「あれぐらい、はっきり言うと皆、期待しちゃうよね。逆に少々、心配になりましたよ。IOCの会長が、あそこまではっきり言っちゃって大丈夫なのかなって……」
 言葉の主は福岡ソフトバンクの王貞治球団会長。続けて、こうも言った。
「僕は2006年のWBCで日の丸をつけて戦った経験(日本代表監督)があるんだけど、普段は日の丸なんて意識していないのに、いざつけるとその重みを実感できるんです。若い選手たちが、本当に純粋に野球をやってくれた。日の丸の力というのは、これはもう想像以上でしたね」

 IOCのトーマス・バッハ会長が先頃、2020年東京五輪で実施競技から外されていた野球・ソフトボールの復活の可能性について言及した。

 野球とソフトボールは日本人に親しまれており、しかもメダル獲得の可能性が高い競技種目。実施競技入りすれば、東京五輪の盛り上がりに一役買うことは間違いない。

 一部には「来日記者会見だから、リップサービスしただけ」と冷めた見方もあるが、長きに渡ってIOCの法務畑を歩き、弁護士でもあるバッハ氏が無責任な発言をするとは思えない。

 大胆発言の背景には、どんな裏事情があるのか。

「バッハ会長はJOCの竹田(恆和)会長と親しい。2人ともモントリオール五輪に出場しており、それ以来の仲なんです。おそらく“東京大会を成功させるためには、日本人に人気のある野球・ソフトボールを復活させた方がいい”と竹田氏から助言を得ているはず。日本で観測気球を上げたのは、“復帰に向けた手続きを始める用意がある”というメッセージと受け止めていいでしょう」(JOC関係者)

 五輪憲章には“7年ルール”があり、既に20年東京大会の実施競技は確定している。これを覆すためには、憲章の改正が前提条件となる。果たしてバッハ氏は、どんな秘策を用意しているのか……。

<この原稿は『週刊大衆』2013年12月16日号に掲載されたものです>

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