愛媛FCが2013シーズンのホームゲーム最終戦を戦う11月17日(日)、サポーターやファンにとってショッキングなニュースが舞い込んできた。
 2004年のJFL時代から10年間、愛媛でプレーし、チームを支え続けてきた副キャプテン、赤井秀一選手の今季限りでの退団(契約満了)が発表されたのである。
 巧みなボールコントロール技術を駆使し、加入初年度から中盤のポジションで活躍してきた赤井選手。右足から繰り出されるフリーキックやセンタリング、鋭いパスやロングレンジからのシュートなどなど、人々を魅了するプレーを数多くみせてくれた選手だった。
 
 近年、私の印象に残っているゴールシーンは、2010シーズンの第33節(対ザスパ草津戦)、“まさかのヘディングシュート”だ。敵ペナルティエリアまで駆け上がった赤井選手が、左サイドに開いたFWジョジマール選手からの若干マイナス気味のクロスボールにうまくタイミングを合わせ、ヘディングシュートを放つと、ボールは敵GKの動きの逆を突き、見事ゴールイン!

 この先制ゴールが決勝点となり、愛媛が勝利を得た素晴らしい試合だった。失礼な話だが、「普段、足技が際立つ、あの赤井選手が頭でシュートを決めるとは!?」と、ちょっとビックリしたのを今でも思い出す。試合後、ゴール裏のサポーターの前で「なかなか見れない、僕のヘディングシュートを生で見ることができて、みんなラッキーです!」と挨拶。そのユーモアあふれるコメントを含め、印象深いゴールであった。
 
 そんな赤井選手の退団のニュースが流れた11月17日に行われたホームゲーム最終戦(J2第41節)は、愛媛の選手たちの執念が感じられる記憶に残る熱戦となった。

 前半早々に、レッドカードで退場者を出してしまい、さらにはPKをとられて苦境に立たされる愛媛。それでもGK秋元陽太選手が、このPKを止め、一旦ピンチを脱する。反撃を心待ちにするも、10人となり数的不利な状況が続く愛媛は、前半27分と後半19分に失点。2点のビハインドを背負ってしまう。
 
 しかし後半30分、追撃弾となるFW渡辺亮太選手のJリーグ初ゴールが、劣勢の雰囲気を一掃してくれた。後半39分にはMF加藤大選手のフリーキックから、渡辺選手がつなぎ、最後はFW石井謙伍選手がダイビングヘッドでゴールを決め、土壇場で同点に追いつく。
 
 その後、もうひとり退場者を出す厳しい状況に追い込まれながらも、一進一退の攻防を繰り広げる。最終スコアは2−2の引き分けに終わったが、90分間、選手たちの気迫が絶え間なく、ひしひしと伝わってくるような感動的な試合だった。
 
 試合後、ホーム最終戦ということで、全選手と監督・スタッフがゴール裏スタンド前へと挨拶に訪れた。ゴール裏席では中央の2ブロックを利用し、赤井選手の背番号である「16」をコレオグラフィー(人文字)で表現。サポーターからは「あ・か・い! あ・か・い!」のコールが沸き起こる。

 それを受けて、赤井選手が選手、スタッフの前に立ち、別れの挨拶を行った。
「僕がいた10年間、皆さんに喜んでもらえるような結果を出すことができず、自分自身すごく悔しい思いをしました。愛媛でJ1昇格っていう夢が叶えられず、悔しいです。自分自身、こんなヘタクソな選手だったですけど、皆さんのおかげで成長し、人間としても、すごく成長させてもらえて、ホント応援してくれた皆さんには感謝しかありません。
 愛媛FCは、これからのクラブだと思うので、まだまだ皆さんの協力を得て、選手・スタッフ一丸となって、僕が叶えられなかったJ1という夢を必ず達成してくれると思います。あまり、うまくしゃべれないですけど、本当に僕自身は皆さんに感謝の気持ちしかありません。10年間、応援していただいて本当にありがとうございました。今後のことは、まだ決まってないのですが、現役としてプレーしたい気持ちが自分の中にあるので、これからも頑張りますので、応援よろしくお願いします! ありがとうございました!!」

 赤井選手は涙を潤ませ、目頭を押さえつつ、時折、言葉を詰まらせながらスタジアムに残った大勢のサポーターたちに気持ちを伝えていた。直後、「あかい! アレアレアレ! あかい! アレアレアレー!」と、サポーターが馴染みのチャントを大合唱。

 そんな赤井選手に、2005シーズンから愛媛に加入し、盟友でもあるDF関根永悟選手が駆け寄って肩を抱き、「赤井はやるぞぉー! 赤井は、まだまだ、これからだぁー! オオー!!」と絶叫。
「今日は、ピッチを去る挨拶ではなく、現役を続けていくことを、誓うためのセレモニーだ!」
 熱い雄叫びは、そんな風に、サポーターへ訴えかけるようでもあった。同時に赤井選手に対しては選手生活続行を約束させ、また、直面した現実を自身にも言い聞かせ、受け入れようとしているかのようだった。
 
 見知らぬ土地にやってきた赤井選手は、J2昇格という偉業を成し遂げ、体力面、技術面、また精神面でもチームに貢献し続けてきた。彼が愛媛を去ることは、本当につらいし、寂しい。何とも例えようのない喪失感に苛まれる日々だ。だが、現役にこだわって進んでいく姿勢を見せてくれているのだから、彼の人生にとって新たな門出であると受け止め、気持ち良く送り出してあげたい。
 
 北海道が産んだ、ミスター愛媛・赤井秀一選手。今まで、たくさんの感動を本当にありがとう! これからも応援していきます!!
  
 <お知らせ>
 
 来る12月15日(日)に「愛媛FCサポーターズミーティング2013」を開催することになりました。 
 
【愛媛FCサポーターズミーティング2013】
 
会場:松山市総合コミュニティセンター企画展示ホール2階
主催:愛媛FCサポーターズミーティング実行委員会(愛媛ゴール裏net、愛媛サポートクラブ、EHIMEオーレ!)
共催:株式会社愛媛FC
開催日:12月15日(日)
開場:12時50分
開始:13時
終了:16時45分
入場:無料ですが、事前の参加登録が必要です。
 参加ご希望の方は、下記の要領でメールにてお申し込み下さい。
 宛先=ehime.goal.ura@gmail.com
 件名=サポミ参加
 本文=参加者全員のお名前をご記入下さい。
 クラブやゴール裏へのご意見やご質問等がございましたら、ぜひお書き添え下さい。全てのご質問には、お答えできない場合がありますが、可能な限り、回答させて頂きます。なお会場の都合により、申し込みが100名に達した段階で申込を締め切らせていただきますので、どうかご了承ください。
 
 今回は、愛媛FC事務局スタッフとともに、亀井文雄社長と佐伯真道GMにも、ご参加いただけることになりました。また、サッカー日本代表の応援などでおなじみのちょんまげ隊・隊長のツンさんも来場される予定です。
 
 2013年シーズンを振り返り、課題を抽出し、来年のサポーター活動へと活かしていきたいと思っております。愛媛FCや愛媛FCのサポーター活動に、ご興味があるという方は、ぜひこの機会に、ご参加下さい。お待ちしております。

松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール>
 1967年5月14日、愛媛県松山市出身。
 愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。
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