待っていた。2枚看板が揃ってMVPに選出されたのだ。複数選手の受賞はMLB史上2度目のことだった。

 話を日本球界に戻そう。不利が伝えられる楽天がアップセットを起こすには今季24勝1セーブの田中将大と、ルーキーながら15勝(8敗)をあげた則本昂大の2人がシリングとジョンソンばりの活躍をするしかあるまい。

 日本シリーズ出場を決めた千葉ロッテとのファイナルステージ第4戦、星野仙一監督は1点を勝ち越した直後の8回に則本を、そして9回には田中をマウンドに送り、反撃を許さなかった。

 ポストシーズンゲームはレギュラーシーズンの延長線上にはない。この超攻撃的継投の裏に指揮官は「このゲームで決めたい」との思いの他に、日本シリーズをにらんでのテスト、いわば“臨床実験”の意味合いも潜ませたのではないだろうか。土壇場で必勝パターンを確立した星野楽天、存外やるような気がする。

<この原稿は13年10月23日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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