2013年末、愛媛FCレディースとともに、愛媛FCユースチームの戦いも続いていた。
 昨年の12月7日(土)、高円宮杯U−18サッカーリーグ2013プリンスリーグ四国の最終戦(第18節)となる愛媛FCユース対香川西高の一戦が、瀬戸大橋記念公園球技場第一グラウンド(香川県)にて行われた。
(写真:プリンスリーグ最終戦、試合前の練習)
 冷たい風が吹き荒む中、試合がスタート。愛媛ユースがセットプレーなどからチャンスを創るも、うまくフィニッシュに繋げられず、前半は0−0で終了。後半、相手のカウンター攻撃に手を焼きつつも、徐々にボールの支配率を高めていく。

 そして、後半15分にFW高木俊輝選手のアシストからDF長尾龍斗選手が先制ゴールを決めると、後半31分には、MF堀内勇佑選手が追加点を決め、そのまま試合終了。最終スコア2−0で愛媛FCが最終戦を白星で飾った。
 
 この結果、リーグ戦を16勝2敗(勝ち点48)と2位チームに勝ち点12の差をつける圧倒的な力を見せつけ、愛媛ユースが2013プリンスリーグ四国にて優勝を果たした。
 
 試合後、優勝チームである愛媛ユースを称えて表彰式が行われ、同時に2013シーズンの最優秀選手賞の発表も行われた。
「最優秀選手賞は、愛媛FCユースの岡田一騎選手です!」。
 大会本部から発表され、表彰を受ける岡田選手。CBという守備的ポジションから攻守に渡り、チームを献身的に支え続けてくれたプレーヤーだ。
「おめでとう! 岡田選手!」
 
 プリンスリーグ四国にて優勝を果たし、プレミアリーグ(高校年代最高峰のリーグ)参入戦への参加資格を手にした愛媛ユース。参入戦はハイレベルな闘いとなる。ユースチームにとって、2013シーズンにおける最大のチャレンジとも言えるだろう。
 

 2013年12月14日(土)、プレミアリーグ参入戦の1回戦となる
愛媛FCユース対大分トリニータU-18の一戦が、呉市総合スポーツセンター陸上競技場(広島県)にて行われた。

 底冷えのする曇り空の下、大分のキックオフで試合開始。序盤から相手チームに主導権を握られ、苦しい展開となった。それでもGK渡辺健太郎選手を中心に、守備陣も踏ん張り、前半戦は0−0で終了。
 
 後半に入ると、徐々にボールキープの時間が増え始める愛媛。攻撃陣も奮起し、敵陣内へと攻め入るチャンスを創り出す。
 後半17分、愛媛ユースが敵陣内中央でフリーキックのチャンスを得た。敵ゴールまで25mほどの距離を残しているだろうか。

 キッカーは、FW清川流石選手。強風の中、入念にボールをセットし、長い助走距離を取る。主審の笛の後、ワンテンポ置いて、ボール目掛けて走り込み、豪快に右足を振り抜いた! 放たれたボールは、矢のような速さでゴールマウスに迫ると、敵GKが伸ばした手の先をすり抜け、見事ゴールイン!

 チームメイトと抱き合って喜びを分かち合う清川選手! サポーターも「スウィーギン、スウィンギン愛媛、フォーエヴァー!」と歓喜のチャントを大合唱! 素晴らしい「スーパーゴール」だ!
 
 その後も一進一退の攻防が続くが、虎の子の1点を守り抜き、試合終了。最終スコア1−0で愛媛ユースが勝利を収め、見事、2回戦進出を決めた。次の2回戦で勝てば念願のプレミアリーグへの参入が決定する。
 

 激闘を制した2日後の12月16日(月)、2回戦となる愛媛FCユース対柏レイソルU−18の一戦が、広島広域公園第一球技場(広島県)にて行われた。
(写真:プレミアリーグ参入戦2回戦の模様)
 
 晴天の下、柏のキックオフで試合がスタートした。序盤、サイドスペースからの攻撃やフィードボールなどを駆使し、積極的に敵陣へとボールを進める愛媛ユース。開始30分を過ぎると、相手にボールをキープされ、徐々に自陣へと押し込まれる苦しい展開へと変わり始める。それでも、愛媛のDF陣が粘り強い守備で相手のフィニッシュを許さず、前半は0−0で終了。
 
 だが、後半立ち上がり、自陣中央にて相手にパスをうまく繋がれ、失点を喫してしまった。
 愛媛もカウンター攻撃やセットプレー等から反撃を試みるが、どれも単発に終わってしまう。そんな中、逆に速攻を決められ、後半32分、相手に追加点を許してしまった。
 
 1回戦の激闘から中1日。マイクロバスによる長距離の往復移動で、疲れがピークに達していると思われるが、愛媛ユースの選手たちは、それでも必死にボールへと喰らい付き、走り続ける。

 彼らの努力が報われる瞬間を待ち続けたが、無情にも時間は過ぎ去り、ついにはタイムアップ。最終スコア0−2での敗戦となり、プレミアリーグ復帰の夢は叶わなかった。
 
 この試合終了とともに、2013シーズンの闘いも終わりを告げた愛媛ユース。試合後、家路へと向かう選手達を労うため、私たちサポーターがスタジアムの外で待っていると、チームを卒業する3年生の選手たちが挨拶に来てくれた。

 おそらくは今日の悔しさや3年間の思い出、チームを去る切なさなどが入り混じった複雑な感情が込み上げているのだろう。涙で目を腫らしながらも、「3年間、応援ありがとうございました」と丁寧に挨拶してくれた。

 私たちも各選手への言葉と両手握手で、感謝の気持ちを伝えた。笑顔で送り出してあげようと思っていたのに、選手たちの気持ちが伝わってきて、私も思わず涙が溢れてしまった。今後、それぞれの道を進むことになると思うが、これまでユースチームにおいて仲間たちと素晴らしい仕事を成し遂げてきたのだから、自信を持って己の道を歩んでほしい。
(写真:参入戦2回戦で敗れ、悔しさを胸にピッチを去る選手たち)
 
 今回、プレミアリーグ参入という目標には届かなかった愛媛ユース。しかし、2013シーズンも本当に素晴らしい戦いぶりを見せてくれた。四国最強の高校年代チームであることを改めて証明してくれたと思う。新入生を迎え、2014シーズンもプリンスリーグ四国への参戦になると思うが、四国最強チームであることを証明し続け、「愛媛FCユース」のブランドイメージをますます高めて欲しい。
 
 J1リーグにおけるサンフレッチェ広島の活躍ぶりを見ると、やはり育成組織(ユースチーム)の充実が、トップチームを含め、クラブ全体の力を引き上げる重要なファクターであることは明確になりつつある。愛媛FCもアカデミーの環境など下部組織の充実と強化を図っていければ、ユースチームによる「四国最強」のブランド力も手伝って組織全体の成長が見込めるのではないだろうか。
 

松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール>
 1967年5月14日、愛媛県松山市出身。
 愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。
◎バックナンバーはこちらから